ダイオキシンの新しい耐容1日摂取量が、厚生省と環境庁の審議会の合同会議で、体重1キロあたり4ピコグラム(ピコは1兆分の1)と決まった。
これは、生涯にわたって毎日、からだの中に取り入れつづけても安全、という許容量である。ダイオキシンの削減対策を立てるうえでの土台とされる。
世界保健機関(WHO)は昨年、それまでの耐容摂取量10ピコグラムを改め、「1−4ピコグラム」とした。4ピコグラムを「当面の最大耐容摂取量」としたうえで、「目標は1ピコグラム未満」と説明している。
日本はその「最大量」の数値を耐容摂取量として採用する一方で、WHOの掲げた目標値は素通りしたことになる。
合同会議は、4ピコグラムを下回るダイオキシンで健康被害を引き起こした動物実験について「信頼性が不十分」などと否定しつつ、「一部で微細な影響が認められている」とも指摘している。
であればWHOの定める最大値を掲げるだけにとどまらず、併せて目標値も設定すべきではなかったのか。
いま日本での平均的な1日摂取量は2.6ピコグラムとされる。「大半の人が4ピコグラムの許容範囲に収まっている」との声が早くも政府内から聞こえてくる。
こんな有り様では、今回の決定が現状を是認するものと受け取られかねない。これを機に、政府のダイオキシン対策がゆるむようなことがあってはならない。
確かに4ピコグラムの新基準は、現在の10ピコグラムに比べれば、低くなる。
そこで政府がまず手をつけるべきは、廃棄物焼却場のダイオキシンの排出基準を厳しくすることである。2002年11月まで適用される、既設炉の暫定基準は甘すぎはしないか。
同時に、法律の網から漏れている小型焼却炉の規制も急がなければならない。
さらに焼却場の周辺などでは、ダイオキシンの摂取量が4ピコグラムを超えている可能性も否定できない。
その点で、環境基準の設定はますます重要である。それについて政府は、大気環境指針を改めたうえ、法律にもとづく環境基準に格上げする方針を示している。
この大気環境指針は、人の健康にとって望ましいダイオキシン摂取量を5ピコグラムと設定したうえではじき出している。現行の耐容摂取量の半分の数値である。
環境庁が別の物差しを設けたのは、10ピコグラムの耐容摂取量をもとにしたのでは対策が滞る、と判断したからだろう。
それならば、新たに環境基準を設けるにあたっても、4ピコグラムにとらわれる必要はないはずだ。たとえば、WHOで目標とされた「1ピコグラム未満」にもとづいて、大気や水質の環境基準を設定してもよいのではないか。
今回の決定は、母乳を飲む乳児のダイオキシン摂取量にも触れている。成人とは比べものにならないほど多いが、決定に当たっては、乳児期に限定された一時的なもの、と片づけられたようだ。
育児をめぐる母親の不安を考慮するなら、よりきめ細かい助言が必要だろう。母乳中のダイオキシン濃度は減り続けている、といわれるだけで安心はできまい。
研究が進むにつれ、新たな危険性が判明するのがダイオキシンである。先回りしすぎるぐらいの対策でなければ、未来に禍根を残す。
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