![]() もつれた電気 わたしは、 交差する瞬間を、 見ようとしている。 解説(文芸社様) DEARにて初発表。 ![]() |
『それ』を見る力が確かに、や、多分、わたしの中にはあって、未熟な分からだの強さで補っている。『それ』は姿形ははっきりとはしないけれど、存在している。宇宙、世界、街の中、ヒトの間、ヒトの中。 はじまりを予感している。かすかに、そして確実にわたしの中で。だけど、否定ばかりしている。これが本当にはじまるような気持ちであれば、わたしはきっと、とても仲の良い友達をひとり失う。そしてまた、大切にしているモノをポツポツと失う。はずだ。今までほぼ持ち合わせていなかった勇気、というのは、それから何かを失っても「そんなのちょっとのことさ」と言って手に入れようとする前向きさ。わたしは恋だと自覚する時にためらっていたのは、いつもこれを持っていなかったからだと思ってた。だけど、違う。多分。とても好きで、好きで、好きで、そういう気持ちが溢れてしかたがなくなっちゃえば、他の事だって見えなくなる。考える暇だってなくなる。感じるままに動いてしまう。それくらい、ゆるやかで、激しいものだと思うから。 わたしはただひたすら、出会えてよかったと。そのヒトに対して感じていた。すべてのなりゆきが、これの為にあったんじゃないかと。思えるくらい。愛しいとさえ思った。悲しくてどうしようもない、そのときわたしは恋をしているはずだったのに、その別の男性、そのヒトの顔が思い浮かんだ。わたしはそれを否定した。違う。違う。と、わたしは否定した。不純だと感じたから。ひとに、「わたしあのヒトが好きなの」と言ってしまえばわたしのなかでも『あのヒト』に恋をしているという状態になる。だから、『あのヒト』じゃない『別のヒト』のことが気になっているということは認めなかった。そうやって認めないくせに、そのヒトの言葉を聞いて励まされたり、前向きな気持ちになったりもした。そのたびに、何かおかしい、わたしは、と自分を不信がって眺めていた。確かに不信だった。 もう何ヶ月も前から否定していたはじまりと、やっと向き合おうとしている。というのは、わたしの中でひとつの恋に決着がついた。その恋で得るモノは沢山あって、悔いも残っていない。涙を流す恋なんて初めてだった。恋に恋していることはきっとあっただろうが、それでもわたしなりに恋だった。次にする恋は、きっと相手を思いやれる。わたしはひとりのヒトだけを思い続けることができない。というか、相手もわたしを想っていてくれるのなら話は別だけど。わたしの一方的な想いで、相手をずっと想い続けていたことがない。長く、深く。ちょっとスリリングなゲーム感覚だから。いつか、好きになったことを忘れられないくらい素敵なヒトと出会えるといい、とずっと思っていた。だから恋のはじまりを感じる時にいつもその理想を胸に描いている。だけど、わたしが今感じているはじまりにその理想をぶつけることはまだない。どうしてか。わからないけど。 わたしがあらためて気になりはじめているヒトの事を話そうと思う。そのヒトは、あたりまえのことをあたりまえのままこなしていくヒト。わたしはそのヒトに何度か「ありがとう」を言ったけど、「どういたしまして」と一度も戻ってきたことがない。当然のことだから、なのか、別に、なのか、嫌いなのか。どれかだとは考えたのだが、わたしでは答えは見えない。思ったことをすぐに口に出すのが長所で短所。それでもしっかりとしていて、姿勢はまっすぐしている。そのヒトはよく笑う。わたしは勝手にそう見てる。そのヒトのことを。目立つタイプだけど、とくに話したこともない。だけど、惹かれる部分があるのは、わたしとは全く違うタイプで、そして少し似ている部分も持ってるからだと思う。 これが本当にはじまってしまったと感じたら、わたしは誰にも話すのをやめようと思う。こころの中に秘めておくんだ。きっと。言葉は魔法で、口にすればする程また別の方向へ行ってしまう。気持ちがずれていってしまう。そしていつか、これを話す時がきたら話そう。もしかしたらこの先ずっと来ないかも知れない。すぐ来るかも知れない。そのときは、大切な友に。そして、傷つけるであろう友に。だけども胸をはって。 多分、わたしたちは出会えてよかったんだと思う。 それでもわたしは冷静だ。 index |