小説に書き直したバージョン
Xの冒険
一、
採炭所
薄暗い地下。壁面に巨大な螺旋階段。中央に下げられた看板には今日の採炭量と目標の採炭量が書かれている。石炭を運ぶトロッコのレールがついており、地下では何人もの青色の肌をした男達がトロッコに石炭を詰めている。トロッコを運ぶのは青色の肌をした女である。二人で一組である。見張りの赤い肌の男が所々に立っており、それぞれが鞭、棍棒などを持っている。青色の人間の服装はみなボロキレである。青色の肌の男の一人が見張りの眼を盗んで隣の男に話しかける。
B:今どれぐらい仕事が終わったんだ?
A:(看板を見ながら)う〜ん、多分あとトロッコ1〜2個だよ。
B:(手を休めながら)ああ、さっさと終わってpでも食べたいなぁ。今日は待ちに待った給料日だからな。3個は食べるぞ。
A:サボってるところを見つけられると、また叩かれるから早くやった方がいいよ。
B:ハッ!大体なんで俺達だけがこんなことしなくちゃならないんだ?上の発電所の電気なんて全部Yって奴らが使ってて、俺達には全然関係ないんだろ?
A:そりゃそうだけど……シッ!!Gがずっとこっちを見てるよ。
B:あいつは俺のこと眼の敵にしてるからな。あいつが青色だったらぶっ殺してやるんだが。
(赤色の肌の見張りG、A、B、に棍棒をもって近づいてくる。)
B:どうかしましたか?Gさん。
G:ふん、俺の名前を覚える暇があったらさっさと手を動かすんだな。(鞭でBの背中を思い切り打ち、立ち去る。)
A:大丈夫? B:(顔をしかめながら)大丈夫なわけないだろ。骨が折れちゃったよ。ったく、白色のYもだけど赤色のZもみんな最低だ。
A:そんなこと言える元気があるなら大丈夫だね。
(青色の肌をした女が螺旋階段を降りて来る。)
女:あの、もうこれ運んで行ってもいいですか?
A、Bの心の中:(ワォ!めちゃめちゃ美人!)
A:ちょっと待ってて。もうちょっとで満杯になるから。
B:もう運んでいいよ。重たいだろ?
女:お気持ちはありがたいんですが、満杯になってないと上で怒られちゃうんで・・・。
B:そうかい、そりゃひどいね。じゃ、今こいつが満杯まで入れるから、ちょっと話しようよ。
女:手伝ってあげなくていいんですか?
B:いいからいいから。で、君の名前は?
女:……Sです。
B:ふーん。いい名前だね。俺はB。Bっていうんだ。
Aの心の中:(まずいよ〜僕だけ置いてかれちゃってる〜。)
A:ちょっとさ〜Bもやってってさっきから言ってるんだけど。
B:(頭をかきながら)あ、悪い悪い。でももう満杯じゃん。それじゃねS。
S:それじゃね。(Bを一瞥してからトロッコを運んで螺旋階段を登っていく。)
(A、B二人ともSが螺旋階段を登っていくのを見送る。Aが先に口を開く。)
A:まったく、今日のBはサボりすぎだよ。
B:……
A:ちょっとB、どうしたの?次のトロッコに石炭入れなくちゃ。
B:惚れた……。
A:え?
B:(Aの方に向き直り)俺、絶対あのSって女と仲良くなってみせるぜ。おい、A、聞いてるか?
A:うん……。
(笛の音が鳴る。)
A:あ、終わりだ。それじゃ、点呼に行こうか。
B:ふ〜ようやくpが食える〜。あれ高すぎだよな〜。
G:おーい、青い肌の奴全員集合〜!!
(下で作業していたX達、全員G達Zの前に整列する。)
G:それでは、お前達の給料を配るっ。番号一番から順番に取りに来い!
(X達の番号一、ゆっくりとGの前に出る。)
二、
発電所
採炭所の上部。採炭所の出口から発電所の出口までは十字路を一直線に渡るだけ。十字路の右手にはX用医務室がある。X達はGを先頭にするZに連れて行かれ、十字路を直進しようとする。
B:(医務室を見ながらAに小声で)な、ここの医務室でさ、仮病使えないか?
A:……無理だと思うよ?ここに連れてかれるのは、大怪我した人だけだもん。
B:そっか。ま、いいんだ。仕事に出ないとSに会えないからなっ。
A:……そうだね。そういえば、今日はpを3個は食べるんでしょ?
B:いや、3個買うけど、二つはSに渡そうと思ってる。
A:……(無言)
(GはX達を発電所の外に追い出す。)
三、
ファーストフード店aaa
発電所にはファーストフード店がある。これは発電所の入り口とは別である。場所は発電所を出て、右側。宣伝の張り紙「今、Yの方々に大好評のp!品切れ続出中です。」
A:はぁ〜、ようやく終わったね〜。
B:よし、p買いに行くぞ〜!
A:でもさ、あそこの店員って感じ悪いよね。
B:Yの奴らなんて皆あんなもんさ。
A:・・・そうなのかな?
(二人、走ってファーストフード店aaaまで行く。)
A、B:p、五個下さい。(二人でお金を置く。)
Yの店員:……。(いかにも不機嫌そうに、金を取ってからpを渡す。)
(A、B店から出る。)
Yの店員:(自分の緑色の肌を眺めながら)……
あんな奴らに売ってやることはないんだ。仮にも俺はYだぞ。あんな下等な奴らとは違うんだ。ああ、Yの中でも、巨万の富に囲まれる男もいれば、俺みたいにXなんかと仲良くしなくちゃいけない男もいるってことか。運が悪かった。あいつらほどじゃないけどな。(拳でカウンターを叩いて、奥の「厨房」の看板がかかっているドアを開け、中に入っていく。なかでは奇妙な機械音がしている。)
四、
宿舎 食堂
発電所の敷地内にはX達の宿舎がある。発電所の周りは鉄条網で囲まれ、Xは外に出ることができない。食堂は男女の隔てはないが、寝る場所は別々である。また、逃亡を防ぐためにこの宿舎にも見張りが巡回してくる。A、B、外から食堂に入ってくる。食堂では、Sが一人で簡素なX用の宿舎の食事を取っている。
B:(Aからpの入った袋を奪い、追い払って)今晩はS。久しぶりだね。
S:さっき会ったばっかりじゃない?
B:君の美しさに惚れこんでしまって長く感じたんだよ。
S:フフッ、何を言ってるの?
B:(pを袋ごと渡して)これを君に。そんなものよりずっといいよ?
A:(ちょっとちょっと。僕の分は?)
S:(笑いながら)ありがとう。でも、いいの?(Aの方を見ながら)彼……
B:いいって。全然気にしないで。なぁ、いいよな〜A?
A:(Sの方を見て)ど、ドウゾ召し上がってください!!
S:Aさんっていうの。よろしくね。pありがとう。Aさん。
B:二人のプレゼントさ。もし僕たちがこんなところに収容されてなかったら、もっとましなプレゼントを買ってくるんだけどね。
A:(……そんなこと言ってもどうにもなんなくない?)
S:(話題を変えようとして)私達が収容されたことは、やっぱりおかしなことだと思う?
B:そりゃおかしいさ。理屈抜きでいきなりこんなとこに連れてきて、周りは鉄条網で囲んでるし。俺らはブタか?って思うんだよね。昔が懐かしいよ。「あぁ、昨日を呼び戻せ、時よ戻れ。」
(見回りのGともう一人Zが入ってくるが二人は気づかない。)
B:ホントにさ、俺はそのうちここを脱走するつもりだよ……全くやってられないね。
(G、Bに近づいてきて、棍棒で何度も力いっぱい叩きつつける。)
S:キャー!
(B、倒れる。あちこちから血が出る。)
G:貴様、脱走するだと!みていろ。そんなにここから出たきゃ、天国に送ってやるよ!ほら、こうして、こうして!!(G、足でBを踏みつける)
もう一人のZ:ま〜ま〜、そんなにやったら死んじゃいますよ。それに、逃亡の話をしただけで殺しちゃうのはまずいんじゃないですか?D所長はXを殺すのに反対してるんですよ。ここは私が話をして説得しておきますから、Gさんはちょっと外に出てて下さい。(Gを食堂から外に押し出していく。)
G:ふん、こいつらに生きる価値なんてあるもんか!!
(Gを外に追い出してから男が戻ってくる。)
男:大丈夫かい?君も大変なこと考えてる男だな。……ちょっと二人だけで話せないかな?
(二人、部屋の奥の片隅に移動する。B、怯えた眼で相手を見つめる。)
男:私の名前は知らないよね。私の名前はE。以後よろしく。君の名前は?
B:Bです。あの……俺、これからどうなるんでしょうか。
E:どうもなりはしないさ。G達みたいな気の立ってる見張りは、私が押さえておくから心配する必要はないよ。ま、彼らも脱走されたんじゃ顔が立たないからあんな態度を取らざるを得ないんだ。許してやってくれ。
B:Eさんも同じ見張り役ですよね?Eさんは、どうしてあいつ…いや、彼らみたいにならなかったんですか?
E:さぁね。(呟くように)少なくとも私の方が寄り罪深い人間であることは確かだが。(声を落として)さっそく本題に入るが、君がさっき言っていた脱走の話、本気かい?(Bの顔色で意思を確認して)……実は、私も今の管理体制には不満を持っていてね。私は、君のように今の現状を打破する可能性を持っているXの人達を逃がしたいと考えてるんだ。君たちが、いつも行きと帰りに見ている医務室があるね?その中の第六医務室には外に通じる排水溝がある。そこから外に出ることができる。今、外では私が逃がしたX達がYに反旗を翻すために集落を作っているんだ。……時期が来たら連絡する。君に脱走の考えがあるのがGにわかってしまった以上、早い方がいいから、二、三日以内になるだろう。それまでに覚悟を決めておいてくれ。まだ他にも君のような考えを持っている人達がいるのなら、彼らも誘ってくれ。といっても、君達には友達を作る暇さえないぐらい働き詰めにされてるようだけどね。それじゃ。(E、立ち去る)
(B、AとSを呼び寄せる)
B:(Eと同じようにささやき声で)おい、俺達、ここから出られるんだってよ!水槽に入れられた金魚のように死んでくのかと思ってたけど、大海原に出れるんだぜ!
A:(笑いながら)金魚は海に出たら死んじゃうよ。
S:(笑顔で二人を見渡しながら。)そうよねー。
B:そんなことわかってるよ、S。A、お前も余計なこと言うな。とにかく俺達はあと何日かでここを出られるんだ。もし俺が外に出てみろ。まさしく水を得た魚の如し、世界中を所狭しと駆け回り、Yの奴らをギッタンギッタンにしてやるんだ。そうしてXが支配者になるのさ。
S:私はそれぞれの種族が平和に暮らせればそれでいいと思うけど。
A:ていうかまた魚?
B:魚で悪いか?そうでなければなんだ?『青色の肌に空の青が合わさったごとく』?うーん、今一つだな。
S:そうね。やっぱり魚よね。それも海の魚よ。
B:ほら、やっぱりSも同じ考えしてくれてるよ。
A:(Sの方を見ながら)そっ、そうですね。
S:もう、何で私と話すときはどもるわけ?
B:(急に気取った顔で)それはですねSさん、あなたが美しすぎるからですよ。……ふっ、キマッタな。
A:(顔を赤くして)ちっ、違うよ。
S:なーに、じゃアタシがブスだってわけ?
A:(手を振りながら)そんなことないですよ。
B:お、直ったじゃん。ハハ。
S:(壁にかかった時計を見ながら)あ、もうこんな時間。もう寝ないと明日の仕事に間に合わないわ。
A:そうだね。あと何日か。最後に真面目に働きますか。
B:俺はやりたくないけどね。
S:(立ち上がって女性用の寝室に入っていく。)それじゃ。Bさん、Aさん、さようなら。
A:さようなら。
B:それじゃ。明日3人脱出するって言っておくよ。
五、
第六医務室=厨房
第六医務室にある二つのドアのうち、一つは発電所ロビー、もう一つは例のファーストフード店につながっている。
ここには怪しげなカプセルがたくさん置いてあるが、動いているのは一つも無い。それぞれのカプセルの下にはベルトコンベアーがついている。
しかし、何個かにはXが入っている。彼は透明な容器を手で幾度も叩いている。『厨房』の中で二人が会話している。一人はE、もう一人は白衣を着たガリガリのYの一人である。
白衣を着た男:最近、ここに連れてくる人数が減ったような気がするが。
E:申し訳ございません。Dさん。
F:『申し訳ございません。』で済むか!この店に保管してある在庫も底を尽き始めてる。そろそろ次のXを補充する必要がある。あいつらは2、3日飯を食わなくても死にはしない。さっさと次のEを補充して来い。この能無しが。
E:お言葉ですが、もはや次の補充は時間の問題です。しかも、2、3人同時に補充できるかと。
F:ほう。いつもそれぐらいの働きをみせてもらいたいものだな。
(ファーストフード店の店員がドアから入ってくる。ドアは開け放したままである)
F:ドアを閉めろ!!あいつらに見られたらどうするんだ!
(店員、あわててドアを閉める。)
店員:申し訳ございません!……それで、そろそろ店にあるpを補充したいんですが……。
F:また『申し訳ございません。』か。お前ら、それで事足りると思っているんだな?それで何事も許されると?……まぁいい、(カプセルを人一倍強く叩いているXをにらんで)えぇい、うるさい!(カプセル下についている赤いスイッチを押す)
(ウィィィン、カプセルに不透明のカヴァーがかけられ、機械音がする。ギャー!!……カヴァーがとれるとXの姿は消えている、ベルトコンベアーで三人の前まで何十個ものpが運ばれて来る。D、それを指さして言う。)
F:さぁ、好きなだけ持っていけ。Eの仕事は順調のようだからな!
店員:有難うございます。それにしても、Dさんはホント天才ですね。あんなクズ達を利用してこんなおいしいものを作り出すなんて。
F:まぁな。Dの奴はここをただの収容所だと思っていて、自分がここで一番偉い人間だと勘違いしているのだろう。そんなことはありえんのだ。ZがYを差し置いて上に立つなどということはな。Zは他のどの種よりも優れているし、美しい。他の人間なんてZを補完するために存在しているに過ぎん。
E:(顔が曇る。)
F:確かに、しかし、上の人間は了承済みだよ。Xの中で、脱走や反乱を企てようとする者、大怪我をして直すのに時間と金がかかる者。これらは存在そのものが悪だ。これらを排除して従順な者を育成する。この『ビジネス』を全面的に保障してくれるとまで言ってくれたよ。近く、Yの大都市にもう一軒店を出すつもりだ。
E:それの『材料』はどうするのですか?
F:ここから補充するさ。E君、今まで以上の活躍を頼むよ。ハハハッ。
店員:ハハハッ。
E:……御期待に沿えるよう頑張ります。(勢いよく礼をして医務室からロビーに出る。顔色は相変わらず冴えない)
F:ほらほら、お前も早く店に戻れ。新しい『商品』の開発中なんだ。
店員:それじゃ、失礼しますね。
(ギィー、バタン。Fは一人でカプセルを見回す。)
六、
二日後の炭鉱
A:それで、今日の何時ごろなの?
B:午後4時32分。その時間になったら、Eが俺達とSを棍棒で殴り倒すんだとさ。
A:そんなことになったら死んじゃうよ!!
B:大丈夫だって。軽くやるらしいから。だから俺達は殴られる理由を作るために、その時間にEを罵倒するんだ。あの人は人格者で通ってるんだろ?そしたら俺達は殴られすぎてへたばったみたいな演技をして、第六医務室までEに連れてってもらい、そのままマンホールを使って逃走。中では以前脱出した奴らが迎えに来てくれてるんだってよ。
A:ふーん。じゃ、今は真面目に仕事していればいいんだね。
B:だからお前はバカなんだ。もういなくなるんだから働く必要もないわな。
(S、螺旋階段から降りてくる。)
S:……今は真面目に働いておいた方がいいわよ。
B:うわっ、聞いてたのかよ!!
S:Gの奴、今日は特に機嫌が悪いみたい。逃げる前に殺されちゃったらバカらしいじゃない?
B:ふっ、それが男の生き様さ……。
S:何言ってんのよ。とにかく、何も問題起こさないで頂戴ね。特にB。
B:俺が問題を起こすわけ無いさ。むしろAだろ?
A:ぼっ、僕は……。
S:Aが問題起こすわけ無いじゃない。……とにかく、みすみす無駄死にしないよう気をつけてね。
(Sトロッコを運んで立ち去る。Gが入れ違いに来る。)
B:(小声で)Sの心配の種が来ましたね〜。
G:何をぶつぶつ言ってるんだ。逃亡しようとしたことにして殴り殺しちまうぞ!
B:勘弁してくださいよ、真面目にやりますから。
G:ふん、嘘をつけ!(鞭で背中を叩いていなくなる。)
A:それにしても、あの人もホントしつこいね。
B:おい、『大丈夫か』って聞けよ!……背中から血が出てないか?畜生、今に見てろってんだ。
A:うん……。
七、
午後4時30分
いよいよ決行の時間である。Sがトロッコを二人のところに取りに来ており、Eが3人のところに棍棒を持って近づいてくる。
S:おい、お前ら何サボってやがる!
B:は?真面目にやってますよ〜、頭大丈夫?
S&A:ハハハハハッ。
B:このおっさん、変な肌してるくせしてなーに威張っちゃってんだろうね。
(S、無言でSの顔に棍棒を振り下ろす。全力である。B、鼻血を流して倒れる。)
B:……え?
(S、AとSにも棍棒を振り下ろす。二人ともあっという間に倒れる。)
G:おいおい、やりすぎるなって言ったのはお前だぞ。これじゃ死んじまう。虫の息じゃないか!
S:……医務室に運んでおきます。申し訳ありません。 八、 第六医務室part.2 (三人が運ばれてくる。)