朝
アンジェリークが目覚めると、彼女の夫はまだ眠っていた。
いつも先に起きては、アンジェリークに悪戯するオスカーにしては、珍しいことだっ
た。
滅多に見られない夫の寝顔を、アンジェリークはジッと見つめた。
オスカー様は、私が女王候補だったころから、とてもかっこよかった。
燃えさかる炎のような髪。
自信にきらめくアイスブルーの瞳。
くっと鋭角に整った眉。
引き締まった口元。
どうすれば自分が一番映えるか知っている、水際だった仕草。
そのあまりの隙のなさに、少しだけ寂しさを覚えた・・・。
けど今のオスカー様と来たら・・・
真っ赤な髪はぐしゃぐしゃに乱れて、シーツに散っている。
昨日はよく乾かさないままに寝ちゃったから、きっと寝癖がついている。
目元はゆるみ、しかも眉毛が下がっててとても幼い。
おまけに口は軽く開き、すぴょすぴょと寝息を立てている。
無防備な顔が嬉しい。
ほっぺたをつつくと、むずむずする。
髪を手ぐしで整えると、いやいやをするように首をふってさらに乱れてしまった。
思わず微笑んでしまう。
「可愛い・・・」
「誰が可愛いって?」
ビックリして寝顔を凝視する。
・・・寝てる・・・よね・・・?
「・・・オスカー様・・・起きていらっしゃるんですか?」
「寝てるよ」
「!!」
世界が回った次の瞬間、オスカー様の顔がま近くにあった。
いたずらっ子のように目をきらきらさせて、のぞき込んでくる。
押し倒されたことを抗議する間もなく、そのままぎゅっと抱きしめられた。
「おはよう、奥さん。今日の君はずいぶんイタズラだな?」
「いっ・・いたずらなのはオスカー様でしょう〜?」
「ほう?・・・心外だな。俺の髪やら顔やらをいじくり回してくれたのは誰だったか
な?」
「・・・・・・」
「それと、『オスカー様』じゃなくて『オスカー』だろ?
いつになったら慣れてくれるんだい、俺の奥さんは。ん?」
悪いお嬢ちゃんにはおしおきだな・・・とささやくと、キスの雨が降ってきた。
髪に、額に、鼻に、頬に、・・・唇に。
抵抗する手を押しとどめて、ついばむようなキスをされる。
顔が赤くなっていくのが自覚できて、ますます恥ずかしい。
「・・そんなに優しくキスされたら・・抵抗できなくなっちゃうじゃないですか〜
!」
「・・・・・・・・・」
理性も吹っ飛ぶ新妻の愛らしさに、オスカーは目眩を覚えた。
全く!『可愛い』のは君だろう!!
・・・このままいけるとこまで、いってしまおうか?
ふと表情を変えると、改めてアンジェーリークの顔をのぞき込む。
ありったけの甘さを込めて、耳元でささやく。
「・・・アンジェリーク」
「プッ」
・・・「プッ」・・・?
「プククク・・・」
・・・・・・・・・?
なぜアンジェリークは笑っているのだろう?
しかもただの笑いじゃない。
爆笑している・・・。
オスカーは体を起こすと、諦め半分で苦笑した。
「なぁ、・・お嬢ちゃん?何がそんなにおかしいんだい?」
「すいません、おかしくはないんですけど・・でも・・」
「・・・?」
「だってオスカー様、そんな頭で甘い声出すんだもん・・・」
オスカーは慌てて頭に手をやった。
・・・確かにこれはひどい。
触っただけでわかるのだから、鏡なんて見たくもない。
窓に映ったランディのような自分と目が合って、オスカーはため息をついた。
「オスカー様」
「・・・ん?」
「とっっても可愛いですよv」
脱力したオスカーに、容赦なく朝の光が降り注いだ。
END
鯖虎:
オスカー様の朝は濃厚で、このHPでは公開できないほどなのかと思ったら。
さわやかに、でもオスカー様らしさは失われていない・・・
見事小鈴さんはそんな朝を仕上げてくださいました。
ホントに公開が遅れて申し訳ないです!!!&ありがとうございます!!!
独り占めはもったいなさ過ぎる作品です・・・。