やんちゃ時代の大ママちゃん 1998秋-2000秋

入院前,大ママちゃんは毎日、おじゃる丸の始まる時間に起きて、

深夜便の始まる時間にベッドに入っていました。

やんちゃだった大ママちゃんのエキサイティングな日常の一部を

ご紹介します。

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あたたかい言葉 99 

 ママと妹がけんかをしたときのこと.妹が大ママちゃんに「ママに嫌われてしまった」と愚痴をこぼしました.すると大ママちゃんは「そんなことはないわ.ゆさんが倒れたときに一番に心配してくれるのはママよ」と言ったのです.何ていい話でしょう.

ところが,私はこの話の詳細をすっかり忘れてしまい,ディッキーさんの記憶を手がかりに書いてみました.当の本人は覚えているでしょうか??当時,大ママちゃんは妹のことを「ゆさん」と呼んでいました.

電気をぱちぱち 98-99 

 大ママちゃんのベッドサイドには部屋の電気のスイッチがありました.まだ大ママちゃんがわりと普通だった頃,といってもおかしくなってきたなあと思ったことに,夜中に電気をつけたり消したりスイッチをぱちぱちするのを見つけた瞬間があります.眠れなくて退屈だったのでしょうが,やっぱりあれはおかしいですね.それと,危険なことがあったらすぐ知らせるようにベッド脇にブザーボタンもつけたのですが,やはりお決まりのごとく,何でもないのにブーブー鳴らして困りました.皆,夜は寝てますからね.でもそれでも,何も出来ない今よりずっとずっと,大ママちゃんの身体はよく動いていたのです.

お出掛けとおやつ 

 食いしん坊の大ママちゃんは,お散歩に出掛けるとかならず何かしらおやつを食べて帰ってきました.公園に行って持参したお菓子を食べることもあれば,夏にはスターバックスや立田野に行ってフラッペ氷あずきなど,けっこう豪華なおやつのときもあります.私とディッキーさんで大ママちゃんを梅見に連れ出した帰りにも,立田野に寄りました.もう梅も終わりかけの頃であまりきれいではなかったのですが,抹茶アイスクリームを所望した大ママちゃんはとても満足そうにぺろりと平らげたので,お出掛けしてよかったとちょっと安心したのでした.

頑張ってできた体操 98.11.

 よく転ぶようになった大ママちゃんは,リハビリの先生に教えてもらった体操を毎日一生懸命続けていました.座ったままステッキを両手にもって右に左にひねったり,上にあげたり下におろしたり.仰向けになって膝を立て,右に倒したり左に倒したり.でも,もう自分で上半身を起こすことは出来ませんでした.体操をしながら「こんなことをして本当に歩けるようになるかしら..」とつぶやいて泣いてしまった大ママちゃん.あの時は本当にきつかったです.大ママちゃんが病気になって一番大変だと感じたのは,今でもやっぱりあの時だと思います.

家の中の工事 98-99.

 大ママちゃんの歩行が危なくなって,まず手すりをつけるようにしました.トイレのドア近く,外と中と便器までつたっていけるように3ヵ所,お風呂場にも外と中と2ヵ所,そして玄関を出て門までに手すりをつけてもらいました.大ママちゃんがしっかり握れるように,位置や太さを確認します.そして玄関から門までのわずかの階段も車いすが通れないので,スロープをつける工事もしました.引っ越してわずか2年しか経っていないので,最初から考えていればよかったのですが,まさかこんなに早く歩けなくなるとは思わないものです.家の中は最初から段差がないように計画していたので,この点はとても便利でした.

大ママちゃんにご挨拶 99.11.

 ディッキーさんのお友達のW君がうちに遊びに来たときのことです.なんと大ママちゃんと誕生日が同じということで,大ママちゃんにも会ってもらうことにしました.初めて会うお客さんに大ママちゃんは神妙な面もちでご対面です.W君はうやうやしく名刺を差し出し,大ママちゃんに渡しました.すると大ママちゃんは「大ママちゃんの,名刺を,出してちょうだい」と言ったのです.なんと,大ママちゃんは自分の名刺をきちんと名刺入れにしまっていたのでした.名刺交換ができて,大ママちゃんは大変満足そうでした.そして記念に写真を撮ったのでした.

それはホラーでした

 大ママちゃんがにこにこクラブ(デイケア:仮称)に行き始めて,最初か2回目の誕生日近くの日のことでした.いつものようににこにこクラブに参加して,夕方送迎バスから降りてきた大ママちゃんは,何と,きらきらに光った冠に(もちろん紙で作ってある),派手なレイをぶら下げて,満面の笑みを浮かべていたのです.とても正気の沙汰ではありませんでした.何でも,お誕生日のお祝いをして頂いたらしく,色々なプレゼントがいたくお気に召したようで,家までそのまま帰ってきてしまったそうです(職員の方のご好意で).大ママちゃんの痴呆もここまできたのだなあと実感した一瞬でした.でも,大ママちゃんが幸せならそれでいいのです.幸せなら何だっていいじゃないですか!

きれい好きの大ママちゃん

 主婦の鑑だった大ママちゃんは,炊事,掃除,洗濯と何でも張り切ってこなしていました.床にゴミが落ちているとすぐに拾って捨てたものです.身体の自由がだんだん利かなくなってからも,ゴミを見つけると気になるようで,よく拾おうと椅子に座ったまま手を床に伸ばしていました.その危ないことといったら!今にも頭から床にどすんと落ちそうでどきどきでした.もうゴミは拾わなくていいと言っても,どうしても気にしてしまう大ママちゃん.病院の待合室でも「あそこにゴミがある」と気になってしょうがないのでした.

大ママちゃんのシャワー

 大ママちゃんの足が悪くなった98年秋から入院前まで,大ママちゃんは自宅のシャワーを使って身体を洗っていました.そのために,あらゆるところに手すりがつけられ,シャワー用の椅子も準備されました.大ママちゃんはお部屋でバスローブに着替えてから脱衣所にごろごろと椅子で運ばれ,手すりにつかまって身体を支えながらお風呂場へ入ってもらいました.ゆっくりとシャワー用の椅子に座ってもらうときが一番緊張しました.大ママちゃんはもう身体がよく動かなかったので腰を落とした位置にちょうど椅子が来なくてはいけません.立ち位置から座るのによい場所へ椅子を置けるかが重要なポイントでした.

大ママちゃんが落ちた! 00.9.

 それはヘルパーさんが帰ってから、ママさんと大ママちゃんが二人だけで過ごす夕方6時からの時間帯でした。ママさんが台所で夜ご飯を作っている時に、椅子に座ってテレビを見ていた大ママちゃんが、そのまま前のめりになって椅子からごとんと落ちてしまったのです!体重が38キロある大ママちゃんを持ち上げるのは、ママさん一人では無理だったので、パパさんの会社に電話して急いで帰ってもらうことにしました。その間、大ママちゃんはフローリングの床に座布団をひいて寝かされていたそうです。

 老人を縛るかどうかの問題はとても議論になります。でも、人手が足りない場合はどうしても縛らなくては心配です。ちょっとでも目を離したすきに落ちてしまうのでは、何もほかの仕事が出来なくなります。たくさんの家事はいくらヘルパーさんを頼んでもなくなることはないのです。私たちも、嫌がる大ママちゃんは可哀相だと思うのですが、落ちてまた大きなあざを作るよりはいいでしょうと(骨折しないところが丈夫な大ママちゃんらしいです)我慢してもらいます。私たちだって、たくさん我慢しているのですから!

大きなトイレ

 その日は土曜日だったので、少し遅めの8時に大ママちゃんを起こしに行くと、大ママちゃんは「寝るの、いやあ」と、もがいていました。臭いニオイに嫌な予感が走ります。やはり大ママちゃんはおむつパッドにうんこをべっちょりしていました。うんこと一緒に寝るなんて、さぞかし嫌なことだったでしょう。このような状態になると、服や大ママちゃんの足など、余計なところにうんこがつかないよう上手くパッドを取り除くのに、細心の注意が払われます。両足で立っていることがおぼつかない大ママちゃんなので、それはそれは力と技が必要になるのです。便器にモノがついて力つきた大ママちゃんがそこにべちゃんと座ってしまったときほど、悲惨なことはありません。その日は妹を呼んで、何とかうまく始末できたのでした。

車椅子

 先日,大ママちゃんの車椅子が新しいものに交換されました.紫色でチェックの布がとってもお洒落で可愛かったのですが,車体が前のものより小さく,デイケアの施設でテーブルにつくときに,大ママちゃんの顔が見えないという非常事態になってしまいました(座面の高さが低い上に大ママちゃんの前屈がとても激しくなっているからです!).そこでまた少し大きいものに取り替えて頂いて,無事デイケアに通えるようになりました.

 車椅子を押していて気がついたこと.道ががたがたしているのはいうまでもないのですが,たとえ平らであっても脇に行くにつれ傾斜している道はとっても押しにくいです.右の車輪と左の車輪の高さが違うと,力が必要でとても大変です.私に力がないせいかもしれませんが,真っ直ぐ安定させるのに一苦労です.

 大ママちゃんは自分が綺麗でいるときに,鏡を見るのが大好きです.新しい洋服を着たとき,お化粧をした後,ゆっくりと自分の顔を眺めています.美容院に行った日は,おトイレの帰りに,つないでいる腕に力を入れて,居間に戻るのではなく大きな鏡のある洗面所に行きたいと主張するほどです.昔からお洒落でしたが,今でも十分にお洒落さんなのです.反対に髪がのびてぼさぼさになってくると,ちっとも鏡を見ようとしません.洗面所で歯を磨いていてもちっとも前を向かないのでした.

朝ご飯

 ウィークデイの大ママちゃんの朝ご飯はいつも決まったメニューです.トマトのみじん切りマヨネーズ和え,しらす入り目玉焼き,紅茶に浸した柔らかいトースト,紅茶です.土曜日曜日はハチミツパンと目玉焼き,すったリンゴに紅茶です.大ママちゃんは明け方4時とか5時に目が覚めてしまうらしく,その時間から父に「もう起きる」「お腹すいた」と言っているそうです.卵の調理方法を聞くといつも「目玉が大好き」と答えます.確か,まだ元気で自分で朝ご飯を作っていたときは卵焼きを食べていたはずなのですが..

お顔のお手入れ

 大ママちゃんは朝ご飯を食べて歯を磨いた後に、必ずお化粧します。本人いわく、メイクをしないとおかしい、お肌がつっぱる、誰か来たら困る、とのことです。大きな大ママちゃん専用のメイクボックスと鏡を運んでフルメイクが始まります。高そうなクリームから頬紅、アイシャドウも持ってるんです。妹と私とで眉毛をどっちが上手にかけるか張り合ったりします。口紅だけは何とか唯一自分でぬれます。素顔の大ママちゃんも可愛いのですが、メイクをするととてもきれいになります。お顔が完成したら鏡をじっと見て点検して、大ママちゃんの1日が始まるのです。

トイレの問題

 身体が不自由になると,もちろんトイレは大きな問題になります.どうしたって誰かの助けが必要になるのですから.家族が手伝います.ヘルパーさんが助けてくれます.施設の人もお世話してくれます.そうして大ママちゃんは生きているのです.いつだったか何かのラジオ番組で,長生きはしたくない,排泄を自分で出来なくなるようだったら,尊厳死を望む,という意見を耳にしました.私はそれを聞いてちょっと悲しくなりました.もちろんそんな状態になるのは嫌だし,とても恥ずかしいと思います.でも,大ママちゃんはそれを乗り越えて生きているし,私は大ママちゃんが生きていてくれるのが嬉しいのです.自分の生命をそういう理由で終わらせてもいいのでしょうか...

ある秋の日曜日 99.11.

 大ママちゃんとディッキーさんと3人で江戸東京博物館へ行きました。広くてゆったりとしていて展示物も面白く、職員の方も親切で、楽しく見学することができました。大ママちゃんもかなり熱心に見学していました。車椅子や駐車場が利用できたり、トイレも使いやすくとてもいい博物館でした。展示物によくある柵が車椅子だとちょうど目線にきたり、駐車場から建物に入るときの重たいドアが入りにくいのが少し気になりましたが、とても居心地よく過ごせました。でも、大ママちゃんのピンチは博物館からの帰りにあったのです!見学の後に休憩してジュースを飲んだことが失敗でした。大ママちゃんは帰りの車の中でトイレに行きたくなってしまったのです。トイレ、トイレとつぶやく大ママちゃん。握りしめた手はどんどん汗ばんできます。どこか車を停めてトイレを借りようにも、大ママちゃんの使えるトイレはなかなかないでしょうし、第一慣れていない場所ではたぶん用を足せないでしょう。「大ママちゃん、ここでしてもいいよ」と言いましたが、大ママちゃんはちゃんと家まで我慢できました。大ママちゃんはトイレコントロールが出来ることが証明されたのでした。

洗面所にて

 大ママちゃんは洗面所で歯を磨いた後、椅子に座って休憩をします.その時に洗剤やタオルを入れている棚が目に入るせいか,毎回のように「これ何?」と手を出して開けようとします.そして次々に開けてみては「これか」と笑っているのです.ついに典型的な症状が出てきたわと思って悲しくなっていましたが,ようく注意をすると,大ママちゃんは手を伸ばして開ける前から「これか」と言って笑っているのです.大ママちゃん,まさか私をからかっているの?

いよいよ来た介護認定 00.1.

 大ママちゃんももちろん介護保険の恩恵に預かることになっています。お医者さんに書類を作ってもらったり、面接を受けたりして、先日やっとお知らせがきました。なんと一番重度の段階5でした。福祉担当の人に「おめでとうございます」と言われても、何だか複雑な気分です。確かに1年前の同じ時期よりも、大ママちゃんは出来ないことが確実に増えています(というより、出来ることはほとんどない)。それでも、大ママちゃんは座っているだけでとても可愛いらしいのです。あくびをすると、まるで仔ライオンのようです。年をとると赤ちゃんに戻ると言われますが、本当にその通りだと思います。ただ、赤ちゃんはどんどん成長して手がかからなくなって明るい未来が待っているけれど、大ママちゃんはよくなることは決してないのです。それは悲しいことですが、私は大ママちゃんがいてくれてとても幸せだと思います。

大ママちゃんの仕事

 大ママちゃんは毎晩、次の日に飲む薬を袋にいれるのが仕事です。朝、昼、夜と3つの袋に分けて、大ママちゃんは毎日真剣に薬を入れています。一錠ずつの薬はわりと上手に入れられるのですが、苦手なのは夜だけの薬を正しい袋に入れることです。夜の袋には「3番」とかかれているのですが、大ママちゃんはいつも自分の正面にある2番(お昼)の袋に入れてしまいます。「違うよ」と言うと、右端にいつもおいている1番(朝)の袋に入れようとします。前もって「これが3番だからね、ここにおくよ」と言っても間違えてしまいます。左におくせいかと、1番と3番を逆にしてみましたが、やっぱりうまく入れられません。数字を大きく書いて「これは何番?」と尋ねると、大ママちゃんは正確に答えられるのに、どうしてだろう。大ママちゃんはあの薬が嫌いなのかもしれません。

大ママちゃんの美容院 99.10.

 大ママちゃんがずっと行っていた美容院は、美容師さんも高齢のためにお店を閉じてしまいました(あぐりのようなお店でした)。大ママちゃんが行ける美容院はどこだろう? 家から近くて車椅子で行けて、理解のあるお店でしかもおしゃれでなくちゃと探したところ、ちょうど家の近くにオープンしたばかりのお店が大丈夫とおっしゃってくれました。入り口に段差があるので、Dicky さんに抱えてもらいましたが、とても親切なお姉さんが、マダムっぽい素敵な髪型に仕上げてくれました。大ママちゃんのことを「とても可愛いですね」と言って、履いている靴まで誉めてくれました。その靴は、マジックテープでとめるタイプの靴で、本当は大ママちゃんはもっとお洒落な靴が履きたいと思っていたのです。でも、もこもこと暖かそうなその靴は大ママちゃんの小さな足におさまって、とても可愛いらしく見えました。帰り際の大ママちゃんはとても満足そうで、なかなかいい日曜日が過ごせました。

大ママちゃんとET 99.1.

 テレビでETを見ていて思ったこと。大ママちゃんと似てる・・・ 目が大きいところ。愛嬌のある顔立ち(もちろん両方可愛い)。ひょこひょことした歩き方(大ママちゃんは手をひいてもらわないと、いけないけど)。細い指先でゆっくりと物をつかむ様。食べることが大好き。静かにしなさいと言っているのに「ET、おうち、電話」と連呼するところ(大ママちゃんは「トイレに、運んで、ちょうだい」)。大ママちゃんをモデルにしてETが作られたぐらいに、そっくりなんだよ。と、妹に話をしたら母が悲しむから母に話してはいけない、と言われたのだけれど。もう、遅かった・・・

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