《グラフ》 テレビ局の年間収入
NHKが、子会社を通じて通信事業に進出する方針を明らかにした。近く、特別第二種電気通信事業への登録を郵政省に申請する。
NHKは、衛星通信会社2社から国際通信回線を借りて海外に番組を配信している。この業務を子会社に移し、デジタル技術で生まれる電波領域の余りを、NHK以外のところに再販売するという。
NTTは、デジタル放送事業への参入を決めている。NHKが通信分野に乗り出すことで、放送と通信の融合に一層拍車がかかりそうだ。
しかし、ここで考えなければならない問題がある。子会社や関連会社を使ったNHKの巨大化、商業化である。
NHKは、良質な放送番組を全国どこにでも提供できるよう設立された非営利の特殊法人だ。その活動は私たちが払う受信料に支えられ、商業活動をすることは放送法で禁じられている。
1982年には放送法が一部改正されて、番組制作など、いくつかの業務に限ってNHKの出資が認められはした。
だが、それは、NHKが蓄積してきた技術や番組ソフトを社会に還元する窓口をつくることや、業務の外部委託で効率を上げることが目的だった。通信業務への出資は規定外のことである。
ではなぜ、通信業務に参入することができるのか。
新たに子会社をつくったり出資したりするときは郵政大臣の認可などが必要になるが、すでにある子会社や関連会社が事業を拡張することについては禁止規定がなく、大臣認可の手続きも必要ないからだ。
NHKの子会社や関連会社は「法の不備」を味方にふくらんだと言わざるを得ない。その数は公開されているだけで56社もある。子会社全体の年間収入は約2800億円で、日本テレビなど大手民放局と肩を並べるほどになっている。それなのに、それぞれの子会社が出資規定外のどんな業務をしているのか、収支がどうなっているのか、は十分に公開されていない。
英国の公共放送BBCは書籍、ビデオテープの販売など、業務を限定して商業活動を認められている。子会社はそれらの業務をする2つだけしかない。役員は全員BBC以外の出身だ。そのうえ外部監査を導入して、業務内容をチェックしている。
NHKの場合、子会社や関連会社は天下り先になっている。特殊法人のなかでは、子会社を次々つくり、仕事を分け合う日本道路公団の自己増殖ぶりが際立つが、NHKもそれに似たところがある。
報道機関でもあるNHKは、国の情報公開法の対象にならなかった。政治や行政からの不当な介入を招かないためにも、子会社や関連会社も含め、業務内容や収支を自ら明らかにする必要があろう。
多チャンネル時代を迎え、放送文化の質を保つ意味でも公共放送が果たす役割はますます重要になってくる。
NHKはどうあるべきか。基本に返っての議論を起こすべきときだと思う。
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