第三話 キスの練習
| 焼けたパンの香ばしいにおいと、バターのきいた卵のにおいが鼻孔をくすぐる。 「まさにブレッグファースト」といった感じのスクランブルエッグを載せたトーストをかじりながら、慎也は眩しそうに窓の外に視線を移した。 暖かな日差しを受けて生き生きと輝く庭の花壇が、朝の――とりわけ休日の朝の素晴らしさを訴えている。 そう、今日は日曜。 面倒な学校も、退屈な授業も、詰まらない付き合いもない。一日中好きなことをしていられる。そう考えると、母の作った洋風の朝食と完璧なコーヒーがよりいっそう美味しく感じられた。 (好きなことをしていられる。) 慎也は心の中で繰り返す。今日は彼にとって一番好きなことが出来る日なのだ。 椅子を引く音で隣を見ると、照れくさそうな表情をした優子がこちらを見ている。視線を合わせると、ニコニコと可愛らしく笑った。 「晴れてるね、今日。」 その声にはどうしようもない嬉しさと、ちょっとしたイタズラっぽい響きが篭もっていた。そんな浮き浮きとした優子を見ていると、先ほどから落ち着かない調子だった慎也はなおのこと気分を弾ませてしまう。 「食べたら、すぐ行こうか?」 こちらもやはり弾んだ調子だ。それを察知すると、優子は恥ずかしそうに「はむっ」とトーストをかじり、もぐもぐしてから「うん。」と小さく呟いた。 今日は、約束の映画の日である。 「お兄ちゃん……。できたよ。」 控えめにドアがノックされる。 「わ……。」 ドアを開けると少し顔を赤くした優子が、昨日の可愛らしい服を着て立っていた。昨日一度見たとはいえ、あまりのかわいらしさに慎也は感嘆の声を上げる。 「い、行こうか。」 慎也がいささかぎこちなく階段の方へ進むと、てててと後ろから追ってきた優子が左手を握ってきた。 ちらっと優子の顔を見ると、優子は驚いて手を離してしまう。 「あっ……。」 優子は申し訳なさそうにもじもじしている。 「いいよ。」 慎也が手を差し出すと、優子は顔中で笑顔を作って、その手を握った。 「いってきまーす!」 「いってきます。」 二人が元気よく玄関を出ようとすると、後ろからどたどたと足音が聞こえる。 「まーてー!」 愛美である。見るとまだパジャマ姿だ。 「きたねえぞおにいもウシ子もー!遊びに行くならあたしも連れてけよう!」 「まな。ごめんね。」 優子が心底申し訳なさそうに謝る。慎也を見上げるその表情には、何だか大きな不安で押しつぶされそうな心許なさがあった。 「まな、ごめんな。映画のチケット、二人分しかないんだ。じゃ!」 ちょっと強引に優子の手を引くと、愛美の罵倒をそのままに、慎也は玄関を出てしまった。 急いでドアを閉めた後に、二人は顔を見合わせると声を出して笑った。 「おにいちゃん、良かったの?」 ちょっと心配そうな、でも嬉しくて堪らぬといった面持ちで、優子は笑いながら聞く。 「はは、いいよ。今日は、二人で遊びたいんだ。」 それを聞くと優子は慎也の左手をぎゅっと握って胸に抱きしめ、「あたしも」と本当に嬉しそうに笑った。 手をつなぎながら二人は、バス停に向かう。 映画館のある町に行くには、20分ほどバスに揺られなければいけない。 実はこの町にもさほど大きな遊び場はないのだが、映画やゲーム、ショッピングくらいならば事足りた。もし町に出てこないで彼らの町で遊ぶのだとしたら、大きな公園に行くか、本屋やレンタルビデオ屋を散策するくらいのものだ。食事にしたって気の利いたレストランなどはなく、近所の飯屋で穴場を探すことくらいが関の山だった。 道行く人がちらちらとこちらを眺めるのを見て、優子が少し恥ずかしそうに言った。 「ねえ、お兄ちゃん。」 「ん?」 「あたし達さ……。」 「うん。」 なにやら言いにくそうにもじもじして、やっと優子は口を切る。 「こ、恋人に見えちゃうかな。」 手がぎゅっと握られる。 緊張しているのだろう。 優子はまともに慎也の顔を見られないでいる。 だが、赤くなった顔を伏せながら、耳だけはこちらに集中しているのが分かる。 「ああ、そう見えるかな。」 即座に慎也は返す。 「えっ!」 ぱっと目を輝かせて、優子がこちらを見る。 「優子みたいなかわいい彼女なら、お兄ちゃんも鼻が高いな。」 「や、やだ……。」 嬉しくて堪らぬといった風に、優子はつないだ手をぶんぶん振り回した。 「やーん……おにいちゃん。だ、大好き……。」 ぽつりと呟いて、真っ赤になった優子は下を向いてしまった。 開演時間までそう間もないので、二人は飲み物だけ買ってすぐに館内に陣取った。 そう人口の多い町でもないのに人気はまあまああるようで、席はかなり埋まっていた。 一番後ろの席に座ると飲み物を肘掛けの先にはめ込み、スクリーンを見る。 まだ始まっては居ない。 なんとなく客たちを見回すと、彼らのように兄妹で来ているように見えるものも少数だがいた。彼らも手をつないでいるのをめざとく確認すると、慎也は少し苦笑をした。 映画が始まれば、その迫力と演出にのめり込まされ、周りを気にする余裕など無くなってきた。 やはり、面白いのである。 話題になるだけはある。 余りに自分たちと状況が似ているのが、また引き込まれる要因だった。 当てはめて考えてしまうのだ。 自分ならこう言う。自分ならこう行動する。自分なら、もっと幸せに出来る。 そう考えるようになってしまうともう負けだ。完全に物語の虜になってしまうのだ。繰り広げられるドラマが実在のものと区別が付かなくなり、感動は本物になり、体感したような気になる。 物語がクライマックスに近づくに連れ、彼らの胸の鼓動はどんどん高鳴っていった。 彼らにとってのヒロイン、ヒーローは隣にいるのだ。 クライマックスがきた。 スクリーンに、問題のキスシーンが映し出されようとしている。 優子が、無意識に手をぎゅっと握ってくる。 横目で見ると、潤んだ瞳でスクリーンの中の二人をじっと見守っている。 愛おしくて堪らなかった。 慎也は優子の方に向き直る。 優子もそれに気が付き、慎也の方を向く。 慎也が動く。 優子が「あ……」と呟き、瞳を閉じる。 スクリーンの二人と、彼らが口づけをしたのは同時だった。 「ん……。」 妹の柔らかい唇。 甘い声。 嫌がらない。 目を開けると、優子はまだ目を閉じている。 シャンプーの優しい香り。 汚れを知らない、いたいけな少女のような、妹。 ふと我に返って、慎也はあわてて唇を離す。 唇を離しても、まだしばらく優子は瞳を閉じていた。 まるで、まだ足りないと言っているかのように雪郎には感じられた。 (お兄ちゃん……お兄ちゃんの唇……キス……お兄ちゃんとキス……) 優子は幸せの絶頂にいた。 心臓はドキドキと早鐘のように高鳴って、苦しいくらいだった。 離れてしまった唇が少し残念だった。 (しちゃった……お兄ちゃんとキス、しちゃった……。いいのかな……兄妹でこんな事して、いいのかな……。でも、もうお兄ちゃんのことしか考えられない……) 映画が終わって劇場を出ても、二人は無言だった。 顔を真っ赤にした優子は一度も慎也の方を見なかったし、慎也は慎也で、はっきりと自覚してしまった特殊な感情にけりを付けようと必死だった。 優子は手をつなぐのをやめ、腕を組んできた。 どちらかというと、腕に抱きつくような感じだった。 ぴったりと寄り添った優子の、柔らかな胸の感触が、また慎也の心をかき乱した。 二人は無言で歩いてゆく。 慎也の頭にあるものは、後悔でも罪悪感でもなく、幸福感であった。 それも、今まで味わったことのない様な幸福感である。 優子と添い寝したときも、恥じらう彼女にお休みのキスをしたときも、慰めるために胸に抱いたときも、味わうことが出来なかった圧倒的な幸福感である。 愛おしい。 ぎゅうぎゅうと抱きついてくる、妹が愛おしい。 頬を染めて幸せそうに歩いている、彼女が愛おしい。 時々、思い出したように唇を潤す、優子が愛おしい。 もう一度。 衝動的な気持ちが胸に沸き上がる。 きっと嫌がらないだろうという確信じみた予感はある。 しかし、一度ならば間違いで許されても、二度もとなると言い訳が出来ない。 きっと、癖になってしまうだろう。そうなると、後戻りできない。 それが慎也の理性を支えている、唯一の考えだった。 不意に、優子のおなかが「ぐぅ」と鳴る。 「や、やだっ!」 顔を真っ赤にして、優子は腕を組んだまま胸に顔を埋めてくる。 「はは、どこか、入ろうか!」 道行く男の羨望のまなざしを向けているのを心地よく思いながら、優子の頭に手を置いて、慎也は明るく言った。 結局どこへ行くということもなく、二人は家に帰ってきた。 昼を少し過ぎたくらいの、かなり早い時間だ。 ファミリーレストランの中でも、帰りのバスの中でも、二人は終始無言だった。 「あー!裏切り者!!」 愛美が二人の帰宅を非難で迎えるも、すぐに二人のおかしな様子に気付く。 「ん?どうかしたの?二人とも黙りこくっちゃって。」 慎也の腕を掴む優子の力がぎゅう、と強くなる。 「あー、お前ら、もしかして!」 「ち、違うの!」 愛美が言い終わる前に優子は顔を真っ赤にして遮り、ぱたぱたと階段を駆け上って自室に篭もってしまった。 「あたしに内緒で美味しい物食べたのを隠してるのか、って言いたかったんだけど……なんだ?ウシ子のやつ。」 「あはは、まあ、今度一緒にまなも行こうな。」 「うん、許す。おみやげは?」 「ないよ。」 「えー!じゃあ許さん!かたをもめ。」 「……はいはい。」 走り去った優子に後ろ髪引かれながら、愛美に連れられて慎也はダイニングに向かった。 「あん……。おにい、上手じゃん。」 一通り肩もみを堪能した愛美が悦に浸りながら言う。 「どうも有り難う、まな。もういいだろ?」 愛美のすべすべした柔らかい肩を触るのは役得だと思いながらも、あまり喜んでやっているように思われるのもまずいのでこの辺で切り上げることにする。 「えー!だめ。今度はこしももめ。」 「こらこら。」 「あーあー、一人でおうちにいて寂しかったな〜!」 「わ、分かったよ。少しだけだぞ。」 「それに、こんなピチピチの美女の腰を揉めるなんて、滅多にないことだぜ。もっと感謝しても良いくらいだぞ。」 「じゃ、それを喜ぶ人にやって貰ったらどうだい?」 「あーん、うそうそ。おねがぁい、お兄ちゃん!」 ズバリ図星を指された慎也は、我ながらうまく切り返せたものだと感心した。 実際愛美の身体は中学生にしては成長しすぎるほど成長している。胸もかなり目立つほど大きいし、元々病気で痩せているのでウェストは締まっているのだ。 「よっ……と。あてて。ここ、痛いな。ねえ、ベッドに移動していい?」 「あ、ああ。良いけど……。」 『ベッド』という言葉に胸がドキッとする。 ダイニングルームはキッチンと繋がっているし、開けっ放しだ。 だが、寝室は違う。完全な個室なのだ。 「さあ……いいぜ。揉んで?おにいちゃん。」 聞きようによってはかなりイケナイ感じのセリフを、さらっと愛美が吐く。意識しているのか、そうでないのかちょっと分からないが、こんな単純な一言にも慎也はドキドキと反応してしまった。 「あ……。」 うつぶせになって無防備になった腰に触れると、愛美が声を上げる。 「こ、こら、愛美……。」 「あはは。興奮する?」 イタズラっぽく愛美は笑って、ニヤニヤと笑う。 参ったな、と言う顔をして慎也は苦笑するが、本当は胸はドキドキしっぱなしだった。 「ねえ、早く。」 「あ、ああ……。」 「ああんっ!」 「こら。」 また愛美が変な声を上げる。それに敏感に反応してしまう慎也も慎也だが、思春期の男子の心境は複雑なのであった。(単純とも言う。) 真っ白でもちもちした愛美の肌は、はっきり言えばエロチックだった。 手に吸い付くようなしっとりした感触が、慎也をドキドキさせた。 最初はおそるおそる触っていた雪郎も、次第に慣れてきて大胆に触るようになる。 パジャマをめくってあるのはお腹の辺りまでなのだが、パジャマの上から背中の辺りをマッサージして上げると、「あ、そこきもち……。」となかなか好評だった。 「ねえおにい、おしりに乗って良いよ。やりやすいでしょ?」 マッサージを初めて少し経つと、愛美は言った。 「い、いいの?」 「うん。乗るくらいなら良いよ。」 「じゃ、じゃあ……。」 うつぶせになった愛美のおしりに慎也はまたがる。 思った以上の柔らかく弾力のあるお尻に、雪郎はくらくらした。 むっちりとした女のお尻の感触。これは思春期の男子にとってなんという誘惑なのだろう。 「うふふ。じゃ、揉んで……。」 言われるままに腰や背中を揉むと、愛美はさきほど以上に変な声を上げた。 「ああ〜……気持ちいい。」 「あーん。そこ、もっとぉ。」 「あ、あ。それ……それ上手ぅ〜。」 むちむちしたお尻の感触や、愛美の余りに執拗なあえいだような声で、慎也は変なことをしてしまいたい衝動に駆られてしまっていた。 このまま前に手を回して、愛美の大きな胸を楽しんでしまいたい――。 襲いかかって、もっと変な声を上げさせてやりたい――。 「あ、あん。ちょっと、おにい手つきがエッチになってきたぞ。欲情したの?」 愛美がちょっと顔を赤くしてこちらを振り返る。 はあはあと吐く息が熱かった。 そんな扇情的な愛美の顔をまともに見られず、慎也はあわてて言った。 「ち、違うよ。疲れてきたから……。」 「そっか……。」 愛美は名残惜しそうにくるっと振り向くと、慎也をその大きなお尻から下ろした。 「じゃ、もう解放したげる。勉強ばっかりしてないで、もっと体力付けろよ。」 イタズラっぽい可愛らしい表情を浮かべて、顔を赤くした愛美が照れたように笑った。 キッチンでは母、希美が夕飯を作る音がする。 慎也はゴールデンタイムのバラエティを醒めた目で見ながら、昼間のことを思い出していた。 「優子……。」 ぽつりと呟くと、ソファーがぎしっと揺れて、そちらに少し沈んだソファーにバランスを取られる。 「……はい。」 横を振り向くと、赤い顔をしてうつむく優子が居た。 「あ、違うんだ……その、昼間のことを思ってて……」 「えっ……」 「あ……」 (しまった……!) ふと名前を呼んでしまったことを言い訳しようとしたが、余計にまずい方向に話を進めてしまったと慎也は焦った。優子は先ほどよりもさらにもじもじして、まともに雪郎の方を見ようとしなかった。 「……。」 優子は口をつぐんで、ちらと慎也を見た。そして、慎也もこちらを見つめていることを見ると、口に手を当てて、もう一度したを見、また顔を上げて言った。 「キス……」 「……!」 慎也は突然のダイレクトな言葉にビクッとする。 「……の、練習……」 「あ……あ、ああ。」 「だ、だよね……?」 それは昼間の映画館での出来事を、優子なりに解釈した答えだった。 あの映画の中で、主人公の役の女の子が「キスの練習」と言って兄にキスをねだる。それを二人は実際に行っただけだ――と言う意味であろう。 「うん……。」 「……。」 「うん、そうだ……。」 「そっか……。」 優子は少し残念そうな顔をちらと見せたが、すぐに慎也の顔を見てにっこり微笑んだ。 「えへへ……。」 「あはは。」 「……。あのさ……」 「うん。」 「こ、これからも……するの?」 優子はつばを飲み込んで、潤んだ目で慎也を見つめている。 「……。」 慎也も目を離せず、二人はまともに見つめ合う形になった。 これからも、するの? なにを? キスの、練習を? 練習……キス……優子とキス……これからもキス……。 (駄目だ……。優子……お兄ちゃんを、誘惑しないでくれ……。) 可愛い。 不安げに肩を震わせて、懸命に目を合わせる優子は凄く可愛らしい。 プルプル震える柔らかそうな濡れた唇。 まつげの長い、潤んだ大きな瞳。 性的アピールを強調したようなセクシーな体つき。大きなバスト。 こんな美少女がおれとキスを? 本当なのか……?いや、本当だ。現に、一度しているじゃないか。 柔らかな唇に、唇を重ねて……。甘い香りと、熱い吐息を存分に堪能して……。 ああ、一度したならもう二度でも三度でも同じことじゃないか?優子と、この可愛らしい美少女とキスが……ずっとしたかったじゃないか。ずっと優子とキスがしたくてしたくて、やっとあの瞬間、チャンスをものにしたんじゃないか!今この時、この質問に無下に答えたら、優子は二度と心を開いてくれないかも知れない。彼女の唇を楽しむチャンスを無くしてしまうかも知れない……。 いや、そんな不純な動機でこれから続けていって良いのか?そんな不純な動機だったのか? 動機はどうあれキスを拒めばその後のことも全て消えて無くなってしまう……。その後のこと。優子の……身体。甘い香りのする、柔らかい優子の身体やめろ!こんな事を考えるのは良くないおれは優子を性欲の道具に使いたくない。 優子とキス……。この可愛い優子と口を合わせて……それから…… 「優子……。これからも……」 「あらあら、お熱いわねお二人さん。おほほ、仲良しさんたちに御飯が出来たわよ〜ん。」 キッチンから、ころころと陽気な希美の声が響く。 「あ……。」 遮られた優子は、心底残念な声を上げた。 「はい、じゃ、じゃあ食べようか。優子。」 「ん……うん……。」 慎也にさしのべられた手を掴むと、優子は少し口をとがらせてソファーから立ち上がった。 優子が寝室に入ってきた。 部屋の中はまっくらで、辺りはシーンと静まりかえっている。 まだ前回の添い寝から2週間程度しか経っていないが、今日も添い寝することになってしまった。 今日はいつもと勝手が違った。 慎也の方から切り出したのだ。 「今日、どうする?」 そういって、優子を寝室に誘ったのだ。 昼間のキスが原因だろうことは明白だった。 とりあえず、優子としっかり話をしなくては。それが慎也の言い訳であった。 「お、お兄ちゃん。起きてますか……。」 優子が小さな声でどことなく気恥ずかしそうに訪ねる。 「うん、起きてるよ……。」 慎也が身を起こす。電気は消したままだ。 「お、奥行くね。」 優子がベッドを軋ませ雪郎をまたぐ。 甘いシャンプーの匂いを嗅いで、慎也はくらくらした。 もぞもぞと優子がベッドに潜り込む。柔らかな太ももが、慎也の足に絡みついた。 (――なんて……。) なんて柔らかいんだろう。 慎也は昼間の愛美のお尻の感触を思い出してつばを飲み込んだ。 それに、なんて無防備なのだろう。 こんなに女らしく発育してしまった身体を、何と無防備に近づけてくるのだろう。 「優子……!」 「あっ……」 慎也が優子に覆い被さる。 唇と唇が重なって、二人の吐息がふうふうと互いの頬に当たる。 慎也の舌が不意に口内に進入してくる。 「んうっ……」 驚いた優子は思わずくぐもった声を上げたが、すぐに欲情した男の舌を自ら味わった。 レロレロと舌を絡ませ合うと、ぬるぬるとした唾液がぐちゃぐちゃと音を立てる。 「んっ……んっ……」 優子は喉を鳴らして兄の唾液を飲み込む。 知らず知らずのうちに二人は相手を抱きしめ、強く抱き合っていた。 深夜が自分の唾液を飲み下すのを聞いて、優子は頭が真っ白になるほど欲情した。 「ぁはあっ……」 唇が離れる。 はあはあと二人は熱い息を吐いている。 優子は目を閉じたまま慎也に抱きついている。 心臓はドキドキともの凄い速さで動き、呼吸は荒い。突然のことにびっくりしたのだろう。 口を離しても粘性の欲情した唾液が糸を引いて、舌と舌をつないでいた。 少しの間呼吸を整えるために息をついて、少し落ち着いた頃に優子はふと口を切る。 「おに……ちゃん。当たってる……。」 優子が恥ずかしそうにもじもじと腰を振る。 すると、優子の股間に食い込むように当たっている、怒張した慎也自身がこすれる。 「うあっ……」 妹に与えられた性感に、思わず慎也が声を上げる。 「ご、ごめんね……!痛いの?お兄ちゃん……。」 優子はそれが何だか分からずに、心配そうに声を掛ける。 「いや……。痛くない……。」 「あっ……!!」 慎也は優子の股間にグリッと彼自身をこすりつける。優子は闇の中でも分かるくらい顔を真っ赤にして女の声を上げた。 「ああ、固い……。」 優子がうっとりと呟く。 瞳が濡れて光っている。 「もっ……と。キス……ね、して……」 唇がまた重なる。今度はいきなり舌を絡め合った。 寝静まった部屋の中に、ぐちゃぐちゃという粘っこい音だけが響く。 お互いの唾液を味わって、二人は欲情して股間を擦り付け合う。 「んんっ……んぁんっ……あはっ……」 性感に堪えきれなくなって優子が口を離して声を上げる。 それを無理矢理引き寄せて、また慎也が妹の舌を味わう。 いつも優しい兄が、乱暴に押さえつけて舌を絡ませてくる。 一匹の牡に口を犯されながら、優子はどうしようもなく発情した。 「はあっ……お兄ちゃん……!」 優子が兄の腰に手を回して、下から股間を擦り付ける。 「ああはっ……!」 ビクッと兄の股間が膨張したのを感じ、優子は牝の声を上げる。 「あん、だめ、ああ、あはあ!」 慎也がむしゃぶりつくように抱きついて、腰をぐりぐりと合わせてきた。優子は無意識に腰を振っていることに気付き、今更ながら堪えられないほど恥ずかしくなった。 「んふっ……」 強引にキスされながら股間を擦り付けられる。 兄の舌が、上顎を、舌の表面を、裏面を、歯茎を、歯と唇の間を味わう。 まるで優子の口の中を味わい尽くそうとするように執拗に口の中を愛撫する。 (――う……このままじゃ、保たない……) 慎也は高まる性感に溺れながら、同時に焦燥した。 あまりに興奮しすぎて、爆発してしまいそうなのだ。 このまま女の身体に溺れて、性感を高め合っていたらすぐにでも果ててしまいそうだった。 「あ……優子、もう……。」 「……?」 優子が荒い息をつきながら手を離す。 「お兄ちゃん、我慢できなくなっちゃうから……な?」 「え……。」 「今日は、もうやめよ。また……明日。」 「あ……うん……。」 余りにも残念そうな優子を見て、思わず『明日』と言ってしまったが、本来ならば『今度』と言うべきだった。 いや、本来ならばこれで終わりにしてしまわなければいけなかったのだろう。 しかし、本人は気付いていないが、雪郎はこの言い間違いを心から失敗したとは思っていないのだった。 「おやすみ、お兄ちゃん……。」 「うん、おやすみ。優子……。」 二人はしばらく軽いキスを交わして、どちらとも無く幸せな眠りに就いた。 |