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クリーム考 |
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記憶にあるなかで一番古い「クリーム」は「バタークリーム」で、私と同年代の人(ちなみに筆者は昭和46年生まれ)か上の年代の人は思い当たるのではないでしょうか?バターを主材料として作るので、ちょっとしょっぱくで脂分が強いが日持ちがよいので、大手製パンメーカーのデコレーションケーキはこのクリームのモノしかありませんでした。小学校に入るころまでは大手製パンメーカーのお誕生日のケーキ・クリスマスケーキはこのクリームでした。バタークリームから生クリームへの移行期ではデコレーションケーキの注文時にクリームを指定しなければならず、生クリームのケーキは割高で自分のお誕生ケーキが生クリームだと誇らしかったものです。ちなみに私の調査では現在25歳以下の人は、生まれた時から生クリームがあった世代と考えていいようです。 昭和50年代前半、私が小学校低学年のころ日本全国が「手作りお菓子ブーム」に沸いた。この仕掛け人は誰だか知りませんが、フランス美食大使の称号をもつ料理研究家「今田奈美子」がメディアに露出し始め、「キューピー3分クッキング」「きょうの料理」などで菓子作りを披露しはじめました。前者は土曜日が「菓子の日」になっており、学校が休みの日には心ときめかして観たものでした。また、このブームを決定づけたと私が思うのは小学生向け『小学館のミニレディ百科』からお菓子作りの本が出版され、小学生でもやる気になればケーキが作れるようになったこと。もちろん、私を含め多くの友達が「菓子作り」のようなことをはじめるのです。 大きな希望は「自分でデコレーションしたケーキを作ること」だけど、最初からできるわけがありません。本からの知恵を拝借し、手軽に手に入るロールケーキを一本使い「ブッシュ・ド・ノエル」を作ろうと思い立ち、もちろん表面に塗るクリームが必要になるけど、生クリームはまだまだ今以上に高価で手にはいりませんでした。そこで登場するのが「ホイップ&ホイップ」または「クレミーホイップ」なのです。
「ホイップ&ホイップ」。これは同世代でも知らない人がいるのですが、当時冷凍食品売り場にありました。冷凍食品です。プラスチックのフタ付きドンブリ型ケースに入っていて解凍してからつかうものでした。友達のウチに遊びにいくと当時流行っていたクレープにこれをタップリ塗って缶詰めフルーツを挟んでくれました。このクリームは手軽なのが利点ですが、解凍したら3日位で使い切ってしまわなければならず、おばさんのクレープはいつもあふれ出るクリームと缶ミカンにチョコスプレーがかかったものでした。 数年前、「カップがチューブになって使いやすくなりました」のキャッチフレーズで「ホイップ&ホイップ」が「チューブでホイップ」に変化する映像のCMが流れたのを覚えていますか?売り場も冷凍食品からチルドに移動し、解凍不要のクリームに生まれ変わりました。ケーキのデコレーションよりウィーン風コーヒー、パフェやプリンアラモードといった<おかあさんとこどものオヤツ>をターゲットにしたようです。現在「チューブでホイップ」はホワイト・ホワイト甘さ控えめ・チョコレートの3タイプがあることを確認しました。 ホイップ&ホイップの流れは、業務用喫茶店クリームや家庭用チューブホイップと繋がっているのであります。 一方「クレミーホイップ」は私の必殺技。品名が「ホイップクリームの素」というだけに白い粉末で、そこによく冷えた牛乳(または冷水)を加えてよく混ぜるとあらフシギ、ホイップクリームの出来上がり。これが、うそっぽい味がするんだけど、コーヒーゼリー・アイスコーヒーなんかにピッタリ。ケーキの飾り付けに使っていたんけど、どこか胡散臭さ否めない味に仕上がってしまう。いまでは、他のメーカーでチョコレート味もでています。 ここまでは「生クリーム」が簡単に手に入らない時代の苦肉の策ともいえる食品。「クレミーホイップ」はいまでも手に入りますし、当時はこの粉末に卵を足してつくるアイスクリームのレシピがついていました(当然チャレンジしたけどカチンカチンのアイスクリームができ上がりました。食べたか覚えてません)。 昭和50年代後半、これからホントの生クリームが登場するのです。 家庭用純動物性脂肪の生クリームがスーパーで販売され始めたのが、小学校高学年頃でした。全体量は少なかったのか売れ行きかよくなかったのか、いきつけのスーパーではいつも2〜3個程度しかおいてなく、賞味期限をしつこいくらい確認して購入したものでした。高いクリーム(当時1パックで¥500-前後)だから子供の小遣いでいつも買うことができず、次第にクリームを使うケーキから離れていきました。 中学生だったころ世の中は「ヘルシーブーム」。コレステロールがとかく話題になり、クリーム界に異変がおきた。そう、「純植物性脂肪クリーム」の台頭である。生クリームは牛乳から乳脂肪分(クリームライン)を分離してつくるが、このクリームはそれを植物由来の脂肪分で作るのである。バターは牛乳からつくるが、マーガリンは植物油と二酸化炭素からつくるというのに似ています。低価格で後味スッキリ、しかも動物性が忌み嫌われた時代性が影響して、体に良さそうな「植物性脂肪」幻想で生活に密着したものになっています。注意すべきは、「純植物性脂肪クリーム」は加熱料理に向かないこと。脂肪分が熱で溶け出してしてしまい、表面にアブラが浮いた状態になるから。シチューやクリーム煮には「純動物性脂肪クリーム」をつかいましょう。コクと旨味が違うんですよ。 ナチュラル志向が海を渡って日本に上陸し、生活にもっとゆとりをとか、化学製品がまん延した生活を改めようとか、自然食品ブームとか、乳製品メーカーが頑張っているとか、冷凍技術・運搬技術が格段に進歩したとか、製品間の差別化がすすんだとか、いろんな流れが影響しているのか、普通の食料品店やチェーンスーパーで多様な生クリームやフレッシュチーズが簡単に手に入るようになりました。某乳製品製造会社の食中毒事件以来、地方の乳業メーカーの製品が首都圏で販売されることが多くなりました。生クリームも脂肪分で種類が選べるし、料理用クリームやクロデットクリーム、サワークリーム、クリームチーズ。百貨店にいかないまでも、普通の食料品店でも購入できるようになっていい時代になったもんだ。「モグモグゴンボ!」を観るたびに思っちゃいます。 |
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| resume 食 |
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ホイップ&ホイップ:当時400円位だった。最近見かけない(雪印乳業製) |