書評 か行
桐野夏生
OUT
ジャンルはクライムノベル(犯罪小説)。物語の主眼は、犯罪を犯した方法よ
りも犯罪を犯した者達の心理描写に重点が置かれている。
主人公香取雅子は43歳、主婦。息子との意志疎通は途切れ、夫婦仲は冷えき
っているため、家族間で互いに干渉しないのは暗黙の了解である。自分が働い
ていた会社を首になってからは、昼間の仕事に就くことを止め、肉体は酷使さ
れるが時給の高い夜勤のパートに精を出している。
彼女はふとしたことから、誰にでもある心の闇・空虚感を「犯罪」で埋めてし
まった。彼女を取りまく人々の、感情・思惑・下心・打算、そして愛情。これ
らが複雑に絡み合って、作品OUTは構成されている。
雅子が犯罪に手を染めた人物であるため、感情移入するのが苦しいところもあ
った。それは描写がリアルであったための生理的嫌悪感、か。犯人側が主人公
である作品で、そこまで感情移入できる作品に出会ったのは久しぶりだと思う。
どんな時にも冷静で、頭の切れる雅子。彼女が救われない闇に堕ちていく姿が
痛々しい。心理描写のうまさに舌を巻く場面もあったが、読後には自分自身に
虚ろな気持ちが残った。
「犯罪」とはやはり恐ろしいもの。
一度足を踏み出したが最後、二度と戻ることの出来ない道なのだ。