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●食品安全講習会の影でFoods at a crisis and a booklet |
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冬に逆戻りしたような寒い2月の末のある日。山中児童センターの調理室は、山中温泉在住の飲食業者とその家族従業員たちの熱気で包まれていた。相次ぐ食品不祥事に危機感を持ち、自ら食品に関する安全啓発事業を開催したのである。発案者のFK氏は、この事業の実質的なリーダーである。石川県庁が推進する「県政出前講座」とタイアップし、石川県消費生活支援センターから講師のM博士を招いた。膨大な食品添加物から合成着色料を分離し、添加物に関する知識を深める。試料から分離されたのは、鮮やかというか毒々しい色素である。試料となった「食品」は数年前に調理・製造されたにも関わらず、腐敗していない。奇妙というか、背筋が寒くなる現象である。
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2月28日、山中児童センターの調理室で行われた「食品衛生講座」のもよう。業界きってのクリエイターFK氏のボランティア精神と石川県が推進する「県政出前講座」とタイアップして実現した企画だ。
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左が「くらしに役立つ食品表示ハンドブック」初版本。初版では各都道府県の自治体が発行者になっている。初版本は無償配布だが、第2版は有償になった。「県政出前講座」のテキストとして指定されたのは第2版。ところが、流通状況がきわめて不透明である。
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そして、今から思えば奇妙な迷宮への旅のすべてが、ここから始まったのである。
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「くらしに役立つ食品表示ハンドブック第2版」の奥付と裏表紙。石川県での問合せ先は農林水産部消費流通課となっているが、窓口での対応から判断すると「問合せは受けるが、注文はできない」という解釈になる。また、「非売品」と断っておきながら、ISBNコードが付され、本体価格305円の印字が見える。初版では逆にISBNコードはなく「非売品」と断られているが、ネットショップでは320円(税込)で販売されていた。
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書籍の流通業者といえば、最大手のトーハンが思いつく。しかし、系列の E-hon はどうも問屋意識が強い、というのが知人の感想だ。楽天の場合、在庫がある場合は即納に近く、数がまとまって取寄せになっても、納品は実質1週間以内だという。しかも、商品の追跡状況も補足しやすい。私は楽天に「くらしに役立つ食品表示ハンドブック 第2版」を発注した。
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出荷状況に関する問合せでの返信メール。お詫びの文面とともに、出荷が把握できないことが明記されている。
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朝日出版工業からは、「弊社は印刷業務を請負っているだけであり、在庫等流通状況に関し、なんら関知しない」との文面とともに別の連絡先が記されていた。群馬県食品安全情報センター内の編集部にいたっては、何の返答もない有様である。
講習会の前日に、これまでの経緯をFK氏に話すとさすがに呆れ顔になった。 「じゃあ、出版社が言う連絡先に問い合わせますか?」 朝日出版のメールに記載されていた問合せ先は、東京官書普及(株)とあり、電話番号と担当者名が併記されている。 「バカバカしい。本を注文したら『途中経過はてんで分らないから、問屋に直接聞け』そんな本屋がどこにある? 今さらバタバタしても間に合うはずもないし、ほっとこう」
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無償配布のはずが何故か320円の価格で売買されている。自治体が発行する刊行物としては異例の発行部数というが、この売上代金は一体どこへ流れていくのだろう。 相手は財務省系列。本体も、おまけに消費税までかすめとるというのだろうか?
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瓶棒氏は言う。本書第2版は320円で売買されている。このクオリティとしては格安だが、それも当然。編集や企画制作に公費が注入されているからだ。それより、奇妙なのは初版本である。非売品と銘打ってあるよね。でも、ちょっとネットで書店を検索してごらん。
言われたとおり私はあるオンライン書店にアクセスし、検索してみた。「あっ」と私は声を上げた。奇妙なことに、絶版になっている初版「くらしに役立つ 食品表示ハンドブック」が税込み320円の価格に設定されていたのだ。
書籍は言うまでも無く再販売価格維持制度適用品である。古本でない限り、書籍に2重価格が存在しないのは常識だ。まして無料の非売品が、末端では320円の小売価格として設定されるのは摩訶不思議な現象としかいいようがない。楽天もそれ以降次々検索してみたが、全部有償で売買されている。それにしても、この320円x売上部数は一体どこへ行ったのだろう?
瓶棒氏は続けた。分っただろう。つまり、この本はアウトローなのだ。アウトローが闇ではなくて堂々と流通する。ある意味、オマ○コモロ出しの裏本より凄いよね。それなのに誰も文句を言えない。つまり、凄い権力、要は政府系の流通に乗っかってるからだ。この東京ナントカというのは、間違いなく公益法人だ。おそらく印刷局のOBあたりの天下り先に違いない。大蔵省の人間だからカネに対する嗅覚はハンパじゃない。初版、その前に群馬県が発行したプロトタイプが金を生むことを早速嗅ぎつけた。だって、公式教材と銘打ち、数十冊、数百冊単位で捌けるんだ。これは旨みがある。「こんなオイシイ話を見逃す手はない。俺達に寄こせ」というわけで、2版ではこの東京ナントカが元締めの座を分捕ってしまったのだろう。財務省と農水省との力の差かな。
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2007年10月、会計検査院によって独立行政法人国立印刷局=朝陽会のずさんな経営体質が指摘された。朝陽会は旧大蔵省印刷局OBの天下り先だ。「くらしに役立つ食品表示ハンドブック 第2版」の流通を一手に管理する東京官書普及(株)の代表取締役は、その朝陽会の有力理事メンバーである。
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考えをめぐらしているうちに、団体中央会から電話があった。「教材に使った資料は『非売品』ってなってますよ。困ります。話が違うじゃないか。これじゃ資料費は払えません」 何度もクレームをつけてきた男だ。今回ばかりは真剣に腹が立った。バカじゃないのかてめえ。言う相手が違うだろう。そこから東向きの窓を見ろ。県庁が見えるだろう。そこに向って吼えてみろ。その先は東京だ。いったい、どうなってんですか? と財務省に向って吼えてみろ・・ という気持ちだった。
と、こんなことを言っても始まらない。私は再度石川県庁の農林水産部に電話をした。
「長島さんはいますか?」
「あいにく席を外しています。後でおかけ直しくださいますか」
「いえ。それでは誰でもいいから『くらしに役立つ 食品表・・』の件で分る人に変わってください」
まもなく、Fと名乗る女性が電話口に出た。
「何でしょう?」
「標題の本の在庫はどうなっていますか?」
案の定、相手は即答で「こちらでは分りません。東京官書普及というところに聞いてください。電話番号は・・」
私はさえぎって
「いえ、あなたの方で聞いてください」
「は?」
「今の話では書店で『少年ジャンプはありますか』と聞いたら『ウチは小売だから知らない。そんなのトーハンに聞いてくれ』と言われるようなものです。返事待ってますから、あなたの方で聞いてください」
「はい・・・」
「出回るんじゃなかろうか・・」と私は最後の語尾を小さく繰り返した。
ふとテレビの方に目をやると、農薬入冷凍ギョウザをめぐり、日本と中国の諍いをメディアが煽るように報道している。
「お前が悪い。どうしてくれる。謝れ」
「いや、おれたちは悪くない。悪いのはお前の方だ」
被害者のことなど、もうそっちのけの泥仕合が演じられていた。世界全体が飽食の時代に向っている。それは権益に対しても同じことだ。その一方でみんなが職務と責任だけは他人になすりつけようとしている。その結果が今の食品危機を招いたのではないか。ふと、そんな気がした。
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