プリズム 貫井徳郎


小学校の女性教師が自宅で死体となって発見された。傍らには彼女の命を奪ったアンティーク時計が。事故も考えられたが、状況は殺人を物語っていた。
ガラス切りを使って外された窓の鍵、睡眠薬が混入された箱詰めのチョコレート。彼女の同僚が容疑者として浮かび上がり、事件は容易に解決を迎えるかと思われたが……




<作者紹介>

1993年第四回鮎川哲也賞の候補作「慟哭」でデビュー


<感想>

この第四回で鮎川哲也賞を受賞された方は「近藤史恵 凍える島」でした。
「凍える島」を読んだあと「慟哭」を読み、え?っと思ったのは私だけではないでしょう。
その後、すっかり貫井徳郎のファンになってしまいました。

この作品は「毒入りチョコレート事件」のオマージュらしいです。
ご丁寧に犯行現場に「チョコレート」なんかも登場します。

ネタバレはいやなのですが、事件を詳細に書くとしっかりばれそうなので、結局裏表紙に書かれていること以上に書く勇気がない。

「毒チョコ」は最終的には犯人を明記してありますが、その後いろんな方が別解を考えられたみたいですね。
この本「プリズム」もきっとたくさんの別解が生まれるのではないでしょうか?
そのように創られています。

私にもそんな能力があったら挑戦してみるのですが。





被害者は誰? 貫井徳郎 講談社


「とことん名探偵、ここまでワトソン」
『慟哭』で読者を驚愕の極地に追いやり、『修羅の終わり』で読者の魂を揺さぶり、『妖奇切断譜』で読者を恐怖のどん底に陥れ、『プリズム』で読者から感嘆の唸り声をひねり出した優駿作家・貫井徳郎が、今度はこの『被害者は誰?』で、”読者に喝采の叫び声を上げさせる”


<感想>

作者の言葉にあるように、マニアックな作品
セイヤーズの『被害者は誰?』とパット・マガーの『探偵は誰?』を読んだのがつい最近なので、比べてみた
……いや、比べなくてもいいか、似て非なるものだし
この名探偵・吉祥院は容姿端麗、頭脳明晰、超売れっ子作家でカリスマまで持っている
ところがお約束で性格がめちゃ悪い……まるで漫画だね
こういう設定なので当然軽いノリだけど、そこは貫井、手は抜いていません
すべて叙述トリックが挿入されている

被害者は誰?
庭から白骨死体が発見され、そこの主人が逮捕されたが、さて、この被害者が誰だかわからない
なんせ十年も前の死体で、ご丁寧に歯列も砕いてある
手掛かりは、ワープロの中にあった手記である
一人目は会社の同僚、二人目は妹、三人目は交通事故の被害者である近所の主婦

軽い話なのに気が滅入るのは、被害者とおぼしき三人がいずれも胸糞悪くなる奴等だからに他ならない
まったく悪い奴がいるものだ
これくらいなら許せると思うのか、どこまでもずうずうしい三人を見て犯人に同情する
しかも!!被害者じゃなかった者達は最後幸せになってる!!こんな後味が悪い本は嫌だ
……謎解きとは関係ないですはい

目撃者は誰?
浮気を目撃され、金銭要求された主人公は、向かいに立っているアパートの三軒に目をつける
深夜電気が点いていたのがその三軒だったからだ
そこまでは簡単だったが、はて、それからどうしたものか
会社の同僚である三人に接触してみたがどうにも手掛かりがつかめない
その会社の従業員である薬師丸は、差出人不明の旅行券三万円分をもらって、疑問に思い桂島に相談する
その後、その会社の吉村という人物が殺されるという事件が起きる

簡単に言えば『目撃者』を絞る話ではないですが、まあ、面白いかと
今回は吉祥院の推理はおまけみたいなもので、殺人事件の犯人は当たらなかったんだけどね

探偵は誰?
原稿に窮した吉祥院は、過去、自分が遭遇した事件を本にする事にした
当然登場人物の名前や思考や姿形も変えてある
その原稿を読んで、登場人物の誰が探偵・吉祥院なのか……を、桂島が推理する

モデルである四人の登場人物は、社長の別荘に招待される
そこで社長が殺される

ダメダメ
叙述だから「四人の中に吉祥院はいない」として読んでしまう自分が情けない
後は「社長の娘」と「警察」しか残ってないのに……あ!!ネタバレ??
桂島の「絶対小説の中でも自分よりいい男だ、と書いてあるハズがないから、彼は違う」とか訳わかんない推理するのと一緒だな
そこまで吉祥院の性格が際立っているのも叙述を生かす伏線というべきか

名探偵は誰?
これも吉祥院の性格もの……なんだろうな叙述部分は

丸山が目覚めると自分の部屋に見知らぬ死体があった(これセイヤーズね)
被害者三田村をストーカーまがいの事をしていたという証言もあり、部屋には二組のワイングラスがあり……
どうみても犯人は丸山としか思えない しかし丸山は絶対知らない人だと言い張る

鮮やかな謎解きなんですが、読者に呈示されない条件が多すぎて、ミステリー的にはフェアとは言えない
でも楽しいから許そうと思う
気に入ったぜ吉祥院






神のふたつの貌 貫井徳郎 文藝春秋



<感想>

痛みを知らない早乙女は、それゆえに犯罪を犯す そして、宗教を完全に理解出来ない彼は、そのためにも犯罪を犯す
輪廻はめぐり……

キリスト教という、日本人には(少なくとも私には)矛盾が多い宗教に、牧師の息子である早乙女は(私と同じ)疑問を持ち、そしてその解答は得られない
しかし、牧師となるよう運命付けられている彼は、自分を納得させられる解答が欲しくてたまらない
これを書いた貫井は、はたしてキリスト教徒なのだろうか?……疑問も解答の妙に納得させられるんだけど
つまり、私と(多くの日本人と)同じ疑問を持つというのは、私サイドなのかな?と思って
どうでもいいですか?そうですか

でも、彼が痛みを知らないから……という設定は最後に覆されるんだよね
この設定が果たして本当に必要だったんだろうか?面白いけど

しかし、みごとにミステリでない
叙述が仕掛けられているぞ!!と、思ったシーンも普通に終わっちゃうし……
……だから、ミステリじゃないってのは知ってたのにどうして期待しますか?