不適反応の仕組み(1)



心の仕組みの解明は、それ自体大きな意義を持つと思います。しかし、前述のように、仕組みを精確に理解しても、不
適反応の解消や軽減につながらないのが現実です。
このサイトに目的にとっては、不適反応の仕組みについて大まかなイメージがあれば十分です。自分の経験に当ては
めて納得できなければ実効性がありません。

無意識とか潜在意識といった心理学の用語は市民権を得ているように見えますが、話し手によってその意味合いには
差異があるようです。そこで、独自の用語を使うことにします。


《心の3つの機能》
心には多様な機能が備わっていることと思いますが、3つの機能を取り上げます。ここで述べるのは便宜上の分類・定
義です。

1つ目は記憶する機能です。心は経験したことのすべて(知覚した外側の情報から心身の反応にいたるまで)を記憶し
ているようです。たとえ、睡眠中や何らかの理由で気を失っているときでも、心は刻々と情報を蓄積しているようです。
日常の活動の中でこの記憶を自由に引き出して利用することはできません。そのために実感が湧かないと思います
が、さしあたってこの前提を飲み込んでください。
記憶する機能を便宜的に“記憶する心”と呼称します。

2つ目は分析・判断・選択する機能です。この機能は自覚しやすいので、詳しくは説明しません。この機能を便宜的に
“理性的な心”と呼称します。

3つ目は内外からの刺激に対して機械的に反応する機能です。喜怒哀楽、愛情、恐怖感、嫌悪感などなどです。働き
は単純ですが、反応は瞬時に起こりその支配は強力です。
この機能を便宜的に“機械的な心”と呼称します。


《“機械的な心”は学習する》
異性や幼児に感じる愛情や心身の危険に対する恐怖感などは、おそらく生物として必要不可欠でしょうし、人を“しあわ
せ”に導く鍵とも考えられます。こう考えると、“機械的な心”が“理性的な心”を圧倒する支配力を持つことは当然と感じ
られます。

“機械的な心”は学習します。学習は危険回避のために必要不可欠です。
生まれたばかりの幼児は、高熱に恐怖感を抱くことはできても、どこにその危険があるのかを知りません。そこで、はじ
めは失敗します。例えば、熱湯の入った薬缶に触れて火傷を負ってしまいます。再び熱湯の入った薬缶に触れてしまう
かもしれませんが、2度目は高熱を感じた途端に手を引っ込めることくらいはできるでしょう。3度目は熱湯の蒸気の気
配を感じた段階で手を引っ込められるかもしれません。
前述のように“記憶する心”は経験したことのすべてを記憶します。“機械的な心”は常に現在の知覚に共通点のある
体験を“記憶する心”に問い合わせています。上の例では、最初に薬缶に触れたときに、熱湯の入った薬缶の属性や
自分を見舞った痛みやらパニックやらがそのまま記憶されます。2度目に薬缶に接近した際、火傷を追った記憶が検
索されると、それが痛みや心理的混乱を伴った危険な体験であるため、“機械的な心”は(おそらく)記憶された情報を
アレンジして再生することにより警告します。この警告は“理性的な心”による判断を待たず即時に発動され、“理性的
な心”よりも優越してその人を支配します。さらに、“理性的な心”は“機械的な心”のこれら一連の動きを感知できませ
ん。よって「自分は咄嗟に反射的に薬缶から手を引っ込めた」としか感じられません。
こうした“機械的な心”と“記憶する心”の連携により、年齢とともに危険回避能力が高まっていきます。
もちろん当の本人は“機械的な心”の活動など知る由もありません。

人間にとって必要不可欠な“機械的な心”による学習ですが、これが不適反応に原因にもなります。



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