MARCH 30,1999

■衆院補選──くら替えにルールを

 やはり、道理がなければ、そうそう無理が通るものではない。

 きょう告示される衆院東京2区と同15区の補欠選挙に比例区選出議員がくら替え出馬しようとした問題のてんまつを見ると、そんな思いが浮かんでくる。

 どちらも、東京都知事選に現職議員が立候補したことに伴っておこなわれる。

 2区補選には自民党の深谷隆司氏、15区補選には自由党の東祥三氏が議員を辞職して、出馬しようとした。いったん地盤を固めれば、あとは楽になるといわれる小選挙区議員への執着がうかがわれた。

 2人ともぎりぎりまで出る構えを見せながら、最終的に出馬を断念した。

 衆院議員を辞めて衆院議員になるというのは、どう説明しても理屈が通らない。当然とはいえ、妥当な結論である。

 けれども、この決着をもろ手を挙げて歓迎するわけにはいかない。

 両氏が出馬しなかったからといって、今回のケースにひそむ問題点は何も解決されていないからだ。

 自民党は、東京2区補選への候補者擁立を見送った。次の総選挙で深谷氏が再び、小選挙区に挑戦することを見越し、空席にしておく措置とも受け取れる。転身をうかがう基本構造は変わっていない。

 深谷氏が出馬できなかったのは、党内事情によるところが大きかった。

 自民党は、都知事選に明石康氏を擁立しながら、柿沢弘治氏と石原慎太郎氏の立候補で苦しい戦いを強いられている。

 結果次第で執行部の責任論が浮上しかねず、深谷氏の総務会長辞任−補選出馬は、党内抗争の引き金になるとみた小渕恵三首相らが懸命に引き留めた。

 東氏も、期待していた自民党の選挙協力を得られるどころか、同党公認候補との対決が避けられない情勢となり、小沢一郎党首らの説得を受け入れた。ともに意欲は十分に持ちつつも、客観情勢に抗しきれずに断念したというのが真相だろう。

 今後も小選挙区議員が首長選に転出したり、任期中に死亡したりするケースは考えられる。比例区からのくら替えをめざす議員が出ても不思議ではない。

 そのたびに出馬の是非を議論するのは好ましくない。衆院議員を辞めて衆院議員になることは基本的に規制する方向で、ルールをつくる必要があると思う。

 議員を辞職して補選に出ることを、現行法は禁じていない。だが、大事なのは、議員の身分とは何か、ということだ。

 第一に、国会議員として選ばれた以上、原則として次の選挙まで議員としての任務を果たすのが国民に対する務めである。

 第二に、比例区議員には、小選挙区議員とは違う役割があるということである。政党名投票で当選した以上、政党の理念を代表し、実現させるという任務はより重い。重複立候補したとしても同じだ。

 比例区からの転身が横行すれば、議員の間の格差を広げ、比例区議員の本来の役割を損ないかねない。それは、民意を議席に忠実に反映させるという比例区そのものの存在価値の低下につながる。

 深谷氏や東氏の衆院補選への出馬問題をきっかけに、選挙制度全体の見直しを求める声が出ている。そこには、議論のすり替えがないだろうか。

 各党は議会制民主主義の根本を見据え、くら替え問題に的を絞って、法改正を含めたルールづくりを急ぐべきである。 asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は朝日新聞社に帰属します。
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