「チョイスサーチ事件」
その日は、レベル49のレイキャストの私と、
レベル53のハンターのトキさんとでベリハの遺跡を潜っていました。
トキさんのスプニのおかげで、なんとかボス前まで来ることができましたが、
DFを倒せるかどうかは微妙でした。
「とりあえず当たって砕けろで。行こうぜ」
「ハイ、ガンバってみまショウ」
2人で意を決して、DF戦に突入しました。
無敵の効果などもあり、
なんとか第4形態まで進むことができましたが、
しかし、グランツには2人とも耐えることができませんでした。
人形も切れ、2人はシティへ戻りました。
「クソ、くやしいぜ」
「クヤしいデスね」
「友達呼んでみる」
そう言うと、トキさんは検索を始めました。
私には友達と呼べる人がいなかったので、しばらく待っていました。
「クソ、誰もいないや」
「ザンネンですネ・・・」
「そうだ、チョイスサーチしてみっか」
チョイスサーチとは、ver2から加わった機能のことでした。
ロビーにいる人を検索できて、メールを送れるそうです。
「レベル100強の人に助けを呼んでみるぜ」
トキさんがメールを送ってから数分。
相手からはなんの返答もないようでした。
「もう1回送ってみるか」
トキさんは再び助けを求めるメールを送りました。
私もひとりの人にメールを送ってみました。
しかし返ってきた答えは「ごめん、今忙しい」でした。
「なんだよこいつ、無視してんのか?」
トキさんが送った相手からは、一向に返事がないようでした。
何人もの人に送ったところで、入れるのは2人までなので、
ひとりに送ったらその人からの返事を待つしかありません。
オッケーの返事をもらったところで、もう見つかりましたゴメンナサイ、
では相手に失礼だと思うからです。
「雀斑さん、レベル100〜120で検索してみてくれ」
「ハイ、してみまシタ」
「○○ってのがいるだろ?そいつにメール送ってみて」
トキさんが送った相手のようでした。
私も送ってみました。
チョイスサーチを始めてすでに10数分が経過していました。
「返事きた?」
「きまセン・・・」
「やっぱこいつ、俺らのメール無視してやがんだ」
「ヒトコトでいいから、ヘンジくれればアリガタイですネ・・・」
「クソ、こいつムカつく。ちょっといってくら」
チョイスサーチでは、その人のいるロビーも表示されます。
きっとトキさんはそこへ、直接会いにいくつもりのようでした。
「あ、待っテ、武器回収しなケレバ」
「おう、そうだったな」
2人でボスの部屋へ戻り、武器を回収し、そして○○さんおいるロビーへ向かいました。
「○○ってのいるかあ」
「はい?」
「お前、俺らのメール無視しただろ」
「あ、ごめん、気づかなかったw」
「そんなわけねーだろコラ。笑ってんじゃねえ」
「なにかあったの?○○」
○○さんは、知り合いと2人でいたようでした。
「ワタシ達が、チョイスサーチで彼を検索して、DF倒しの助けを求めたのデス」
「ふむふむ」
「無視したことを謝れ!」
「はあ?」
トキさんは、彼に謝罪を要求しました。
「なんで謝るの?w」
「こっちは返事来るのずっと待ってたんだ」
「チョイスされるのがイヤなら、オフにもできマスし」
「なんかウゼエ。俺落ちるわ」
そう言うと、○○さんの姿は消えました。
「じゃ、じゃあ僕も・・・」
彼の知り合いも落ちていきました。
「クソ、むかつくわああ。むかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつ」
「ザンネンですネ・・・・」
「雀斑さん、俺も落ちるわ。クソむかつく」
トキさんも落ちていきました。
とても後味が悪い冒険でした。
チョイスサーチは便利だけれど、しかし世間の冷たさ、
みたいなものも感じずにはいられませんでした。
断りの返事もちょっと悲しいけれど、でも無視よりはずっといいです。
トキさんの行動は行き過ぎかもしれませんが、
しかし、無視だけはしないでほしい、と私は思うのです。
そして、もし私がチョイスされたら、どんなことがあろうと
その求めに応じよう、絶対助けに行こうと心に強く思い、
その日は寝ました。