「ある再会」
その日の私は、ひさしぶりにパイオニアへ足をはこびました。
約1ヶ月ぶりのPSOでした。
あいかわらず人がいっぱいいるなあと思いながら、
ロビーを巡り、何人かいる冒険仲間のカード検索をしました。
しかし、誰もかかりませんでした。
勇者狩りの2人もいませんでした。
テレホタイムには必ずいた2人。でも
でもいつしか、2人の姿を見なくなりました。
私はレベル80を越へ、また勇者狩りをしたいと思っていましたが
できなくなり、少し残念に思っていました。
FCロボはその後、
フランス代表と名乗るチーム(通訳以外はみんなF)と
練習試合をしてボロ負けし、
キーパーを置かないDFラインが近代サッカーの常識、
ということを知り、キーパーの私はFCロボを解雇されてしまいました。
しかし新生FCロボも、その後自然消滅したようです。
私は90枚あまりのギルドカードを見ながら、
いろんな人に出会ったなあ、いろんな事があったなあ、と
少し感傷的になりました。
1枚ずつカードをめくり、
ほとんどのカードが覚えてない人だったけど、
しかしある1枚で私の指は止まりました。
kai
アンダカ真理教の出家信者として
毎日活動しています。
カイさん・・・アンダカ真理教・・・
私は、アンダカ教関連のカードはすべて処分しましたが、
カイさんのカードだけは、捨てずに持っていました。
カイさんは今、どうしているのだろう。
アンダカ教はどうなったのだろう。
私はカイさんのカードを検索しました。
「Aルーム」という部屋にカイさんはいました。
アンダカ教がまだ活動していることに驚き、
私はカイさんのいるブロックに飛びました。
そのブロックには、AルームとBルームがありました。
カイさんのいるAルームには4人、Bルームには3人のフォースがいました。
100人規模の団体が、今では7人だけど、
でも私は、アンダカ教の教え、それに基づく修行には
とても魅力を感じていたので、まだ活動が続いていることに
うれしさを感じました。
いや、生まれては消える活動、人の輪、
移りゆくパイオニアの世界の中で、
以前所属していた活動の火がまだ灯っていることがうれしかったのかもしれません。
アンダカ教はたくさん人に迷惑をかけ、
私にとってもよい思い出とは言えないけど、
でも、迷惑をかけなければ、この活動もPSOでの遊び、
可能性のひとつだと思います。
あれから、アンダカを何個育てたのかな、
私はカイさんに会い、いろいろ話をしたかったけど、
でもそれはしないでおこうと思い、
私は目を閉じ、カイさんのいるシティを思い描き、
そこでアンダカに餌をあたえ続けるカイさんに、
「がんばっテ、お元気デ・・・」
と言葉はかけ、そのブロックをあとにしました。
他のシップに移り、すこし一人になりたかったので
誰もいないロビーに移動し、そこで壁に埋まりました。
なぜかとっても落ち着く壁埋まり。
私は、壁に埋まった自分の姿をボーっと眺めていると、
そのロビーにひとりのフォニュエールがやって来ました。
そして私のいる壁の前まで歩いてきて、
「こんばんは」
と言いました。
私は少し驚き、壁から出て
「コ、コンバンワ」
といいました。
「あの・・・雀斑さんのお知り合いの方ですよね」
「いえ、ワタシが雀斑でス」
「でも・・・私の知ってる雀斑さんは、
フォニュームの方なんですけど・・・」
「ああ、なるホド、そういうコトですカ。
ハイ、フォニュームの雀斑はワタシの友達デス」
その時私は、思わず
「ああああ!!!!!!!!!」
と叫んでしまいました。
「もしかして・・・君は・・・・」
「???」
「あの時の・・ロボ夫婦に育てられていた、あの小さなフォニュエールかい?」
「はい、あの時は雀斑さんにはお世話になりました」
「会いたかったよ!ずっと会いたかったよ!」
私はロボ語も忘れてそう言いました。
「あ、あの・・・あなたと会うのは、今日が初めてですけど・・・」
「そ、そうデシタね・・・ハジメマシテ、雀斑ロボでス」
「はじめまして、クレアです」
「クレアさんのコトは、フォニュームの雀斑さんからイロイロ聞いていマス」
あの時の小さなフォニュエールは、
立派な大人の女性に成長していました。
終わったと思っていた物語は、まだ続きがあったのです。
私はいろいろ話をしたかったけど、でも、
この雀斑ロボでは何を話していいのか、少し困惑していました。
「あ、友達に呼ばれちゃった・・」
彼女はそう言うと、私にカードを渡しました。
それは私がいちばん欲しかったものでした。
「私が会いたがっていたって、雀斑さんにお伝えください」
「ハイ、必ず、必ず伝えマス!」
「それでは、失礼しますね」
「あ、クレアさん・・」
「はい?」
「魔法、使えるようになりまシタ?」
「あはは、もちろん!じゃあね」
そう言うと、彼女は姿を消しました。
私はすぐフォニュームにキャラを替え、会いにいこうとお思いましたが、
それではあまりにも物語が急ぎすぎのような気がして、
今日はこの出会いの感慨にふけようと思いました。
しかし、再会は、これだけではありませんでした。
「久しぶり!覚えてる?」
クレアのカードを何度も何度も眺め、何度も何度も検索を
かけるような、ストーカー的なことをしていた時、
1通のメールが、私の元に送られてきたのです。
名前を見て、私はすぐピンときました。まさか、まさか・・・
私は思い当たる人のカードを探し、検索をかけました。
やはり彼女でした。
私がパイオニア内で初めて恋をし、オフ会で辛い別れをした
あの女子高生の子でした。
「お、お久しぶりデス。急なことで、すこし同様していマス」
私はメールを返信しました。
「また急なことだけど、今から会わない?そっち行っていい?」
「ハ、ハイ、いいデスよ」
どうしよう、どうしよう。
私は激しく混乱しました。
もしかすると、前のチームの連中がやってきて、
ストレス発散で私をバカにしに来るのでは、
そんな悪い想像までしてしまいました。
しかし、彼女はひとりでやって来ました。
「ひさしぶり・・・」
「おひさしぶりデス・・・」
私はなにを話していいのかわからず、ただ固まっていました。
「雀斑さん・・」
「ハイ」
「HP、作ったよね?雀斑の世界」
「あ、ハイ、作りまシタ、見られてしまいましタカ・・・」
「やっぱりソバだったんだ・・・」
「痛い話ばかりですケドね」
「ううん、すっごくおもしろかった、ファンになっちゃった」
「ア、アリガトウございマス」
「オフ会の話って、私たちのことだよね?」
「ハイ・・・」
「やっぱり・・・そうだよね・・・」
長い沈黙が続きました。
「あの時は・・・ごめんなさい」
「イエイエ、もう、気にしてませんカラ」
気にしていない、というのは嘘でした。
あの日以来、私は軽い人間不振に陥りました。
しかし彼女の「ごめんなさい」で、すべて洗い流せる、
私はそう思えました。
「あの時の私は、まだ子供だったんです・・」
「あれからマダ3ヶ月しかたっていませんケドね」
「青春真っ盛りの女子高生は、3ヶ月でも成長するの!」
この逆切れが、いかにもあの頃の彼女らしく、
やっぱり変わってないなあ、と思い、なんだかうれしさと
懐かしさで胸がいっぱいになりました。
「髪型、変えまシタね」
「うん、ソバもロボットになったんだね(笑)」
「しゃべりもロボ語になりまシタ」
「でも、敬語なところは変わってないね・・・」
あの時のチームは消滅し、
友達もPSOをやめたり、他のネットゲームに移ったりで
最近少しさびしくなって、私のことはHPを見て以来、
ずっと会いたいと思っていて、そして今日検索にかかったから
メールをした、ということでした。
クレアもそうで、久しぶりの再会が続いたのは偶然ではなく
必然だったのかもしれません。
「久しぶりに、いっしょに潜ろうよ」
「ハイ、潜りまショウ」
「部屋名は、アレね」
「いつものデスね」
私は「空想X無限大」という部屋を作り、中に入りました。
止まっていた時計が、再び動き出したような感覚。
1日だけのつもりで繋いだPSOでしたが、
忘れかけていたPSOの楽しさが、再び沸き上がりました。
私のPSO物語は、まだ当分終わりそうにありません。
彼女との冒険を終えてシティに戻り、
彼女がそろそろ落ちなければということだったので、
私も落ちることにしました。
「じゃあ、またね」
「ハイ、おやすみナサイ」
「と、その前に・・・」
彼女は私に近づき、
「チュッ☆」
と、言いました。
「お休みのキス、これも懐かしいね」
そのキスで、私は不覚にも興奮してしまいました。
さまざまな妄想が私の頭をかけ巡り、
やっと気分を落ち着かせた時にはすでに彼女はいませんでした。
モヤモヤしたまま私もゲームを終了させ、
ベットの中で、さっきの妄想の続きをし、
女子高生の彼女の他にクレアも加わったそのいけない妄想で
私は昇天し、夢心地のままその日は寝ました。
終わり