ケンとの出会いは七月中旬。知り合いのおばちゃんが入院して、
飼っていたプードルをしばらく預かることになった。みためは可愛らしいのに
私だけにはなつかず全然カワイクない。ひとりぼっちになるのが怖いらしく、
私が出掛けようとするとクンクン鳴くくせに、みんなといると、私をナメてかかる。
あるとき内緒で肉の塊をやってから、なんとな〜くなついてきて、そのうちわたしの部屋で
ベッドを占領するようになった。兄の部屋ではオシッコしかしないのに、ここではしない。
なにげに可愛く思えてきた。
情が移ってきたころ、おばちゃんの退院の知らせが届く。「ケンを迎えにいきますから」
おめでたい知らせなのに、なぜか素直によろこべない。なぜか胃がキリキリ・・・。
次の日ケンは、いつものように散歩につれていかれ、そのまま本当の家に帰っていった。
お礼にビールとデパートの商品券をいただいた。お礼にと思って贈ってくれたんだろうけど、
私は少し悲しかった。