
| 4回生に上がる春休み前になって、名古屋の 旅の友 (木村)デコちゃんから、久し振りに手紙が舞い込んできた。『(上田)トンコの妹(確か優子さん だったかな? はっきりした記憶はない)が今年高校を卒業したので、記念の“卒業旅行 ”に2人の付録 ― トンコとわたし ― を引き連れて関西方面へ遊びに行くから、京都で会ってくれる?』と、書いてあった。
どうせ後期試験も済んだ事だし、休み中のアルバイト契約の事しか考えてなかったので、喜んで『京都で会うという約束OK!』との返事を送ると、『3月30日 京都タワー での、再会を楽しみにしています。』と認めてきた。 日付と曜日が …… (私が旅先等で人と会うときは、彼等の仕事の休日を選んでいるが、俺は学生なので皆の休日に働いている)とも考えたのだが、彼女らに会う事と1日の日当を、例え一刻でも天秤に掛けたとは。情けない、これがひょっとしてどう発展 ? するか …… 。《表題どおりになる…とほほ(;_;)》 当日彼女ら3人と会うと、4日ほど前から来ているとかで、もう神戸や奈良、宇治の平等院や大原方面は、既に廻ってきたとの事。 「ワタヌキさん、春休みや夏休みなど長期の休みの時はアルバイト漬けやと言ってたから、悪いと思ったけど今日1日だけ、私達のワガママ聞いてくれる?」 「デコちゃん、そんなに気い遣わんといてえなあ。俺かてある程度‘小金 ’握ったら、大阪からいーひんようなるんやから。」 「エッ? イーヒン?」 「アッ、ごめんごめん。イテヘン、オラン、ちゃうな ……」 「つまり、大阪から何処かに(旅?)出ていくって事?」 「ソユコト、ソユコト。オオサカベンハムツカシイ。」 「私達にとってでしょ!」 「ま、そういうことでして まる」
京都市内は私との約束もあったのか、最後に残しておいてくれてたとの事。こりゃ私としても楽ではあったが、『これから何処か遠いところへ案内してくれ』と言われても、嵐山くらいしか行くことが出来ない。←ただ単なる私の準備不足なだけ。責められるのは…。 まずは烏丸通を上り、“東本願寺”の大門をくぐる。広い境内の中を、そしてそれに見合うかのようなデカイ御影堂 本堂 等を巡り散策する。 「熱田(神宮)さんの境内の方が大きい ………… よね?」 「でも、本堂はこっちかな?」 …………… ワイワイ、ガヤガヤ …………… 「女3人寄れば、なんとやら。」 「何か、言った?」 「エッ、いんやなんも。デコちゃん、何も。」 (地獄耳なんやから、ホンマかなんやつらや) 「次行くで、次。」 「は〜い!」 ここをあとにして、再び烏丸通を北上し “京都御所”まで行く。今出川側の“乾御門”から入り、グルッと内裏の外を半周ほどする。一般公開の時期でもなかったし予約もしてなかったので、内裏内部には入れなかったが、“宣秋門”や“建礼門”等の手前から、あそこに見えるのが 清涼殿 だの 紫宸殿 だのと説明しながら廻ったのだが、なかなかハッキリとは見えない。 北大路回りの市バスで、一休禅師で有名な “大徳寺”の事や大徳寺納豆の事、等々の説明をしたりしながら、“金閣寺前”で降りる。春休みに入っているので、人、人、人の列が続く。何処に行ってもこうなるのかな(?)と思いつつも、案内せざるを得ない。
あくまで彼女ら3人が中心であり、私は全くといって良いほど写ってはいないが。 被写体が綺麗だと、出来上がりも …………。 ちょうど昼前に出たので、『じゃ、お昼にしようか。』と言って、金閣寺道の通り近くに在るお好み焼き屋さんにはいる。 と、 「私、焼いた事無い。」 「私も。」 ………………… ほんまに焼いたことが無いんかと疑いつつ都合4枚、俺が焼くはめに ……………… トホホ!
「あまり面白くない?」 「ううん、とっても静かで落ち着くわよ。」 との返事で、内心ではほっとするのだが、若い娘3人ならもっと面白い所、楽しい所を案内しても(?)と思いつつ、『彼女らが行きたい』と言って一緒に来たのだし………。 それではとその後、車で今出川通りを東へ突っ切り “銀閣寺”へ向かう。型通りの案内ののち哲学の道を下って散策し、岡崎に出て“平安神宮”に入る。 「この平安神宮は、京の御所を模して建立されており、楼門は ‘応天門’であり、拝殿は ‘大極殿’を3分の2に縮小して再現され建立されている。云々。」 と説明するが、理解されたかな? 八坂神社から祇園辺りの東山周辺の繁華街に出たあたりから、彼女らの動きも活発になりはじめ、日も暮れ出してからウインド・ショッピングをしだした。二年坂、産寧坂も案内すると、様々な土産物を物色していった。流石我々男と違い、見方も少々違うようだ。
四条河原町で夕食を摂ったあと、そろそろ別れの時間となった時、 「私達、まだ後1日京都で泊まるの。もっと買物もしたいし、もっと見て廻りたいし。案内してもらったお店で、今晩がダメなら明日にでも行ってみようと思うの。今日は、本当にどうも有り難うございました。」 「俺、自分でアチコチと探し回って歩くのが好きだから、案内するの下手だったと思う。」 「そんなこと無いよ。木屋町のあの鳥の絵の意味等、面白かったよ。」 この様な別れの挨拶を交えたのは、京阪三条駅近くの例の場所(高山彦久郎が、御所のほうを向き別れを告げている所)三条駅構内に入るために別れを告げ帰ろうとした矢先、トンコの妹が駆け寄ってきて一言。 「お姉ちゃんね、4月に入ってすぐ婚約するの。そしてこの秋に結婚する予定なの。この旅行、私の卒業旅行と同時に、姉ちゃんの独身最後の旅行になると思うの。」 「分かった、有難う。 もう何も ………………………。」
あとは言葉にならず、黙っているのみだった。構内に入る前振り返ってみると、日頃でも明るく元気なデコちゃんは、笑顔を満面に現して手を振りつづけ、トンコの妹はその細面の顔に微笑みをたたえて手を少し振っただけだったが、彼女(トンコ)は横を向き、顔を俯けたままだった。
街灯を通してみると、頬の辺りに一筋 キラッ と何かが光っていたように見えた。
昨夏、再会の時『何故、あの長い髪を切ったのか。』と思った疑問も解け、もう振り返ることもせず駅構内に足を進めた。 |