インフルエンザワクチンQ&A


1 
予防接種の必要性
 インフルエンザは5〜14歳の罹患率が最も高く,秋から春先にかけて毎年流行します。現在,Aソ連型(HINl)・A香港型(H3N2),B型の3種類が同時に,あるいは混在して,それぞれが毎年少しずつ変異しながら流行を続けています。 インフルエンザに罹患しますと、肺炎,気管支炎のほか,脳症,ライ症候群,心筋炎,中耳炎などの合併症もあって,大きな被害や生命の危険がありますので,決して軽い病気ではありません。 ワクチン接種で血液中の抗体価を高めておきますと,インフルエンザの罹患が防止でき,たとえ罹患しても発熱などの症状が抑えられ,合併症や死亡する危険から逃れることができます。

2 インフルエンザの病気としての特性  
ワクチン接種を受けたのに,インフルエンザに罹ってしまったというような議論があります。インフルエンザはウイルス性疾患ですが,麻しんや水痘などと違った病気の性質があって,その特徴は次のとおりです。
1)かぜのウイルスには約230種以上もあって,インフルエンザとかぜを区別することは臨床的にも困難です。インフルエンザには3つの型がありますが,1つ1つの型の中でも変異があります。
2)潜伏期が非常に短く,1〜2日に発病します。
3)気道に侵入・定着したインフルエンザウイルスが一次増殖を始めて,発生した局所の炎症がすぐに全身の症状に進行します。
4)ウイルス血症がほとんど起きません(麻しんでは一次増殖のあと,ウイルス血症が起きて,標的器官で二次増殖が起きて全身性の症状に進行します)。
5)局所抗体が不活化ワクチンでは期待できないと指摘されていますが、血液中の抗体(IgG)が局所に組織液と一緒に分泌されて感染防御に役立っています。血液中の抗体価が高ければ高いほど,感染を防ぐことができるのはこのためです。不活化ワクチンの噴霧接種で局所抗体(IgA)が産生される報告があります。

3 予防接種の実際
1)接種の回数 
  2回行って下さい。
2)接種の間隔
  1〜4週の間隔ですが,医学的には4週の間隔が最適です。
3)接種量
  1歳末満は0.1mL、1〜6歳末満は0.2mL、6〜13歳末満は0.3mL、3歳以上は0.5mLです。 年齢で接種量が違いますので,注意が必要です。  
           4)副反応
  局所の発赤,腫脹,疼痛など、全身反応として,発熱,悪寒,頭痛、倦怠感などがありますが,通常,2〜3日中に消失します。

Q1 ワクチン接種について−効果的な手段を教えて下さい  

 インフルエンザウイルスは毎年変異しながら流行し続けていますので,予防接種は毎年必要です。
毎年使うワクチンは,世界各国や日本各地の流行状況を常に監視し,春から夏にかけての小流行が次のシーズンの主役になっていますので,この時期に分離されたウイルス株を中心に厚生省からワクチン株が指定されます。毎年製造されているワクチン株は流行株とよく合致しています。
 効果的な使用法は,流行期が通常12月から翌3月頃で,これに備えて12月には2回目の接種が終了するような接種計画を組むことで,しかも1〜4週間の間隔で2回接種することです。集団にあっては,2回接種した人をできるだけ多くすることが必要です。
   前田幸子他:大阪府立公衛研所報 25,41,1987.

Q2 インフルエンザワクチンの接種間隔は,4週間が最もよいとされています。その根拠を教えてください。

 原則的には,接種間隔は1〜4週間です。突然の流行に備えるために1週の間隔で接種ができるようになっています。通常のときには医学的な税拠から4週間隔で接種することが最適です。
 間隔が7日以内,8〜14日,15〜21日,22〜28日,29日以上であった小・中学校264校5,331学級の調査で,間隔が22日以上の接種が学級閉鎖は最も少なく,他に抗体産生やその持続もよいことなどから,接種間隔は免疫効果を考慮して4週間あけることが望ましいことになっています。
   薩田清明他:日本医事新報、3158.43,1984.

Q3 ワクチンを1回だけ接種した場合の効果を教えて下さい。 

 接種が何かの都合で1回の場合があります。抗原変異の程度が少ない場合では1回でもかなりよく抗体は上昇しますが,2回の接種でさらに上昇します。
 接種後の罹患率に関する調査では,2回の接種群の罹患率は1回接種群のそれよりもかなり低く,また,罹患によって生ずる発熱などの症状にも差が出ています。他の調査でも,インフルエンザ流行時の学童の欠席率にも差が出ています。1回だけでは,効果が十分ではありません。
   深谷汎他:日本医事新報、3473.22,1990.

Q4 ワクチン接種を受けた人から,かぜをひいてしまったといわれました。どのように説明をしたらよいでしょうか。     

            A ワクチン接種後のかぜ罹患がよく問題にされます。かぜ患者の中には,インフルエンザ以外の他のかぜ症状を示す類似疾患の患者が多数含まれています。区別するには臨床的な診断に加えて、ウイルス学的検査、血清学的検査などを合わせて行う必要があります。かぜは多種類のウイルスによって起きています。
 ワクチン接種を受けた人であっても,ときにインフルエンザに罹患することがありますが,ワクチンの効果は約80%と言われています。流行後の罹患状況調査において、他のかぜによるものがワクチン接種者で56〜88%,非接種者で31〜63%というような報告があります。ワクチン接種を受けた人は他のかぜに罹患している可能性が高いにもかかわらず,インフルエンザに罹患したような誤解がなされています。科学的な説明を十分にして,理解を得る必要があります。
   加地正郎:臨淋と研究,64、136、1987.

Q5 ワクチンを毎年連続して接種する理由を教えて下さい。

    A

 インフルエンザウイルスは毎年変わりながら流行しますので,前の年に受けたから次の年のワクチン接種は必要ないということにはなりません。2年連続の接種と1年だけの接種では,罹患防止の有効率は2年連続接種が2倍以上も高くなっていますので,連続接種が必要です。
   辻野芳郎他:日本公衆衛生雑誌、38特別付録、839,1991.

Q6 高校生へのワクチン接種は必要でしょうか。  

 高枚生の罹患率は5〜14歳のそれと比べて1/5程度ですが,まだまだ罹患年齢です。大学受験の機会もありますので,予防接種をおすすめします。

Q7 ウイルスの変異とワクチンの効果について教えてください。

 インフルエンザウイルスはその抗原性をしばしば変化させています。この抗原変異には軽微な変異(連続変異)と10〜20年ごとに1回大きく変わる変異(不連続変異)とがあります。
 不運続変異ではウイルスが新型のものになりますので,古い型のワクチンでは効果が期待できません。
 また,同一シーズンの流行で分離されたウイルスであっても,前の年のウイルスと似ていないときがあります。よく似ている場合にはワクチンは有効ですが,似ていない場合にはワクチンの効果は低下します。
流行予測が確立している現在では,ワクチン株は流行株とよく合致して,効果に十分期待がもてます。
   加地正郎他:臨床と研究,68,3006、1991.

Q8 インフルエンザワクチンの予防接種の効果はあるのでしょうか 

 すべての予防接種は個人防衛の理論のうえに成り立っています。インフルエンザも同様で,一人ひとりがワクチンの接種を受けてインフルエンザの罹患を防止し,集団内へのインフルエンザの侵入を阻止することによって,社会防衛の役割が期待されます。
 ワクチンの効果は,罹患を防止し,あるいは症状を軽減化します。ワクチンが効かないからと考えて接種を受けないと,インフルエンザに罹患して,学校を休まなければならなくなったり、入学試験を受けることができなくなるような事態になります。また,最近の流行では,神経合併症や死亡例が発生しています。
 ワクチンはこのよう不幸な事態を避けるのに立派に役立っています。接種率が低下しますと,インフルエンザの流行状況やウイルスのもつ病原性にもよりますが,場合によっては大きな社会的被害が発生することがありますので,できるだけ多くの人が接種を受けることが必要です。

Q9 不活化ワクチンでは局所の抗体が期待できるでしょうか 

 インフルエンザは呼吸器系粘膜を侵入口として,局所の感染が全身性の症状に進行しますので,不活化ワクチンの皮下接種では局所の分泌型IgA抗体や細胞障害性丁細胞の誘導が期待できないという指摘があります。不活化ワクチンの接種によって血液中の抗体価を高めれば,IgG抗体の局所への分泌による予防効果が期待できます。
   加地正郎他:臨床と研究,68,3006,1991.

Q10 インフルエンザワクチンの免疫の持続は,どうでしょうか。 

 現在のワクチンは,残念ながら抗体の持続に関しましては,そう長くありません。注射後2週間できき始め,およそ5カ月ほどといわれています。一般的には,インフルエンザの流行のピークは年を越した2月前後にずれることが多いので,予防接種が早めに完了していますと,流行の際に抗体価が低下してしまう可能性があります。大切なことは4週間隔で2回的確に予防接種を行いますと,その効果は十分に発揮されます。

Q11 流行株の型(例えば,ソ連型、香港型)について教えて下さい。 

 ヒトのインフルエンザウイルスはA型,B型およびC型に大別され,さらにA型はHINl型,H2N2型およびH3N2型というような亜型に分類されています。現在のHINl型はソ連型とも呼ばれて,昭和52年から流行を繰り返しています。また,H3N2型は香港型ともいわれて,昭和43年から流行を続けています。
 現在は,ソ連型,香港型及びB型の3種類株による複雑な流行様式をみせています。

Q12 高齢者がインフル工ンザで死亡するとの報道が見受けられます。欧米では老人に対する接種が一般に行われておりますが,効果はどうでしょうか。

 欧米では,インフルエンザワクチンによる老人の入院や死亡の防止効果は70〜90%であることが証明され,ワクチン接種による医療費のコスト削減効果も報告されています。
   Nicohol,et al,N.Engl.J.Med,331:778〜784,1994.

Q13 新型インフル工ンザとその対応について教えて下さい。  

 新型インフルエンザの流行(汎流行)とは,1918年に大流行したスペインかぜのインフルエンザウイルスや1957年に大流行したアジアかぜのインフルエンザウイルスの再来,あるいは,トリのインフルエンザウイルスが直接ヒトの世界に飛び込んできて大流行を起こすことを指します。インフルエンザを積極的に予防する唯一効果釣な方法は,予防接種です。高齢者,基礎疾患のある人がインフルエンザ予防接種の対象として,強調されていますが,過去の新型登場の際には,多くの若年層が犠牲となりました。ワクチンの対象者は、老若男女、有病者、健康者のすべてですが、新型登場に備え厚生省で対策が検討されています。