
ザイオン(Zion)国立公園は、ブライズキャニオンからは2時間半、グランドキャニオン・ノースリムからは3時間ほど車で行ったところにある。比較的近くにあるにも関わらず、ここはブライズキャニオンともグランドキャニオンとも違う風景をしていた。すなわち、固い岩山に囲まれた公園なのだ。

かつて海底だったところが隆起し、それを川が削って行くという点では共通しているのだが、グランドキャニオンはコロラド川という大河が大きく削り出したもの、ブライズキャニオンはほとんど川がないのであまり削られずに表層が残っているもの、そしてザイオンはバージン川というさほど大きくない川が長い年月をかけて削り出したものだという。つまり、ザイオンはブライズキャニオンとグランドキャニオンの中間的な存在なわけだ。
それにしてもこの岩山の表面の模様は何なのか?右の写真の山の場合、斜めの線は海底に地層が堆積していった時に水の流れによってできた線及び地上で風によって削られた線で、縦の線は、岩の中にしみ込んだ水が寒暖の差で膨張・収縮をすることによってできた線なんだそうな。
固い岩の上には水はけのよい柔らかい土壌も堆積している。その上に降り注いだ雨はその柔らかい地層の中にしみ込んでいくものの、岩のところで止まる。そして岩の間からしみ出てくる。
左の写真は、こうして岩の壁からしみ出てきた水が滝のように落ちてくるところだ。この水ははるか昔に地層にしみ込んで行った水なんだろうなぁ・・なんて思うと不思議な感じ・・。
水のしずくが強い陽射しにキラキラ光るのがキレイで、しばらくそこで水が流れ落ちてくるのを眺めていた。
さて。実は今回の旅行の最大の目的は、ザイオン最大の目玉の一つである「ナローズ(Narrows)」に挑戦することだった。
「ナローズ」とは、ザイオンに数あるトレイル(ハイキングコース)の中で最も有名かつユニークなトレイルで、ザイオンでしか楽しめないトレイルでもある。何が特別なのかというと、ちゃんとした道があるのは最初の1.5kmだけで、後はバージン川の中をじゃぶじゃぶと歩いて進まなければいけないという点だ。
右の写真はその「ちゃんと道がある」最後の場所。ここまでは舗装された道がある。ここからは、前方の川の中を歩いてバージン川をさかのぼって行かなくてはいけない(ツアーで来た人はここから先は行けない)。
もともとこのナローズに挑戦するつもりでいた僕は、水着にTシャツ、そしてスニーカーという姿に着替え、ここに用意されていた木の杖を持っていざ出発!もちろんスニーカーを履いたままで水の中に入って行く。
幸い、秋に差しかかったバージン川の水はさほど冷たくなかった。「よしよし♪」と快調にバージン川をじゃぶじゃぶと歩き始めた。これがなかなか楽しい!
しばらく歩くと、前方であたふたと歩いているおじさんに追い付いた。見ると裸足で杖も持っていない。これではさすがに大変そうだった。おじさんは僕の格好を見て「You are right(君は正しいよ)」とため息をついて、「お先にどうぞ」という仕草をして僕を先に行かせてくれた(^^)
最初は広かった川幅は、上流に向かうにしたがってだんだんと狭くなってきた。ザイオンの岩山を削った川だけに、川の両岸はほぼ垂直に切り立った岩の崖だ。この岩の壁が、左右から迫ってくる。
このあたりまでくると、川岸というものがなくなってくる。つまり鉄砲水が来た時の逃げ場がなくなってくるのだ。でも、公園に入った時にビジターセンターで今日の天気予報やナローズの水位予想を聞いて、危険性は十分低いことを確認済みだから大丈夫。ときどき空を見上げて雲行きがおかしくないことを確認することも忘れなかった(^^)
川幅が狭くなると、川は深くなる。たいていのところはせいぜい足首までしか水位はなかったが、ところどころは膝まで水につかりながら進まなければいけないところもあった。杖で深さを確かめながらゆっくり進む。
歩きはじめて1時間半、バージン川支流との合流点に到着。更に本流側を進むことにする。そろそろお昼だ。僕は時々岩に腰掛けて水分を補給するとともに、ナップサックに入れてきたポッキーをかじった。
更に1時間ほど歩くと、さすがに川幅は数mにまで狭くなった。岩の裂け目を歩いてるような感じで日光もあまり届かない。上方を見上げると、両岸の岩壁の間からわずかに青空が見えるだけになっていた。
「そろそろ引き返すかな」
と思ったところで川幅が急に広くなり、大きな岩石がいくつか前方に見えてきた。僕と同じようにナローズを歩いてきた人達が、その岩石の上でお弁当を食べたり、寝そべっていたりしている。
出発してから2時間半。ここで一服して、きっと2度と見ることのない風景をしっかり目に焼き付けて、僕は引き返すことにした。
帰りは一度来たところを歩くだけなので、比較的楽に歩けた。ただし、さすがに疲労がたまってきてたので、歩くスピードはちょっと遅かったかも・・。
出発地点に近づくと、だんだん人の数が増えてきた。
みんな自分のペースで自分の行きたいところまで上って行くという感じだった。ちっちゃな子供連れもちらほら。
中にはゴールデンレトリバーのワンちゃんと一緒に川を上ってくる人もいて、楽しそうだった(^^) ワンちゃんがまた嬉しそうに川に飛び込んでいくんだ(^^)
出発地点に戻ったのは、出発から5時間経った頃だった。
人がいっぱいいて、すでに用意されていた木の杖が全てなくなっていたくらい。
僕が川から上がってくると、これから出発しようとしてた若いにーちゃんが「その杖をくれないか」と言うので、こころよくあげた。「良い杖だった?」と聞かれたので「もちろん」と答えた。本当にこの杖のおかげで楽しい川上りができた。ひと仕事終えたばかりの杖は、またバージン川へと戻っていったのだった。
さすがに疲れたが、とても良い思い出ができた。きっとこの経験は忘れないだろう。
靴を脱ぐと、靴の中に入ってきた小石のせいで、左足の裏の皮がちょっとむけてしまってた。おかげで僕は、しばらくはびっこをひいて歩く羽目になってしまった・・(^^;
こうして今回の旅行は終わった。僕はザイオンからラスベガス経由でサンノゼへ無事帰り着いた。