ネクリス

わたしは、
隠し事をすることが得意。
だけどいつか、
すべてさらけだせるヒトに、
会いたい、と。
思っています。


DEARにて初発表。


「可愛いね、君」

レイは、スマートにあたしに話し掛けてきた。あたしはレイを知っていた。レイは金髪やら色とりどりの髪色の友達がいるくせに、自分はずっと黒で何色にも染まらなかった。レイは短く髪を切っていて、切れ長の目と通った鼻筋が整った顔だちを際立たせていてなかなか人気があった。背の高いレイとあたしは、ならぶと20cmの差があった。

「可愛くないよ。あたし」
「いや、可愛い」

レイはあたしの隣に座って、あたしにニッコリとした。バカじゃない。あたしはジっとレイを見た後、女好きのあたしの父親を思い出してイライラとした。こんなやつは早く死ねば良い。ここまで思ったけれど、あたしもヒトのことを言える人間じゃない。何人も、好きでもないくせにつきあったりしてたから。

「俺君の事知ってるんだ。サナカ、って名前じゃない」
「なんで知ってるの」


レイはあたしの唇にそう言った後キスしてきた。あたしはレイの頬をひっぱたいた。レイは、ニッと笑った。

「気が強いやつ、俺だいすき」

あたしは、レイのことを軽蔑の目で見ていたくせにレイのその勝ち気な瞳と強い性格に惹かれて行った。レイと色々な所へ遊びに行った。レイはあたしを好きだと言った。あたしも、レイが好きだと思った。

レイはよく、あたしを呼んだ。用事がないときも、

「サナカ」
「サナカ」

キスも、当たり前のようにあたしからしたこともあったし。身体をかさねたこともあった。レイは決まって、言った。

「ココロをかさねるのって、むずかしいな」

あたしはそのコトバがひっかかっていた。ずっと。だけど、レイの腕の力と肌の匂いにかきけされて、全てどうでもよくなってしまっていた。できるものなら、あたしはレイのものになってしまいたかった。いつでもあたしを呼んで、あたしを抱き締めて、あたしを束縛して。



あたしは、レイが好き。こんなにも、好き。
だけど、レイは、どうかわからなかった。だからいつも、不安で不安でしかたなかった。昔から、喧嘩の絶えない家庭だったから、おびえることしか得意じゃなかったし、愛情なんて信じられなかった。つながってはすぐに覚めてしまう。そういうモノだと思ってた。


「ねえ、まだ女の子と遊んだりしてるの?」
「してないよ」

「大好き」
「本当に?」

レイはあたしをじっと見つめた。レイの目は真っ黒で、あたしは少し恐くなった。

「じゃあ、そろそろ本当の名前教えてくれてもいいのに」

あたしはドキン、とした。レイは少し寂しそうに煙草を吸った。あたしは、小さくゴメン、と言った。レイが青白い煙りを、ためいきといっしょに吐き出した。あたしはそれが煙たくて少し目を瞑った。あたしは自分の名前を言わず、偽名をつかってずっと過ごしていた。これをどこでレイが知ったのかはあたしにもわからなかった。

「満知子って言うの。この名前はあたしの父親がつけたの。だから、誰にも言いたくなかった」

そうやって、あたしが泣きながらうったえたら、レイはあたしを抱きよせた。

「誰も知らない、サナカが知りたかった」





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