*はじめに*
元来、『源氏物語』とは54の帖(=話)から成り立っています。主人公『光源氏』の栄衰を綴った帖が44。
光源氏の息子『薫』の生涯を綴った帖が10(これを所謂「宇治十帖」と言われている)となっております。
今回の台本は光源氏が生まれてから、須磨に流されるまでの源氏の女性遍歴の中心部分を書こうと思います。
一
時代は平安時代。宮廷では貴族が華やかな生活を送っている時代です。当時は一夫多妻制。つまり一人の
旦那さんに対して沢山の奥さんが存在していたという、なんともうらやましい時代でありました。当時の帝「桐壺
帝」(日本で一番偉い人)にはそりゃーもう、すんごい数の奥さんがいたわけです。そんな中の一人に「桐壺の
更衣」と言う女性がいました。この人物こそが光源氏の実の母に当たる人なんです。もちろんお父さんは桐壺帝
なんですが、桐壺帝にとって桐壺の更衣は自分の奥さん達の中でいっちばんのお気に入り(なんせ自分の名前
「桐壺」ていう名前がついてますもんね)。桐壺の更衣というのは、もともと家柄も身分もそんなに高くなかったの
ですがもののみごとに玉の輿に成功したわけです。ココで黙ってられないのが、桐壺の更衣以外の奥様方。
「なーんであんな下賎な女が帝様のお膝元なんでしょ!」 なーんて袖をかみ、嫉妬心に駆られ、こぞって「更衣
いじめ」にかかります。そんないじめに桐壺の更衣は心も体も弱まっていき。ついには死んでしまうのでした。
このとき、源氏3歳・・・・・・。桐壺の更衣がいなくなってしまった今、誰が源氏のお世話をするのかと言うこと
で、桐壺帝の奥さんの中の一人「藤壺の宮」に任されます。このとき源氏10歳。この藤壺の宮、桐壺の更衣と
大変似ており、しかも源氏との年の差はなんと5歳!源氏も初めは母親としてみていたのですが、いつのまにか
藤壺の宮を一人の女性、しかも憧れの女性と見るようになっていきました。藤壺の宮の方も「自分は桐壷帝の
妻という身。こんなこと・・・・・こんなこと・・・・・あってはいけないの・・・・・」と思いつつも、やはり「いけないとわかっ
ている恋ほど燃えるものはない」と言った感じなのでしょうか?二人は恋に堕ちていくのでありました・・・・・・・・・。
二
平安時代というのは医療技術に関しても今のように発達しておらず、当時の平均年齢が30〜40と言われてお
ります。したがって、現代でいうところの「成人式」というのは、12歳のときに行われます(これを当時の言葉で
「元服」といわれていますが)。もちろん我らが光源氏も12歳のときに元服するのですか、その日の夜に当時の
左大臣(いわゆる帝の「右腕」。左なのに「右」とはこれ如何に?)の娘君「葵の上」を自分の正式な妻として迎え
ます。「12歳で奥さんとはっ!!」とおもいがちでしょうが、これは当時の、特に貴族階級からしてみれば当然な
のです。しかしこの結婚のせいで、源氏は上に述べましたように藤壺の君を一人の憧れの女性と見るようになっ
たのですがね(ここで話の流れをきちんと把握しておきましょう♪)。しかし、容姿端麗で女性大好きの源氏にとっ
て結婚生活と言うのはつらかったんでしょうね。その後も源氏はさまざまな女性に手を出していきます。ある日
藤壷の宮のことで苦悩していた源氏は祈祷を行いにいきます(祈祷というのは一種のおまじないみたいなもので
す。「恋のおまじない」といった感じでしょうか?)。その途中で思い人の藤壺の宮によく似た少女「紫の上」を見
つけました。駕籠の中の雀が逃げてしまったと泣いている姿があまりにも可愛かったので、自分の手元に引き取
りたいと申しでます。一度は、断られて帰京しますが、少女を養育していた祖母が亡くなり、後世話人がいなかった
ため、源氏はまってましたとばかりに、その役を買って出ます。要は「自分の理想の女性」に仕立て上げようとした
わけですね。この少女は非の打ち所のない女性へと成長していきます。そして、長く伴侶として生活を共にするの
です(忘れていませんね?この時代は一夫多妻制なんです)。
三
さてさて、女性にモテモテの光源氏ですが。そんな彼に男友達というのはいたのでしょうか?いました、たった一人
ですがいました。名を「頭中将(とうのちゅうじょう)」といい、かれもまた源氏と同等の美貌の持ち主でした。つまり
源氏とは仲の良い親友でもあり、恋のライバルでもあったのです。そんな頭中将、やはり彼にも妻がいました。
その中の一人、「夕顔」という女性が後に源氏と深いかかわりになってくるわけです。現代でいうとこのW不倫です
ね。さてこの夕顔という女性は、桐壺の更衣と似た運命たどることとなります。頭中将からの絶大なる寵愛に正妻
が嫉妬に燃える。こういったことは、いつの時代も変わらないんでしょうねぇ・・・・・・。「死」までにはいたりません
でしたが、こっそりと頭中将のもとから離れ下町の夕顔の咲く屋敷で隠れるように暮らしていました。運命とは実に
不思議なものです。ちょうどその屋敷を源氏が通りかかったんです、たまたま。もちろん頭中将が溺愛した女性で
す。源氏が見過ごすはずがありません、もちろん夕顔の元へ通っていくのでありました。なにも知らず・・・・・・・・・。
源氏が全てを知るのは、夕顔の元へ通いつづけて数日たってからでした。頭中将と女性論をあれこれ語っている
ときに、頭中将から聞かされるのです。さすがの女性好きの源氏もこればっかりは罪の意識に苛まれます。そして
とうとう源氏は頭中将に夕顔の居場所を教え、またそれ以来夕顔の元には通わなくなります。これで一件落着・・・・
っと思ったら大間違いでした。「その後うまくやっているのだろうか?」と、夕顔の元へ訪れると、夕顔は源氏に感謝
するどころか「頭中将に居場所を教えた源氏が憎い!一生怨んでやる!」と言い残し。その後、物の怪にとりつか
れたかの様に発狂し死んでしまいます。全く女性というのは・・・・オソロシイ一面を持ってますね。
四
平安時代は女性上位時代です。女性の顔は常に隠されていて、全く顔は見れません。男性は、垣根の隙間などか
ら女性が顔を隠してないときを見計らってこそーっと覗き見し、お目当ての女性が見つかったらその女性に『和歌』
を送ります。5・7・5・7・7のアレですね。その和歌が女性にとって気に入ればそこで素顔のお披露目をし、そして
新しいカップルが誕生すると言う訳です。光源氏もそうやっていろいろな女性と、一夜を共にました。「朧月夜」とい
う女性もその一人でした。桜が咲き乱れている春のひの夜に、藤壺の宮恋しさに宮中をふらふらと歩いていると、
「弘徽殿の女御」(桐壷帝の奥さんの一人)部屋の戸が開いています。薄暗い部屋にこっそりと忍び入り、そこで
源氏は若い女性と運命の出会いをします。女はびっくりしておびえた様子を見せますが、相手が源氏と知って拒
みもせず、そのまま一夜を過ごします。源氏という人物は相当の知名度と魅力があったこともここから推測でき
ます。あわただしく一夜をあかし、その場は、この女が誰であるかわからないまま、互いに扇をとりかえて別れます
が、後になって、あの女性は「朧月夜」ということを知るのです。そして二人は恋人同士と発展していくのでした。
しかし、そんな二人が世間相手に堂々と交際宣言をできるかというとそうではありませんでした。この「朧月夜」とい
う女性は、弘徽殿の女御の妹に当たる人物であり、この弘徽殿の女御こそが桐壺帝の正妻であり、源氏の本当の
母親桐壺の更衣を苛めた中心人物なのです。さらに朧月夜は桐壺帝の妻となる人間だったからこりゃ大変!ただ
でさえ藤壺の宮に手を出してるのに、「二人の障害が大きいほど・・なんとか」。というわけで二人は、誰にも見つから
ないようにひっそりと密会を重ねていくのでした。しかし、二人の密会はそう長くは続きませんでした。ある時、弘徽
殿でいつものように朧月夜とあっているところを、朧月夜の父「右大臣」(左大臣と並ぶ地位の役職)の召使いに見
つかってしまいます。万事休す。二人の仲は右大臣によって引き裂かれてしまい、二度と逢えなくなってしまいまし
た。悪いことというのは立て続けに襲ってくるものです。こんどは源氏の後ろ盾をしてくれたつよーい味方「桐壷帝」
が、病気で死んでしまいます。帝という地位を継いだのは「朱雀帝」です。これは弘徽殿の女御の息子ですから、
源氏にとってはますますばつが悪くなります。そして身の置き所を失った源氏は、自らの希望で「須磨」(現在の神
戸辺り。今はかなり賑わっているところではありますが、その当時は所謂「田舎」でした。)へ逃げるのでした。
*さいごに*
この後、源氏は須磨でさらに女を作ってわずか2年ちょっとで都に戻ってきます。そして若き日の栄華を再び取り
戻すのですが、今回はこの「須磨退却」までとさせていたたきます。さらに、この間まででも源氏はもっと多くの女性
と付き合ってきているのですが、時間とキャストの関係上、主要人物のみを取り上げさせていただきました。
第1回脚本担当:井ノ上 真琴