第10章 最後の一言 BGM:It's the endL'ArcenCiel

 ナヅナはコウの為に、治療に関して知識のある付き人を残していきました。
 彼女の名前はミューア。21歳の神官です。コウの受けたダメージはミューアの<医師>技能による援護で……完治は1週間ほどかかるようです。
 コウが気付いたとき、ベッドの上でした。


:このパートの途中で、コウの不利な特徴が変更された。

薄死:は?

:コウのプレイヤーより「演じ難い」という案があってな。実はナヅナ・グラスのプレイヤーからも「自分で作っておいて、自分の中のナヅナ・グラスの特徴が表せているとは思えない」と言われた。そこで……少々、非常識な手段に出た。

薄死:例のヤツですか?

:ああ、例のヤツだ……不利な特徴「性格がコウ」(−40CP)をとらせた(笑)。これに関しては俺も思うところあり……まあ後書きで後述するか。


コウ:いつもの部屋じゃない?

GM:ちゃんとしたベッドで寝ている。

GM/ミューア:お目覚めですか?

コウ:ん…何だ…柔らかいぞ……(笑)あんた……誰?いてて…俺、どうしたんだっけ……

GM/ミューア:まだ無理はいけません。結構ひどい怪我ですよ。私はナヅナ様の付き人のミューアです。あなたの看病を仰せつかりました。

コウ:ナヅナ……?ああ、あの嫌な奴か。

GM/ミューア:嫌な人?ナヅナ様がいなければ、あなたはのたれ死んでましたよ。その言葉は納得がいきませんね。

コウ:どうせ、叩かれて死ぬんだぜ。それとも……ハリー……

 

 どうやらコウ、ハリーのことを思い出したようです。

 

GM/ミューア:……ナヅナ様からの伝言です。傷が治り次第、フォンベルグを目指すように、とのことです。私も同行させていただきます。その為の旅費も預かりました。

コウ: 何の為に?

GM/ミューア:さあ?私はただ、ナヅナ様の命令に従うだけです。詮索されても答えは出ません。

コウ:皆も一緒か?

GM/ミューア:アインス、リリーナもナヅナ様についていきましたが。

コウ:そんな奴らの事は聞いちゃいない。俺の『仲間』。お前らの『道具』のことだよ。

GM/ミューア:……私が同行を命じられたのはあなただけです。

コウ:そうか。ここには戻されるのかい?

GM/ミューア:あなたは……どうでしょう。一度、ナヅナ様の向ったフォンベルグにいくことしか決まっていません。

コウ:じゃ、最後に行きたいところが二つ程ある。

GM/ミューア:2つ?

コウ:そう。ハリーの墓と仲間のところへ別れの挨拶に。

GM/ミューア:ハリーのお墓は認めましょう。しかし、他の奴隷のところには顔は出さないでください。

コウ:二つとも認められなければ俺は行かない

GM/ミューア:なぜですか?

コウ:ハリーもあいつらも仲間だぜ?友人と別れの挨拶をするのに理由がいるのか?

GM/ミューア:ダメです。奴隷のうち一人だけに特権を与えるのは、本来やってはならないことです。あなたが出かけることは、他の奴隷の前で正当化できません。極秘のことです。

コウ:特権を与えられないんじゃ、なおさら俺だけ行くってわけにも行かないだろう。

GM/ミューア:……せめて、手紙などにできないでしょうか。あなたが去ってから、開封してもらいます。それが限界の譲歩です。

コウ:ふん。じゃあここに残ってでもあいつらの顔を毎日見るか(冷笑)。

GM/ミューア:あなた、自分が奴隷だと言う事を忘れてないですか?本来はあなたに拒否権はないのですよ?

コウ:俺は性格が悪いんでね。だからこんな世界に飛ばされたのさ。

GM/ミューア: こんな……世界?

コウ:こっちの話さ。誰も信じやしない。力づくで連れてけよ。『本来』のようにさ。

GM/ミューア:……まああと数日は、怪我のことがあります。おとなしく寝ていてください。

コウ:この怪我だ。どうせ抵抗なんて出来ない。逃げ出せもしない。強がってあんたを困らせる事しか出来ない天邪鬼(あまのじゃく)さ。

GM/ミューア:ふん……勝手にしてください。

GM:ミューアは非常に困った顔をする。

コウ:ははは……あははははははッ!!!……出てけ……

GM/ミューア:……いわれなくとも

GM:で、怪我が完治するまで結構時間がかかるわけだが。それまでずっと我侭を言うか?

コウ:多分。要求が受理されない限りは……

 

 そのあと……コウは一人で泣きました。
 果たして何に泣いたのでしょうか。
 2度とは戻ってこないハリーの為?
 自分の自由を他人に握られることへの悔しさ?

 コウがその答えを語ることはないでしょう……少なくとも、今のミューア達には。

 

GM: さて、1週間後。

GM/ミューア:完治しましたね……あなたが怪我をしていることにして、まだワガママを言いつづけることはできます。私には手がありません。あなた次第です。

コウ:違うな。お前次第だ。そんなに独断が怖いのか?

GM/ミューア:言ったはずです。私の譲歩は置手紙までです。

コウ:何故合わせてくれないんだよ。そんなに俺が恐ろしいか?

GM/ミューア:独断……そうかもしれませんね。しかし、あなたの思う通りの行動させることのほうが怖いです。あなたが怖いのではありません。あなたを見る奴隷が怖いのです。

コウ:俺を見る奴隷が?どういう事だ?

GM/ミューア:仮にあなただけを特別扱いしたとして……他の奴隷はどう思います?今までは、奴隷はただの人形で家畜でした。しかし、それはメイブル様の統率力があったからこそです。家畜が何を思おうと、メイブル様が圧力をかければおとなしくなりました。今は、それをできる人がいません。

コウ:はははは!何だ。そう思っていたのなら早く言えば良かったんだ。

GM/ミューア:ご理解いただけましたか?

コウ:あいつらは解放なんて信じていないんだよ。外に連れ出されるのは処刑の為だと思うさ。そこで働いていた俺が言うんだから間違いねえ。

GM/ミューア:な……

コウ:外に連れ出される奴を見るとな。みんなこうするんだ。

 

 コウ、人指し指を上に向けます。

 

GM/ミューア:……

コウ:処刑されるって事でも良い。あんたが立ち会ってくれてもいいよ。皆、こういう筈さ。『コウ、処刑かい?派手にやったもんなぁ。立派だったぜ。壁に書いとくよ、小便でな』

GM/ミューア:……処刑されたことにするならば、あなたはついてきてくれますか?

コウ:処刑された事にして、会わせてくれればな。……何度も言う通りこのままあいつらに会えないのが嫌なんだよ

GM/ミューア:……わかりました。今日の夜だけ、奴隷部屋に戻ることを許します。それでいいですか?

コウ:有難う。恩に着るよ……素直に。

 

 そして夜。コウは久しぶりに部屋に戻りました……仲間と別れを済ます為に。


:このあとに来る、俺の致命的なミスが無ければ……ここは成功した場面だったと言ってもいい。

薄死:致命的?

:第11章で解説する。


 ミューアに連れられ、久しぶりの奴隷部屋。コウを待っていたのは……奴隷仲間の驚嘆の声でした。

 

GM/奴隷:コウ!オマエまでしんじまったと思ってた・・・・・・良かった……

コウ:そうでもないぜ。処刑だよ。

GM/奴隷:……殺……されるのか?

コウ:元気でな。最後に、お前らの顔が見たくってさ。

GM/奴隷:冗談だろ?!

コウ:あんだけ派手にやったんだ。しょうがないさ……もう戻ってこないけど、他の皆にも宜しく。

GM/奴隷:……そ、そうだよな……幹部に殴りかかっちまったんだからな……

GM:……ちょっと良いか?コウの癖に「奴隷仲間が嫌い」と言うのがあるが……

 そう、本来ならコウと奴隷仲間の間にこのような会話は成り立たないはずなのです。それ以前に、ハリーは死んで哀しむ必要も。
 GMとコウのプレイヤーで、少し相談しました……コウの特徴に、多少の変更点を与えることになりました。後書きにて、詳しく説明しましょう。


:やりなおした原因はこれだ。

薄死:シナリオの途中で特徴をかえさせたのですか?

:……特徴が代わってないまま無理に演じさせるよりはよほどマシだと思うが。


コウ:中で一番知力が出来て信頼出来る奴に(笑)

GM:いるぞ、結構。教団に逆らった元学者とかもいるわけだし。そいつで良ければ。元学者のゲルハルト。

GM/ゲルハルト:コウ、呼んだかね?

コウ:決まったよ。派手にやり過ぎちまった。これさ。

 

 コウ、例のサインを……人差し指を、今度は下に向けます。

 この人指し指を下に向けるサインは本当は上向きです。「神の国にいっちまった」っていう皮肉を意味するのですが……コウは何を考えているのでしょうか?

 

GM/ゲルハルト:……ハリーの使っていた食器じゃよ。おまえさんが持つのが一番いいじゃろう。

GM:食器と言っても、本当に小さいコップのようなもの。しかも割れてたりする。それをくれる。

コウ:ああ、有難う。

GM/ゲルハルト:大切にな。できれば、誰かにハリーの姉のところまで運んでいって欲しいのう……

GM: そういって、ゲルハルトはもう寝る準備をする。

コウ:……俺は絶対に戻ってこれない。だけど、皆に宜しく。

GM:ゲルハルト、黙って手を挙げる。

コウ:もういいよ。時間を取らせたな。あとは、ハリーのところへ

GM: では、ミューアが少しきつい声で怒鳴りつける。

GM/ミューア:コウ!時間だ……我々の神に祈るが良い……とはいえ、貴様の行く先は地獄だがな。

コウ:神の国より地獄の方が好きだね!

GM/ミューア:さあ、でろ。望み通り地獄に送ってやる。

コウ: 皆、地獄で待ってるぜ。神の国になんか行くなよ!

 

 ドアは閉められました……

 

コウ:感謝する。

GM/ミューア:こちらこそ……

 

 さて、ハリーの墓の前に来たコウ。ミューアは少し離れた場所でコウの方を見つめています。
 墓は、鞭使いたちが結構荒らしており、何とか形跡がわかるぐらいでしょうか。墓標代わりの木の棒たててあるものの、落書きがされていたり、ゴミが捨ててあったり。 

 

コウ:ハリー……

GM:ミューアは少し離れたところで待ってる。

コウ:はは、なんてザマだ、ハリー。って俺がこんなところに作ったからか。

 そう呟きながら、掃除を始めるコウ。底にミューアが近づいてきます……

GM/ミューア:……手伝いましょうか?

コウ:お前達が嫌う奴隷だぜ?

GM/ミューア:……墓の掃除ではなく、ただ綺麗好きだけです。

GM: そういうと、ゴミを拾うのを手伝う。

コウ:有難う。でも、いい。その変わり……少し離れて後ろを向いていてくれないか?

GM/ミューア:ん……

 

 ミューアを少し遠ざけ、コウがしたことは……号泣でした。

 

コウ:うう……ハリー、ごめんな、ごめんなぁ…………

 

 ……ひとしきり泣いたあと、コウはミューアのほうを向きます。 

 

コウ:もういいよ。ありがとう。我儘を言って悪かった。

GM/ミューア:いえ……

コウ:ハリー、コップは俺が預るぜ。ここに置いといたらあいつらが何するかわからねえからな。

GM/ミューア:……ナヅナ様から1週間は遅れています。急ぎましょう

コウ:よし、もう思い残す事はない。町へゆこう。

 

 こうして、コウはナヅナのあとを追うことにしました。
 今、ナヅナに対するコウの心象はどうなっているのでしょう。
 そして、コウはハリーの仇をうつことができるのでしょうか?