担当医M

これ、こいつがこのHP誕生の父。私のエネルギー(主にマイナス)の源である。
出会いは入院の数ヶ月前、かかりつけの病院に手術を勧められた際に紹介された、という不運な巡り合わせであった。
私の病床名は「左股関節臼蓋形成不全による左下肢の短縮」という未だに読めない病症名である。要は成長が止まった時に5センチの差が左足に生じ、それが原因であちこちに故障がでてきてしまうため「骨の延長」という術を施したわけである。
ただ、延長としては「移植」という方法もあるのだが、子供だと成長期の助けもあって完治は早いが大人は何かと大変、ということで延長器具を足に装着し、ジワジワと引っ張り伸ばす、というえぐい方法をとった。
で、この権威というのがドクターM。イリザーノフという器具を使わせりゃ、奴にかなうものはいないらしい(紹介元病院S部長談)。
権威、のわりに庶民的なキャラの持ち主で、入院患者には何かと追っかけも多い。
その理由は後で知ることになるのだが。
5KB 入院初日にナースステーションに呼ばれ、翌日のオペの説明を聞かされる。
ボールペンでカキカキとオペでの入刃個所を悪戯書きされる。
もう、私は人格のない対象らしい。その後、ちゃちな紙切れに「手術してもいいよ」と署名させられ、保証人の欄には自ら父親の名前を書かされた。
こんなんで何かあったら悔しいぞ、と思うがこの時、父親に来てもらえば良かった、と後々後悔することになる。
M医師はここK病院の副院長だと、すごく後になってから知った。
40代、この業界で言うならば油ののった働き盛り。海外の学会でスピーチしちゃうような偉い人らしい、が、英語はキャラ同然、ブロークン。身体は無駄にでかく、医者じゃなかったら絶対に「ウドの大木」、加えて顔黒。いつも「布団が吹っ飛んだ」系なくだらなさで入院患者の婆さんたちのハートをガッチリ掴んでいる様子だった。
しかし、看護婦たちは仕事上の問題からか、そんなふざけたキャラのM医師に陰で舌打ちしてそうなところが実に愉快であったが。
M医師はとにかく大雑把。オペも診断も歩き方さえも。
朝から夕方まで、病棟内をパッタパタとサンダル履きのような足音を響かせて婆さんたちのアンテナにひっかかっていた。
大雑把なだけに婆さんたちの扱いもお上手。走るM医師を追いかけ「私の悩みを聞いてくれ」等という婆さんたちの相談事を片っ端からかわして逃走(そう見えるんだな)。
多分、奴の歩き方さえ直せばあんなにも病棟は騒がしくならないと私は確信している。
M医師いわく、私の年頃の患者は苦手、とか。
婆さんほどの騙しもきかないってことか、と私は理解したが患者として言いたいことは言うし要求もする、という態度だったゆえ、嫌われたのかもしれない。
患者がそれを望んでもM医師にお茶の間の「みのもんた」的存在は重荷なのか。
それから私は誰よりも(婦長よりも)厳しくM医師の行動をチェックするようになってしまった。

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