...............万華鏡...Kaleidoscope
その1.
ちこちゃん。生まれてまだ5ヶ月のおんなのこ。生理食塩水の点滴。チアミン、ステロイド。
「10日前からなにも食べていない。ほかの病院にいっていたが治らない。胃が悪いみたいといわれた。調子がわるくなってから目もしろくなって(注...瞬膜のこと)しまった。水は飲んでも吐かないが、キャットフードは食べると、いや、食べながら吐き出す。やせてしまって立つのがやっとで........」ざっとそんなことをおっしゃるおかあさん。食道、動脈弓.....?、腸閉、いろいろなイメージが湧く。食べた直後の嘔吐、吐出ということで、まずバリウムを1ml口にふくませてすぐにガシャン(レントゲンを取る音)。1分後に腹部をもう1枚。
.............
.....
下のほうにあるカトちゃんの胸部の写真とくらべて見ていただければわかりますが、心臓の前方、縦隔部といわれる場所にやや石灰質を含む塊があり、それが食道を大きく背中側の背骨まで押上げている。X-rayでははっきりしませんが腹部にもなにかしら腫瘤塊があり、指でさわるとはっきりとわかる。
そんなこんなして、飼い主のおかあさんに説明しているうちに血液検査の結果がでました。
..........FeLV 陽性 ..........FIV 陰性
猫白血病ウイルス(Felv)猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の検査猫白血病(FeLV)と猫免疫不全ウイルス感染症(FlV)はレトロウイルスという種類に属する2つの異なったウイルスによつて越こる恐ろしい伝染病です。これら2つの伝染病は人間にはうつらず,猫属にしか感染しませんが、猫では発生頻度も高く、症状も重い病気です。例えぱ,猫白血病(FeLV)は、猫の伝染病による死亡の主な原因の1つとなっています。
猫が猫白血病ウイルス(FeLV)に感染しても、最初の症状がでるまでに1年から2年かかります。猫免疫不全ウイルス感染症(FlV)の場合には感染してもなんと5年以上も症状が現れません。
これらのレトロウイルスのどちらかに感染すると、次第に元気がなくなり、猫の免疫力が抑制されてゆきます。この免疫抑制によって猫は伝染病に対して無防備の状態になり、口内炎、胃腸炎、鼻炎などがなかなか治らず,最後には死亡してしまいます。さらに、,白血病ウイルス(FeLV)に感染すると、白血病や腫瘍など致命的な病気を伴うことが多くあります。また、猫免疫不全ウイルス(FlV)の感染の末期には、エイズのような症状が現れます。このためFIVは猫エイズとも呼ばれています。
猫白血病ウイルス(FeLV)は、〔唾液や涙、そして糞や尿、また母乳など多くの経路でうつるので伝染性か高い。これに対し、猫免疫不全ウイルス感染症(FlV)は、主に血液と唾液を介しで感染します。例えばけんかをして噛んだりするときに、既に感染している猫からいない猫にうつります。
現時点では、猫白血病(FeLV)と,猫免疫不全ウイルス感染症(FlV)の特別な治療方法はありません。これらの,病気に感染してしまつていることかわかった場合には、症状に応じた治療をして行くことになります。しかし、感染の危険性を滅らすいくつかの方法があります。また、数ヶ月後の検査によって陰転することもあります。
FeLVを予防するためのワクチンが開発されています。猫白血病(FeLV)は発生が多く致命的なのでワクチン接種が大切です。感染の危険性は年令とともに増加しますので、なるぺく早くワクチン接種を受けることをお勧めします。FelVワクチンは生後9週齢ごろから接種できます。また、すでにFelVに感染している猫にワクチンを接種しても効果はありませんのて、ワクチン接種前にはFelVの検査をすることをお動めします。
WBC 451×100RBC 598 ×10000
HB 10.8
HCT 33.5%
MCV 56 MCH 18.3 MCHC 34.2
GLU 138
Ca 7.2
GPT 53
Creatinine 0.4
検査料の一部のみ入金 \5775 説明しているうちにおかあさんに泣かれてしまいました。原因はわかったものの、あまり歓迎すべき病気ではありません。
白血病が原因とおもわれる前縦隔洞腫瘍、おそらくリンパ肉腫
一昼夜点滴、a/dの強制給餌、明日朝、抗がん剤 (BCT) を使うことにします。
うまれてこのかたおうちの中のみ。ということは母ねこ、おとうさんからうつったということなのか?その可能性もお話ししました。
第2病日
翌日オンコビンという抗腫瘍剤を点滴から流し込みました。体重から割り出した量の更に3分の1、それをさらに3回にわけて。やや呼吸が速いのが気になります。高カルシウム血症を警戒して生理食塩水とラシックス。デキサメサゾン。
a/dの強制給餌もいやがり、動くと呼吸が早くなってしまう。夕方になると、かなりくるしそうに弱い呼吸。
第3病日
早朝、息をひきとりました。
...........
...................................
.....
亡くなって後、胸の中の腫瘍の一部を調べさせていただきました。
犬……
1.多中心型….多飲多尿、貧血。免疫性貧血IHA
2.皮膚型
3.消化器型….下痢、腹水、排便障害。
猫…
1.消化器型
2.縦隔型
3.皮膚型
犬…膝の後ろの膝下リンパは診断に有効。下顎リンパは口腔内感染でも腫大するから。
下顎リンパの腫大に飼い主が気付いて来院するが、、歯石で腫大することもあるから。
*犬の皮膚型は(鼻の上など)皮膚病とまちがいやすい。….病理検査がきめて
菌状息肉腫病変。Predで反応するが……カサカサした脱毛部
Ca腎症に注意
*癌の免疫療法はいまだ信用できず。
細胞診
小リンパ
大リンパ
その他
正常
90%
5%以下
1%以下
異常
75%
20%まで
5〜10%
大型リンパ球がふえる
正常
<95%
<5%
<1%
過形成
<80%
<20%
<10%
リンパ腫
<20%
<80%
<1%
* 問診では特異症状はない。ここ 2〜3week 発熱もないのに体表のリンパ節がはれてきた…など。
バフィーコート塗沫 … これで血中異常リンパ球があるなら… STAGE 5
RBC … 2割で貧血
血小板減少
GPT,GOTが高ければ抗癌剤は通常量の半分とする必要がある。
高Ca血症 … 沈鬱、
カルシウムが11.5以上なら生理食塩水I.D.Iを3から4時間。ラシックス。その後にアドリアシン(犬)。
*リンパ腫、アポクリン腺癌(肛門部)………Pred 0.5〜1.0mg/kg
predは腸管からのカルシウム吸収を促進
免疫性貧血IHA……Pyometra,自己免疫性、.......
悪性リンパ腫でもマクロファージの貪食による溶血性貧血がおこる。 .................
その2.
![]()
いそちゃん。ちゃっかりいそうろうしたからいそちゃん。おす。年齢不詳。住所、ある工場。やせている。
半月まえに元気がないとのことで工場のおねえさんが電話をくださいました。そのときの検査で猫白血病(FeLV 陽性 ...FIV 陰性)にかかっていることが判明。
で、今回はどうも食べれなくなり、元気がないとのこと。若干呼吸もはやいかな?と感じられたので異常の有無を確認する意味でレントゲンを取ってみました。
.........
心陰影がはっきりしない。つまりはなんらかの原因で胸の中の肺と心臓の隙間に液体がたまっている。Pyothorax, FIP, etc........
かなりまいっている様子。麻酔をかけるのが心配だ。が、原因がわかった以上胸から液体を抜くべきだ。ということで 2,3分かんがえてサイレースのみの単一の麻酔で「一気にさっと抜く」計画を立てる。16ゲージの外筒つきの針を使う。メスで胸部の皮膚を小さく3mmほど切り、肋骨の前縁に添うようにして針先を胸腔内にすべりこませ、即座に針を抜き、針の外側のチューブだけ残す。三方活栓と30mlのディスポ。液体は透明、淡黄色。200ml。
............................
左の写真は胸水を取る前の肺尖部。肺全体がグレーのゾーンに浮かんでいる。
右が胸水を取ったあと。先端はだいたい胸郭にくっつかってくれました。すぐ後ろ(右側)に空気を含む胃がうつっている。
ようするにだいたいの液体は取れた。
WBC 266×100RBC 342 ×10000
HB 7.4
HCT 22.9%
MCV 67 MCH 21.6 MCHC 32.3
GLU 96
Ca 5.1
GPT 10
Creatinine 0.5
麻酔はうまくいき、午後にはしっかりと立ち、ドライフードをぺろりとたいらげました。胸水はちょっとドロリとした感じ。 FIP (猫伝染性腹膜炎)の検査に出しました。
2日後、再度50mlの胸水を抜きました。が、呼吸が早く、飼い主のおねえさんとお話しました。つまり、安楽死も視野にいれて考えてあげたほうがいいかもしれない、.................。
3日後、呼吸不全のため亡くなりました。
6日後
検査結果がFAXでとどきました。
猫伝染性腹膜炎ウイルス抗体...... FIPV...........3200倍 .....(大分、アイディック)
結局FelV陽性、猫伝染性腹膜炎陽性。胸水はコロナウイルスによる胸膜炎によるものでした。
その3.
![]()
カトちゃん。しっぽがくるりと巻いているので「かとりちゃん」。かとりせんこうから........。あるいは、おんなのこなのでカトリーヌ。
ビロードのようなグレーの毛並み。ロシアンブルーのようですが、雑種ちゃん。生後5ヶ月。
ことのはじまりは、...............
10匹ほども猫ちゃんを飼っている猫好きおかあさん。
2000.3.2
歳の子がFVR(ねこ伝染性鼻気管炎)にかかり、心配なのでワクチンを打つことに。すでに感染していなければいいのですが2000.3.5
40.4度、2.34kg翌日からよだれ、涙目、ぼーっとしている。ほかの3匹の兄弟姉妹も同じ。
治療….インターキャット0.5ml、インドメタシン座薬、ビクタス。
2000.3.7
38.5度、2.20kg翌日も同様。3匹の兄弟姉妹は回復が早い。カトだけ身体も小さく、ひよわな感じ。
2000.3.8〜3.10
隔離して入院。2.21kg
ソルラクト30mlsc、インターキャット点眼。
WBC 33500RBC1130万HB16.9HCT54.7II+CREA0.6
AROMAテープ
強制給餌、ソルラクト点滴
2000.3.10
かなり元気、退院。
2000.3.17
ところが、一週間後再びAPPETITE,VIGORともになし。しかし、他の兄弟姉妹はすっかりなおったとのこと。ぐったりし、動かない。隔離して入院。38.8度、1.88kg
![]()
FeLV 陰性 ..........FIV 陰性
またまた点滴。インターキャット0.5mlIV
強制給餌Hills-a/d
2000.3.19〜21
WBC 21900RBC997万HB12.7 HCT49.7II-CREA0.52.28kg、X-RAY.......あまり食べてないのになんとなくおなかがぶよっとした感じがします。もしかして腹水でもあるのだろうか?
.............
よくいう「スリガラス様」の腹部。栄養の摂取が足りないための低蛋白血症によるもの?それとも FIP-猫伝染性腹膜炎 ?
2000.3.22
1.96kg,39.8度
インターキャット0.5mlsc、ソルラクト30mlsc、ドモンL、pred1.0mlsc,イムラックtab1/2
自分からドライフードをたべる。
アイデックス から結果がくる........ FIP 100
FIP診断基準AMIS
■ 猫伝染性腹膜炎に特徴的な症状が見られるとき
検査結果
<100 :
FIPウイルスに感染しているとは思われないので腹水の症状など再検討して真の原因を追求する必要があります。ただし、FIPに感染していても、ウイルスと抗体が免疫複合体を作るなどの理由で、抗体価が低下してしまう場合もあります。
100〜12800 :
FIPの診断が支持されます。(もちろん抗体価の高いものがより多く支持されます。)
■猫伝染性腹膜炎の特徴的な症状はないが、発熱、食欲不振、消化器症状などが見られる場合
検査結果
<100 :
FIPウイルスに感染しているとは思われないので、現在の症状は別の原因によるものでしょう。
100〜400 :
低い抗体価なので現在ウイルスがいるかどうかはっきりはわかりませんが、現在の症状の原因としてFIPウイルスの関与もまたかんがえられます。これからFIPを発症する確率は余り高くありませんが、念のため1ヶ月以上経てから再検査をし、抗体価が下がっていれば安心して良いでしょう。
800〜12800:
現在FIPウイルスが体内にいて、症状の原因になっている可能性が考えられます。また、ドライタイプFIPの症状がないかどうか詳しい検査が必要です。FIPを発症する確率は10%足らずですが、ないとは言えません。ただし、症状が消え、1ヶ月以上経てからの再検査で抗体価が下がれば問題は少ないでしょう。
■ 健康な場合
検査結果
<100 :
FIPウイルスに感染しているとは思われないので心配ありません。
100〜400:
低い抗体価なので現在ウイルスがいるかどうかはっきりわかりませんが(一度上がった抗体価が下がっていく途中のことがおおい)、健康なのでまず問題は少ないでしょう。
800〜12800 :
現在FIPウイルスが体内にいるために抗体価が高いか、あるいは高い抗体価が下がって行く途中かのいずれかが考えられます。FIPを発症する確率は10%足らずで決してないとはいえませんが、このまま健康で1ヶ月以上経てからの再検査で抗体価が下がれば問題は少ないでしょう。
■再検査の場合
前回より抗体価が下がっている : ウイルス感染が消失に向かっているよい兆候とおもわれます。
前回より抗体価が上がっている : これからFIP発症に向かう可能性が強いので要注意です。
2000.3.25〜3.29
体重は1.96kgに固定。体温が 39.8 、40.3 , 38.6 , 39.3 とりあえず帰宅することに。
このまま食べて、体重が増え始めれば安心なのだが。
.........
数日後お電話があり、よく食べている、元気とのことです。
その4
慢性腎不全
ミミちゃん。
この子は経過が長い、8年来の患者さん。昭和57年生まれ。
平成4年
3種ワクチン,4.0kg
平成6年
FVR(ウイルス性鼻気管炎)
平成7年
左鼻炎、後肢の湿疹。3.4kg
平成10年
MAY 左鼻炎、ときに血が混じる。右前足ひきずる。AUG 耳のまわりかゆがる。
平成11年
7月 「口内炎みたいだ、2〜3日食べない。」とのこと。3.14kg極度の脱水。
WBC 白血球数..............................................................37600RBC 赤血球数.............................................................8190000
HB ヘモグロビン..........................................................10.3
HCT ヘマトクリット値...................................................41.2
MCV.................................................................................50
MCH.................................................................................12.6
MCHC..............................................................................25.0
GLU 血糖値..................................................................119
GPT..................................................................................37
Creatinine クレアチニン(腎機能)...........................6.6 ......... 正常なら1.0前後
FelV.................................................................................(-)
FIV...................................................................................(-)
ソルラクト点滴、プレド、ビクタス、..............。
第2病日
点滴後、HCT22.0、クレアチニン2.5. 3.82kg
尿検査...............
GLU ±50 PRO +1 BIL neg URO +1 PH 6.0SG 1.030 BLD +1 KET ±1 NIT +1 LEU 250
輸血30ml、強制給餌、点滴。
第3病日
自分から少し食べる。Hillsのcd。3.78kg。
第6病日
食欲あり。口内炎あり。リンデロンシロップ。退院。
1ヶ月後
体重3.26kg。まあまあ食べているとのこと。
WBC 白血球数..............................................................17900RBC 赤血球数.............................................................6690000
HB ヘモグロビン..........................................................10.3
HCT ヘマトクリット値...................................................33.7
MCV.................................................................................50
MCH.................................................................................15.4
MCHC..............................................................................30.6
GLU 血糖値..................................................................80
GPT..................................................................................10
Creatinine クレアチニン(腎機能)...........................3.2 ......... 正常なら1.0前後
さらに半年後、鼻がぐずぐずする、うんちが硬い、とのこと。
WBC 白血球数..............................................................16700RBC 赤血球数.............................................................6130000
HB ヘモグロビン..........................................................11.2
HCT ヘマトクリット値...................................................35.1
MCV.................................................................................57
MCH.................................................................................18.3
MCHC..............................................................................31.9
GLU 血糖値..................................................................87
GPT..................................................................................12
Creatinine クレアチニン(腎機能)...........................1.9 ......... 正常なら1.0前後
Ca(カルシウム)..............................................................8.7
P(無機リン).....................................................................6.7
なんと腎不全がおちついてしまっていた。貧血もそれほどではない。現在17歳、御長寿。