「母の日記」


ポンキッキーズという番組でたまに流れる曲に「まちがえないでおくんなさい」

という、落語にメロディーをつけたような歌がある。江戸っ子のような威勢の良

さで、「わがままなのはあたしじゃないの 言ったオトナが筋とおせ!」という

、子供の立場に立って親を皮肉る内容の歌詞なのだが、あまりにリアルで最初に

それを聴いたときは運転しながら大笑いをしてしまったものだ。小気味よいリズ

ムと威勢の良さが気に入って、今では娘と毎日のように車中で聴いている。そし

てそれを聴く度に、「子供はよく見てるぞ」と自分に言い聞かせている。娘も年

頃になり(といってもまだ4才)、長い髪が女の子らしいと、このクソ暑いのに

頑張ってのばしていたのだが、ある日幼稚園からシラミをいただいてきてしま

った。戦中戦後の昔話としてしか聞いたことのない「シラミ」退治のために、病

院に通って殺虫剤のような臭いのする薬をつけてもらったり、朝晩の洗髪、寝具

やタオルを毎日洗濯と、約1週間に渡り、家族で大騒ぎをした。このシラミ騒動

で、すっかり長い髪への挑戦を諦めてしまった娘の髪を、「今がチャンス」とば

かりに、ショートカットにしてもらった。思いのほか短くなってしまった自分の

髪を見て、ちょっぴりご機嫌斜めの娘に、「今の方が似合ってる。ユキは短い方

がかわいいんだよ。」「ほら、涼しくていいでしょ。」「髪も乾きやすいしね」

と、自信をつけさせるためにさんざんほめあげた。 髪を切った翌日の夕飯にワ

カメのみそ汁をだした。なかなか箸をつけない娘に「ワカメ食べたら髪がすぐの

びてくるんだよ。だからいっぱい食べてね」と言ったら、すかさず娘に「でも、

ユキは髪が短い方がかわいいんだからのびない方がいいんだよー」と澄まし顔で

反撃された。やられた。その日、娘の汁碗にワカメがべったり張り付いていたの

は言うまでもない。

エッセイ:P

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