良く晴れた日・・・外では小さな鳥たちが、空を自由に飛び回っている。

 先ほどから開けっぱなしの窓からは、快い緑の匂いを含んだ風が流れ込んでくる。
 
窓から吹き込んでくる風は、まるで意志を持ったかのように窓から窓へと吹き抜け、私の頬を撫でていく。
 
あの者はまだ来ないのか・・・・・・・・。

 
 ほんの数日前・・・金の髪の女王候補から、日の曜日にどこかへ出かけないか?と約束の手紙が私の元へ届いたのだった。
 
 それに私は、良いだろう、と短く返事を書いておくった・・・・が、肝心の本人がまだ来ていない。
 一体、どうしたものか・・・・と小さくつぶやき、空を仰いでいると・・・・

「コンコン」
と遠慮がちに叩かれたノックの音がした。
 
 来たか・・・。
 
 「ドアは開いている・・・入れ」
と、短く答えてドアの方に顔を向けるが、入ってくる様子がない。
 
 「どうした・・・ドアは開いているぞ」
呼びかけるが、返事がない・・・返事が無いどころかノックの音が鳴りやまないでいる。
 
 「コンコンコンコン・・・・」
流石におかしいと思い、眉間にしわを寄せながらドアの方に静かに歩み寄り、分厚く黒いドアを開けた。
 
 だが瞳に飛び込んできたのは女王候補の姿ではなく、丹念に磨かれた白い天井だった。
・・・・・・夢、か・・。
  
 悪夢とも、言えない微妙な夢だった・・・今すぐにでも、天使が逃げてしまいそうで・・・少し心細くなり、存在を確かめようと手探りで、愛しい天使のぬくもりを探すが・・もうとっくに起きてしまったのか、少しのぬくもりは残っているものの、姿はなかった。
 
 少し前まで、行われていた女王試験で女王の座を勝ち取った(?)のは、もう1人女王候補のロザリアだった。
 
 そしてこの天使は、女王ロザリアを支える補佐官に、また、私の愛すべき 妻となった。
 
 朝食の準備でもしているのだろうか・・・キッチンの奥からは包丁の音が響いている。
 
 支度が終わったのか、私を起こす声がする。
 
 「クラヴィス様ぁー? ご飯が出来ましたよ! 起きて下さーい!」

 このまま悪戯をしてみるのも良いかと思ったが、ココは素直に従うことにした。

 天使は、使った用具を片づけるのに忙しいのか、懸命になって用具をしまい込んでいた。 
 
 足音を立てずに忍び寄る・・・・口元を片端だけ上げ、笑いをかみ殺して。
 天使の真後ろにたち、後ろからそっと抱きしめた。

  「ここにいたのか・・・私の天使・・姿が見えないので、どこかへ飛んで逃げてしまったのかと心配したのだぞ・・」
 
 「きゃっ! びっくりしたぁ・・・お、おはようございます・・クラヴィス様、起きてらしたんですね・・・それに、私はどこにも行きませんよ・・・・だって、ここにはクラヴィス様というステキな旦那さんがいるんですもの」
 
 ウェーブのかかった金の髪をふわふわと弾ませながら、エメラルドの瞳が上目遣いに私を見つめている。 
 
 「フッ・・かわいいことを言ってくれる・・・だが今日は日の曜日だぞ・・? もう少しゆっくりしていても良いのではないか・・・?」
 
 まだ幼さが残る、天使の微笑みは光をめいっぱいに浴びるチューリップ、そのものだった。
 
 「だって・・・・おなかとかすいちゃうでしょ?アンジェそういうの、すっごくつらいから・・・クラヴィス様にそういう思いして欲しくないし・・・だから・・」

 少し目を潤ませて私の首に腕を巻き付け、ここにいる私の存在を確かめるようにまじまじと顔を見つめた。

 「そうか・・・お前は優しいのだな・・・・」
 
 今すぐこの天使に口づけたい衝動に襲われるが、後の楽しみとして残しておくのも良いだろうと思い、やめた。
 
 「クラヴィス様? どうなさったんですか?・・・・ああ! また何か企んでるでしょう?」

 ぷう・・と頬を膨らませ、私の紫水晶の瞳をのぞき込んでくる。 
 
 「・・さて、どうだかな・・?・・フッ・・この天使は、私が何を企んでいると想像しているのか・・・」
 それとも、なにか期待をしているのか?と、意地悪く聞いてみる。
  
 「そんなんじゃありませんってば〜、意地悪なんだから・・・・・・この口元が何よりの証拠です」
 細く長い・・白い指が、私の口元を、軽くつついた。
 
 「フッ・・本当はどうなのだろうな・・・・」
 後でのお楽しみとして我慢していたのだが、天使に口元をつつかれてはたまらない・・・口づけたいという欲求に負け、その愛しい唇に口づけを落とす。

 短いが、十分に甘い口づけ・・・・。
  「・・・・機嫌を直してくれたか?・・・口づけがあまりに長いと、私の理性が持たぬからな・・・それもお前が愛らしすぎるせいだ・・・」

天使は、顔を紅く染めながら恥ずかしそうに言う。

「もう・・・やっぱり、意地悪だ〜・・・」
 
二人顔を見合わせ笑い、朝食の並ぶ席へ。
 
 「さて・・・今日は天気がいいようだからな・・・・どこかへ出かけるか・・?」
 
それを聞いて天使は、輝かんばかりの笑顔を浮かべて、喜んでいる。
 
 「うふふ。嬉しいな・・・久しぶりのデートだもの。ね!どこに行きましょうか?」

 元気な天使の声が響く、森の奥の闇の私邸。
 二人の甘い一日は、まだ始まったばかり・・・・・ 

 

END


鯖虎:

金髪アンジェちゃんとクラ様の甘い甘い朝の光景です。

クラ様って低血圧そうで、どんな朝の光景が繰り広げられているのか恐ろしい感じがしましたが(酷い;爆)

幸せな朝を迎えていらっしゃって、ほっとしました。

紅月さん、本当にありがとうございました!!!