
ブライズキャニオン(Bryce Canyon)国立公園は、シーダーブレイクスから1時間ほど行ったところにある。数え切れない数の尖塔状の岩石が立ち並ぶ風景の壮観さは、シーダブレイクスを遥かに上回る。園内は南北に長く、端までは車でも30分以上かかる。
風雨により削り出されたものとはいえ、この風景の異様さはどうだ。どうやったらこういう風景ができるのか・・。グランドキャニオン以上に驚かされる風景だと思った。

ブライズキャニオンは、谷底へ下りていけるトレイル(ハイキングコース)がたくさんある。今回の旅行はちゃんとしたハイキングもできるスニーカーを履いてきたので、今日は1日かけてハイキングだ。
まずは夜が明けたばかりのブライズキャニオンを見ようと、初心者向けのトレイル「クイーンズガーデン」を朝イチで歩く。もともと赤っぽい色をした岩石に朝焼けの光があたって美しい。
まだ光があたらない部分もほのかな色づきを見せ、その対象が絵になっていた。
それにしても、ここは昼間は半袖でないと我慢できないほどに暑いのに、明け方は長袖シャツにセーターを着ていても寒いくらいに気温が低い。この寒暖の差、そして保水性に乏しい土壌は、植物にとって厳しい環境だろう。

一旦宿に戻って朝食を取り、今度は中級者以上向けのトレイル「ピーカブー」を歩くために谷底の一番深いところへ下りる。
下りて行くと、一本一本の尖塔の巨大さがわかってくる。本当に大きい!表面はもろく、人間の手ででもちょっと力を入れれば削れそうだ(もちろん固い部分も多いけど)。
谷底にはいくつかの「干上がった川」と思われるものがあった。ここは冬になると雪が積もるので、その雪解け水によってできる川だろう。この川が、ブライズキャニオンを削り出す大きな役割を果たしたのだ。
谷底まで下りて行くトレイルは初心者向けの「ヤホビ」というトレイルなので、子供からお年寄りまで、たくさんの人が歩いていた。装備もハイキング用のちゃんとした装備をした人もいれば、手ぶらでちょっと下りてみたって感じの軽装の人もいる。手軽にこういった自然の姿に触れることができるというのは羨ましいと思った。
ようやく谷底に到着。ここから始まる「ピーカブー」トレイルは、全長が3マイル(約5km)もある健脚向けのトレイルだ。
ここのところすっかり運動不足になってるので、ちょうどいいだろうと思っていざ挑戦!

上から見るとわからないが、少ないながらも存在する川の水が集まってくる谷底は、緑が多かった。基本的に乾燥した気候なので、背の低い植物か針葉樹が中心で、すっかり高くなった太陽の光に照り付けられたオレンジ色の岩石と草木の緑、そして真っ青な空の3色が鮮やかだった。
正直言ってこの「ピーカブー」トレイルはきつかった・・。アップダウンがきつく、しかも太陽の光が容赦なく上から照り付けるので、体力の消耗が思ったより激しかった。
「まぁ1人なんだし、適当に休み休み行けばいいか」
日陰を見つけては、腰を下ろして水分を補給しながら進んで行った。なにしろまわりはこれまで見たこともないような楽しい光景だ。ゆっくり進んで行ってもなにも困ることはない。

頑張って歩いたおかげで、この「ピーカブー」トレイルでは、他のトレイルでは見ることができないような光景をいっぱい見ることができた。上の展望台を下から見上げると、本当に高いところから見てるんだなぁ、と思うと同時に、あそこからの風景と、ここからの風景じゃ全然違うよな、とちょっと満足したりもした。
まぁ、これからあそこまで上って行かなくちゃいけないんだなぁ、なんて思って気が遠くもなったけど・・・。
尖塔岩石は、あるところでは彫刻のような形をしており、またあるところでは宮殿のような集合体を形成していた。いろんな表情を見ることができたのも、苦労してトレイルを歩いたおかげだ。
最後はたっぷり持ってきたはずの水も底をつき、200mほど歩いては一休み、って感じですっかり疲れ果てたが、とても楽しいハイキングだった。
無事谷底から上り終え、出発地点に戻った僕は、すっかり疲れて「もう寝たい〜」となった。一旦宿に戻って休憩し、夕方にはまた別のトレイルへ行くことにした(我ながら、なかなか元気)。

最後のトレイルは、ブライズキャニオンの入口ゲートから最も遠い「レインボーポイント」というビューポイントを出発地点とするトレイルだ。これはここから遥かに30kmくらい離れた「ピーカブー」へつながる長大なトレイル。とてもそんなのを踏破できるわけはないので、15分ほど行ったら引き返してこようと思って出発!
さすがにこのトレイルを歩いてる人は1人もいなかった。もう日も傾いてるのでちょっと心細かったが、まぁ15分で引き返すんだし、と思って山道をテクテク歩いて行くこと15分、急に視界が広がったかと思うと、そこには素晴らしい風景が広がっていた!
そこはレインボーポイント等のビューポイントの対岸だった。ここからは遥か向こうまで続くブライズキャニオンの絶壁を見渡すことができる360°の大パノラマが広がっていたのだ。
これはどのガイドブックを見ても載ってない。さすがにこのトレイルを歩く人なんていないのだろう。ラッキーだった(^^)

僕はそこにあった木の根に腰掛け、水分を補給してゆっくりとここからの風景を楽しんだ。「お〜い!」と叫んでみると、僕の声が目の前の岩石とブライズキャニオンの絶壁に反射して「お〜いお〜いお〜い・・」とやまびこになって返ってきた。
嬉しくなった僕は、「がく〜!」と遠く離れた日本にいる僕の子どもの名前を呼んでみたりして、やまびこを楽しみながら、夕暮れのブライズキャニオンを楽しんだ。
さすがに今日1日を終えると体は疲れきっていた。しかし、これは「心地よい疲れ」というやつだ。宿では風呂でたっぷり足をマッサージして、1日頑張った足をいたわった。