
デスバレー国立公園はサンノゼから車で10時間、あと2時間行けばラスベガスという位置にある。
職場のアメリカ人に、酔っ払いながら「アメリカに1年滞在するのなら、デスバレーには絶対に行かなくてはいかん!これはrecommand(推薦)ではなくてmust(義務)だ!」と力説されたので、長距離ドライブをして行ってみることにした。
Death Valley。死の谷という意味だ。
一般に、山に囲まれた盆地は風が吹かず、海にも面していないため、真夏には照りつける太陽によって猛暑となる。日本でも最高気温の日本記録は岩手県にある盆地が持ってる。
デスバレーもそのような盆地なのだが、スケールが違う。まわりの山は標高2000m級。そして盆地内は北米最低レベルの海抜−85mだ。真夏にはなんと55℃を超えるという。もちろん基本的に生物は生きていけない。そのあまりの暑さゆえに、夏のデスバレーは誰も入って行くことができず、不気味な静寂に包まれるという。
デスバレー内にはあちこちに車の冷却水補給用タンクが設置されていた。夏にデスバレー内に入ってくる車が次々とオーバーヒートを起こすためだ。このタンクが人々の生命線となる。そこまでしてデスバレーに入って行くというところがアメリカ人らしいというか・・。
デスバレーにはかつて塩水湖があったらしい。大昔は海面下だったことを考えると、地面が隆起した際に谷の中に取り残された海水が作り出した湖かもしれない。しかしその湖もデスバレーのあまりの暑さによって干上がり(ほんのちょっとだけの水が現在も池のようになって残ってはいるが)、地面には塩の結晶が形成する広大な塩原が残った。右上の写真の白いのは雪ではなく、全て塩の結晶だ。
持っていた飲料水のペットボトルのフタに水をつぎ、塩の結晶を溶かしてなめてみた。・・・やっぱりしょっぱかった(^^;
左の写真は「悪魔のゴルフ場」という名前がついている場所。ゴツゴツした岩石があたり一面に広がり、ところどころに塩の結晶が見える。「悪魔でないとこんなところではゴルフなんてできやしない」という意味のネーミングらしい。
岩石は富士山頂上付近で見られる溶岩石にも似たような感じがするが、表面のゴツゴツは非常に鋭い。「転ぶと鋭い岩の表面で怪我するから、気をつけて」という注意書きがあるくらいだ。
このようにデスバレーは盆地という地形が生み出す特異な気候により形成された世界が広がるのだが、もう1つ、盆地を囲む山も非常に個性的だ。これはかつての火山活動が関係しているらしい。デスバレー北部にはこの火山活動が作り出したクレーターがあるのだが、これがなかなかの迫力!

なんとこのクレーターは、かつて塩水がデスバレー内に残ってる時に、地下から吹き出してきたマグマにより水が急激に沸騰を起こす水蒸気爆発が発生したことによってできたクレーターなんだそうな。
水蒸気爆発というのは、水を入れた試験管を熱すると急激に沸騰が起こって水が飛び出してくる現象の規模を大きくしたものだと考えると良い。あのチェルノブイリ原発の事故も、原子炉内で起きた水蒸気爆発で建物が吹っ飛んだものだ。
それにしても、こんなとんでもなくでかいクレーターを作ってしまうのだから、かなり大規模な爆発だったのだろう。今は火山の火口もふさがっており、クレーターの底まで降りて行くことができる。
さて、こうした火山活動があったということは、デスバレーの地下では活発なマグマの流れがあったということだ。このマグマの流れは、鉱物の層を作った。重い金属は下に、軽い金属は上に集まり、火山活動が終わってマグマが冷えて固まると、そこにはキレイに鉱物が種類別に重なる地層が残った。
その地層は地面の隆起によって複雑に入り組み、そして風雨によって削られた。左の写真はその自然の営みが作り出した不思議な風景。名づけて「アーティストのパレット」。山肌の表面の色に注目して欲しい。いろんな色が見えるだろう。
これらの色は、いずれも鉱物の色だ。
赤、ピンク、黄色は鉄の塩化物、緑は雲母、紫はマンガンだ。こういった鉱物が見せる様々な色が、このような「パレット」のような風景を作り出している。
この「アーティスト・パレット」を見てもわかるように、デスバレー一体の山は良質の鉱山らしい。かつてデスバレーには大きな鉱山採掘会社があったそうで、その会社の社長の名前は「ザブリスキー・ポイント」というビュー・ポイント(景色のよい場所)の名前として残っている。下の写真はそのザブリスキー・ポイントで撮ったものだ。この会社とは違うのだろうが、今もデスバレー付近の山には鉱物の採掘場のようなものがあった。

さすがにザブリスキー・ポイントまで来ると、風があった。もちろんデスバレー内部では全く風を感じることはなかった。この空気の流れの遮断が、デスバレー内を灼熱地獄にしてるのだろう。今日はもう10月の下旬だというのに、デスバレーの中では30℃を超える暑さだった。
聞いていたとおり、デスバレーには他では見ることのできない珍しい景色が広がっていた。これは1回は見ておくべきだと思う。
これから気温が下がって行くので、デスバレーは観光シーズンを迎える。真冬がシーズンのピークという国立公園なんて他にあるんだろうか・・・(普通は冬季は積雪のため閉鎖する)。強烈な個性的な公園といえる。