「ある家族」
私は2度のチームからのハブりにあい、傷心していました。
PSOが嫌いになりかけ、もうオンラインに繋ぐのは
やめようと思いながらも、懲りずにシップに降りたつ私は、
しかし乱入する勇気も、部屋を作って潜る気力もなく
ロビーでの会話をただただ眺めていました。
すると、小さなフォニュエールが、私のところへ近づいてきました。
「(ちょんちょん)」
小さなフォニュエールはそう言いました。
私は「??」と思いながら、その子を観察しました。
小さなフォニュエールは、私の横に立ち、また
「(ちょんちょん)」
と言いました。どうやら、フォニュームの私の服のそでを
ひっぱっているようでした。
「(ちょんちょん)」
「あ、あの、私に何か用ですか?」
「ママとパパをたすけて」
彼女はそう言いました。
「ママとパパを,ですか?」
「ママとパパをたすけてください」
そしてその子はカウンターへテクテク歩いていき、部屋へ入っていきました。
私はどうしたものかと思いながら、その子が入った部屋の
メンバーを確認しました。
その子の他に、レイキャストとレイキャシールがいました。
この2人がパパとママなのかな?と思い、
私はその部屋に入ってみることにしました。
部屋に入り、転送中に想像していたとうり、
ロボット2人の名前は赤色、つまりは死んでいました。
目の前には、さっきの小さなハニュエールの子が立っていました。
「ママとパパをたすけるの」
そう言うと、彼女は主転送装置へ走っていきました。
私は彼女の後を追いました。
森へ着き、私はロボットの2人に声をかけました。
返事はありませんでした。
「あのー、死んでもシティに戻ってこれますよ」
しかし、答えはありませんでした。
「ママとパパは死んじゃったの」
小さなフォニュエールは言いました。
私は、なんとなくこの状況が理解できました。
いわゆるなりきりで、死んでしまった両親を助けに向かう娘、
という設定なんだな、と思いました。
私は、つき合ってみようと思いました。
「よし、パパとママを助けに行こう!」
「うん!」
森の敵は、ほとんど倒されていました。
マップで2人を探したら、森1にはいないようでした。
「迷子にならないように、ついてくるんだよ」
「うん、わかった」
私たちは、森2をめざしました。
ふと立ち止まり後ろを向くと、
彼女の後ろに、メセタの道ができていました。
そして私の横に彼女が来ると、地面に1メセタを置きました。
「なにをしているんだい?」
私は彼女に聞きました。
「こうしないと、かえりのみちが、わからなくなっちゃう」
「あはははは」
私は大笑いしました。
「大丈夫だよ、リューカーで帰れるから」
「りゅーかー?」
「町へ戻る転送装置、ワープの扉だよ」
「おじさんてすごいんだね」
おじさんか・・・PSOでそう言われたのは初めてだな、
と思いながら、私たちは彼女の両親の元へ急ぎました。
森2へつき、マップで確認すると、親のロボットはボス転送装置の前にいるようでした。
「疲れてないかい?」
「うん、はやくママとパパをたすけなきゃ」
途中、敵の残党がいたので、私はラフォイエで瞬殺しました。
「おじさん、つよいんだね」
「君もすぐ覚えられるよ」
「あたし、まほお、つかえないの」
え?っと私は思いました。
「フォイエは、始めから覚えているでしょ?」
「ううん、つかえないんだ」
そういう設定なのか、とすぐわかりましたが、
しかし私は、この子は本当に魔法を使えない、
とてもかわいそうなフォニュエールのような気がしてきて、
とても切なく、そしていとおしく思えてなりませんでした。
「おじさん、まほおをみせて」
「よし、これはどうだい?」
私はギフォイエを放ち、辺りは火の玉で包まれました。
「うわあ、すごいすごーい」
私は、魔法を次から次へと放ち、そのたびに彼女は
とても喜びはしゃいでいました。
「???なんか、ちからがわいてきたよー」
「これはシフタって言うんだよ。攻撃力が上がるんだ」
「おじさん、まほおつかいいみたい!」
「そう、おじさんは魔法使いなんだよ」
「それと、もう1つ」
「なに?」
「私は、おじさん、じゃなくて、お兄さん、だからね」
「だっておじさん、ヒゲはえてるもん。ヒゲのひとは、おじさんなんだよ」
「はははは、じゃあ、おじさんでいいよ」
「うん、おじさん!はやくママとパパのところへいこう!」
ヒルデペアを倒し、視線の向こうには、2つの魂がありました。
「ママー、パパー」
彼女は一目散に2人の元で走っていきました。
「いま、いきかえすからね」
ピローン、彼女はアイテムを使いました。
ムーンを持っていたのか、と思い、しかし、2人は生き返りませんでした。
「あれ?あれ?」
ピローン。彼女はもう一度、アイテムを使いました。
しかし2人は生き返りませんでした。
「どうして?ママ、パパ・・・」
私は心配になり彼女のそばに行きました。
「何のアイテムを使ったんだい?」
「さっきね、おみせでかったの。グスっ」
「何て名前のアイテムだい?」
「ヒック、えっとね、あんてどーと」
「それは、毒を消すお薬だね」
「ヒック、ヒック、じゃあ、ママとパパは、いきかえらないの?」
「大丈夫、これを使ってごらん」
私は、マグエサ用のムーンを2つ、地面に置きました。
リバーサーを使うこともできましたが、
彼女の手で2人を生き返らせたいと、その時の私は思いました。
「これをつかえば、いきかえる?」
「うん、きっと生き返るよ」
ピローン、ピローン。
2つの魂は、レイキャストとレイキャシールの姿になりました。
「ママーーーー」
「よしよし、心配かけてごめんね」
「うえ〜〜〜ん」
「このたびは、本当にお世話になりました」
「いえいえ、お礼は娘さんに言ってください」
「ムーンを頂いたそうで・・・」
「いえいえ、どこにでも落ちてますから」
「ZZZZZ・・・」
両親を生き返らせた安心感からか、彼女は眠っていました。
「かわいい娘さんですね」
「お気づきかも知れませんが・・・」
「はい」
「あの子は私たちの本当の子ではありません」
ロボット夫婦からは生まれるはずのないフォニュエール・・・
私もずっとひっかかっていました。
「昔、ワシとこいつで、この森を探索中に、まだ幼いあの子を拾ったのです」
私は彼女の、かわいい寝顔に目をやりました。
「この子の親を探すため、ロビーというロビーをくまなく回りましたが、見つかりませんでした」
「それでワシたちが育てることにしたのです」
「冒険中、娘さんは、魔法を使えない、と言っていたのですが・・・」
「たぶん、ワシたちロボ夫婦に育てられたせいかもしれません」
「この子の将来のことを考えると、この子に相応しい魔法使いの育て親が必要なのかもしれません」
「そうですね・・・」
私は、なんとも気の抜けた返事しかすることができませんでした。
本当は、彼女を引き取りたいと、
そして立派な魔法使いに育ててあげたいと、
そしてこの子と、たくさんの思い出をつくりたいと、
そういう思いでいっぱいでした。
もはや、なりきりという考えが薄れ、本当の物語の中にいるようでした。
しかし、私なんかに、この子の親代わりが努まるだろうか、
という不安もありました。自信がありませんでした。
この物語の中に飛び込む最後の覚悟が、
その時の私にはなかったのです。
「むにゃむにゃ。。ママー、おしっこー」
彼女は目を覚ましました。
「じゃあ私は、このへんで」
「はい、今日は本当に、お世話になりました」
「おじさん、バイバイ」
「ばいばい」
私はその部屋をあとにしました。
私はその夜、布団の中でその親子のことを考えました。
これまでを読んだみなさんは、この親子はなりきりで、
事前に打ち合わせをして、そして私を楽しませた、
あるいみ劇団のようなもの、と思うでしょう。
私もはじめはそう思いました。
しかし今は、なりきりなどではなく、ラグオルに本当に住む親子なのでは、
と思えてなりません。
カードは貰えなかったので、彼女に私から会いに行くことはできません。
私は、あの時物語の中に飛び込めなかったことに強く後悔し、
藤崎詩織ちゃんの抱き枕を、いつもより強く抱き締めながら、
その日は寝ました。