DOCTOR

 田舎の景色を残しつつ 多少 活気のある町に病院があった。
その町に一件しかないので 町の人達に頼りにされていた。
専門は 内科なのだが 最近は患者の悩みを聞くという カウンセリングような事も始めていた。
そのため 寝る暇が無いぐらい 忙しかった。
仕事をしている人にとって 忙しいのは 何よりのやりがいになるのだが やっかいな病気も増えてきている。
厄介な病気とは 登校拒否や若者の自殺などの心の病気だ。
心の病気は 決まった解決法が無いので 始めたばかりのカウンセリングとして また 患者にとって 難しい病気だ。
しかし この事は 医者にとって新しい研究材料になるので、楽しみなところであった。
先日も 今までに会った事のない病気の患者が来た。

「先生 よろしいですか?」
「あぁ、いいよ」
「次の方 どうぞ」
「失礼します」
「どうぞ 椅子に座って ラクにしてください」
患者は 19歳で学生だ。
とくに 顔色は悪くなかったので 身辺の相談 例えば 友人関係の相談だと医者は思っていた。
しかし この患者は医者の予想とは違っていた。
「今日は どうしたのですか?」
「最近 物忘れがひどくて・・・」
一瞬 医者は驚いたが 話し返した。
「いや〜 私にだって 物忘れはありますよ 誰にだってある事なんですよ
 それほど 気にすることではありません それで どれくらい ひどいのですか?」
「はい? 何の話ですか?」
少しも 医者は話ができなかった。

 その患者は 大きな病院で治療しているが まだ 治らなかった。
他の病院でも こういった相談が後をたたないそうだ。
「大変な世の中になったものだ・・・」
「そのせいで ここ1ヶ月ぐっすり眠ったこともない・・・」
「先生 もう診察終了時間ですよ」
「あっ もうこんな時間か 君 もう帰っていいよ」
「では お先に失礼します」
「ごくろうさま」

看護婦が診察室から出ると 別の先生と出会った。
「先生 あの患者さん まだ 治らないのですか?」
「あの患者さんか・・・ 相変わらず 自分の事を医者だと思っているのだからな」
「本当に 大変な病気ですよね」
「まったくな・・・」



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