ゼロ時間へ アガサ・クリスティー ハヤカワ文庫


静寂に包まれたその部屋には、たった一人の人間が滑らせるペンの音がするばかりだった。
だが、もし誰かがその文章を読んだなら我と我が目を疑ったに違いない。なぜなら、そこに綴られていたのは細心の注意と努力を払って練られた綿密周到な殺人計画だったのだから。
そして数ヶ月後、平穏な漁村で起こった残忍な殺人……殺人を企てられる瞬間から、殺人の瞬間”ゼロ時間”へと遡っていくミステリの常識を破った野心作!



<感想>

聞く所によると、叙述トリックを始めて書いたのはクリスティだったそうで。
新しい試みが好きな作家さんだったんですね。そんな事思って読んだ事なかったので、めからうろこ。

この作品も「野心作」とうたわれているだけあって、斬新です。もし同じ事やったらやっぱ二番煎じの汚名は避けられないだろうな。

……で、どうか?というと、殺人者は最後まで被害者を襲わないわけで、ちょっと退屈になったりはしました。
誰が誰を殺すことになるのか興味深々だったんですが、それだけで読者を引っ張るのは、無理があったのかもしれない。
でも、これ以上に(このアイデアで)読者を惹き付けられる作者がいたら絶対読む!と思わせるくらい完成度の高い作品だと思う。




ナイルに死す アガサ・クリスティー ハヤカワ文庫


美貌の資産家リネットと若き夫サイモンのハネムーンはナイル河をさかのぼる豪華客船の船上で暗転した。突然轟く一発の銃声。 サイモンのかつての婚約者が銃を片手に二人を付回していたのだ。
嫉妬に狂っての犯行か?……だが事件は意外な展開を見せる。船に乗り合わせたポアロが暴き出す意外極まる真相とは?



<感想>

実は再読です
しかし、前に読んだのはかれこれ10年も前でしょうか?
なのに!!
犯人を覚えていて、しかも同じ感想を持ってしまった!!
もっとも……恥ずかしながら思い出したのは終盤だったので、ばっちり楽しめましたが<おい

物語前半は登場人物紹介みたいなもので、ゆっくり進むから(そう書いてある)退屈するかな?と思ったんですが、とんでもないです。
人間が書かれている、とはこういう作品のことでしょうか?それとも、事件の伏線だから読み進められたのでしょうか?
まあ、どうでもいいです。前半も楽しめたのですから

トリックは、目からうろこ(当時は……今はちょこっと覚えていたので……)やっぱクリスティはすごいわ
いろんな犯罪が交錯しているのも、またすばらしい
でも、この本はそれだけじゃないんですよね

前回持った感想を今回も持ったと書きましたが、それはやはりトリックのことじゃないんです
被害者のリネットがあまりにもかわいそう……という事です
ネタバレになるのであまり書けませんが、美貌も資産もビジネスセンスも、すべて持っている彼女は、自分でも何の不満もなかったんですよね。そしてそのまま亡くなったのだから、彼女自身は幸せだったわけです
……あ、だから気の毒じゃないんだ!たとえ真実の世界に生きられなかったとはいえ、本人はそのことを知らずに死んじゃったから
こりゃめでたい……のか?

リネットが気の毒、と書いても決して好きではないんですね、これが
だって平凡な小市民である私は、とてもコーネリアにように達観できないから(^^)

この本は「リネット」を中心にさまざまな人物が集まります
犯人はもちろんですが、その他の登場人物も思惑を持ってこの旅行に参加しているのです
そして、ロマンスも生まれます
誰と誰がくっつくか、それも楽しみに読み進められるでしょう……私は興味なかったけど<おいおい

物語途中でポアロは犯人の見当がつくんですよね
となれば、もったいぶらずにさっさと犯人を捕まえていれば、最後の事件は起きなかった?
証拠がなくて逮捕できないなら、監視だけでもつけていればよかったのにね