その島は、みな「竜の島」と呼んでいた。
大陸の、最も近い港から、冬なら数時間でたどりつける。 翼を持つ竜たちにとっては、人の住む街までなら、ひとっとびである。それなのに、竜たちは、決して人の街に行こうとしない。 時々、はぐれた子どもの竜が迷い込んで来ることがあったり、 嵐の翌日に、かわいそうな竜が浜に打ち上げられたりする程度である。
その代わり、人が竜の島に出向いていた。 彼らは王の使と名乗り、綺麗な鎧で身を固め、沢山の兵士を従えていた。 港で船を買い取り、手下の者たちに船を漕がせると、すぐに竜の島にたどり着く。
島につくと、すぐに使者は、手頃な竜を捕らえる。 まだ小さい竜を眠らせ、その隙に太い綱で縛りあげ、船に乗せて、持ち帰る。 あとは王に献上すれば、たんまりと金が手に入るのだ。
大陸にはたくさんの国があり、王たちは競って竜を手に入れようとしていた。 竜は、飛び、火を吹き、調教次第で人の言うことをよく聞く。 戦乱の中では、寄せ集めの兵士一千人よりも、一頭の竜の方が貴重だ。
竜のためなら、どれだけ多くの金をもってしても、どれだけ多くの 血を流させても、手に入れたいものなのである。 時には竜の島の周りで、戦いが起こることさえあった。
戦いがあまりに多くなったため、ある国の王であるジョンが提案をした。 もう、竜の島から竜を捕獲することはやめよう、と。
戦いに疲れ始めていた王たちは、多くはこの提案に賛成し、反対した王 たちには滅亡を与えた。そして、竜の島から、みな揃って手を引いた。
竜の島からの撤退を提案したジョン王は、非常に賢い王であった。 もし裏切り者がでてくれば困るからと、竜の島の竜を全て殺した。 これで平和になると、ジョン王のみならず、他の王たちも思った。
しかし、疲れが癒されると、また王たちは戦い始めた。
戦いには、たくさんの竜が必要になる。 竜を求めて、東奔西走した結果、野性の竜は既にいないことに、みな気付いた。
ジョン王は頭を悩ませた。竜が欲しい、しかしどこにもいない。 そこで、ジョン王は他の王たちに提案した。このままでは戦いにならないから、 各国王が一頭ずつ竜を出し、竜の島で繁殖させよう、と。