裏(うら)



一騎当千


「あとで合流するわ。」
そう言って味方の軍とすれ違う。かなりの戦闘で味方も疲労困憊。味方の諸隊の中にもにも落伍者が続出 している。味方も先の戦闘の開始時よりも3分の2くらいに減っている。 しかし味方の士気はあがっている今、この程度の戦闘は自分なしでも圧倒していけ るだろう。むしろ私自身かなりきつい状態である。もともと個々の戦闘能力は生まれ持った限界を はらんでいるためかなり潜在的に強い人は強いし、その逆も然り。

 とりあえず、本営に戻る。倒れている味方を残してそれ以外は全軍で本営から出ている今、自分の隊くらいしかいない。 さぁどうするか。味方の戦いに加わってもいいが、戦闘に参加するよりも戦闘状態を維持している時間でどんどん力を削られていく 可能性のほうが高い。味方はまだあれだけいる。私の隊はまだ合流しなくていいだろう。
本営でそこら辺にある武器で出発する。私たちと友好的な地域での戦闘ならかなり体力の維持にもつながるだろう。 本陣は南方へ出陣している。すごい喚声も聞こえる。流石に士気が高い。
 私たちは東へ。
東側の戦闘は至って穏やかに進んでいた。有効な諸地域から義勇団も加わりかなり緩慢な戦闘がつづく。戦闘がひと段落ついた ところで少し西へ軍を進める。ここではかつて自分と一時代を築いた時の仲間もいて、旧交を温めながらの戦闘となった。 自分の隊の弱体化は著しく、なかなか戦闘でも鋭さを発揮できない。リスク&パフォーマンスとは言うが、以前はたいしたリスクでない ことも最近では隊への影響は大きい。しかし、理想とする全快の隊の強さと現在の隊の強さの間には溝が広がるばかり。

時はどれくらいたっただろうか。友好を深めた今、そろそろ本陣に合流しよう。トドメをさすときに新手の援軍は嬉しいものだ。 これはかなりリスク少なくパフォーマンスが大きい。
いつからこんな戦闘をするようになったんだ....
以前は大先鋒として敵を打ち破る役ばかりだったのに。防衛線でも最前線にでて盛んに戦闘を行っていたのに。
弱すぎだ...
本隊が戦っている戦場へ着く。
「なに......」
そこに広がっているのは味方の劣勢の展開だった。この戦闘を開始した時の兵力の4分の1くらいしかいない。しかも残りの隊も 隊長が叱咤しているもののいつ潰走を始めるかわからない。
「全隊散開。味方の最前線へ出よ。」
弱体化などと言ってはいられない。とにかく戦力が残っている自分の隊が前線へでなければ。
前線にでてきて気付いたのは 敵の軍はかなりの兵力を残している点だ。おそらく8割以上は残っているのではないか。
「くそ。」
疲れている兵を討つのはなるほど容易いだろう。しかし、本隊の士気はその定説に支配されるほど弱くはなかった。 問題は経験だ。10人ほどの隊長のいる本隊に歴戦の隊長は一人しかいなかった。他の隊長たちはまだまだ経験が浅い。
あの時、すぐに合流していれば。
私の隊が主導的な役割を果たせば勝機はあったかもしれないのに。

「全軍、引くな。ここを死に場所と心得よ。」
私たちも予備隊を出して前線と入れ替えながら戦線を保つ。しかし相手は自分の8倍近い兵力。他の隊は勢いすらない今、状況の 打開をしない限り全滅を待つばかり。敵はどんどん砲撃をしてくる。私の隊の士卒もどんどん倒れていく。
「ぐっ。」
少々勢いが出てきた味方に前線を譲り、隊を整える。しかし、そこで入ってきた情報はより戦線を悪化させるものだった。
本営の潰走だった。むしろ状況は全滅に近いのだが総隊長がやられたという情報だった。これで味方は自分を入れて三隊。
おそらく敵はその4倍。状況は劣勢もいいところ。

数回の攻撃を試みるが被害は増えるばかり。自分の隊が全快で最強の時の強さがあれば...どうにかなったかもしれない。 活路くらいは見出せたかもしれない。
「散開。その場でこらえて撃ち続けよ。繰り返し言う。ここを死に場所と心得よ。」
敵が勝利を確信しあちらから攻撃をやめたときにはすでに自分の隊も全滅に近かった。心が折れそうだった。隊長である私の心の弱さも隊の弱体化に 関わってしまっているのかもしれない。味方の諸隊を集めて退却する。

私は落胆のままに兵をひいた。