タイトル(未定)
まだ夕方の5時と言うのにすっかり外は暗く、街に明かりが灯る。
11月も半ば、気温は肌寒く、すっかり冬の様子を呈していた。
人通りが多い為か幾分寒さは紛れはしているものの、足早に岐路につく人々の群れがなんとなく心寂しい。
ここは、この界隈でも屈指の繁華街。様々な店が所狭しと建ち並んでいる。
週末の為か、どの店も客の入りはまずまずのようだ。
そんな雑踏の中、独り歩道橋の上からぼうっと下に通る道路を、虚ろな目で見つめる少年の姿が有った。
高校受験を間近に控え、今日は週4回の塾の帰り。
先日行われた全国規模のテストの成績が思わしくなく、家に帰るきっかけを失っていた。
真下の道路を止めど無く車が流れ続けている。まるで時を刻むかのように・・・・。
ポケットから乱雑に折り畳んだ成績通知書を取り出してみる。夢であって欲しかった。
それからどの位の時間が経っただろうか、少年は駅に向かって歩き始めた。
途中、ふと、人だかりが目に入った。最近良く見かけるギター弾きかと思ったが、少し様子が違う。
時々、人だかりから笑い声が漏れる。なにやら大道芸人でもいるようだ。
普段なら全く気にも留めないが、今日は件の事情から少し、見物する事にした。少しでも家に帰る
時間を延ばしたかった。例え、それが所詮は時間稼ぎでしかなかったとしても・・・。
人だかりを掻き分け、見える所まで潜ってみる。どうやら道化師が手品かなにかをやっているらしかった。
メイクまで施しており、かなり本格的なものであった。いままで、TVやその他メディアで観た事もない様な
見事なマジックの連続に、時を忘れ、ただただ見入っていた。
自分でも気付かぬうちに最前列に居たらしく、マジックの協力者として、道化師に手を引かれた。
不思議な位、自然な流れであった。まるで少年が予めその芸の一員として居たかの様に、マジックは
滞り無く進行し、観衆の大歓声に包まれ終わりを迎えた。
終了後、暫くで、あれだけ居た人は皆またそれぞれの岐路につき、周辺はまた、いつも通りの様子を
取り戻していた。まるで、いままでの出来事が幻であったかのように・・・。
気がつくと少年は1人、その場に立ち尽くしていた。
もう道化師の姿も無かった・・・・。冷たい風がその時、少年の頬を撫でていった・・・・・。
2話へ
続く