JUNE 28,1999

■ネット社会――消費者を守る仕組みを

 インターネットが家庭にもじわじわと広がりだした。

 「ようやく」と喜ぶ人、「うちもそろそろ」とあせる人、不安を持つ人、不快になる人。受け止めはさまざまだろう。

 郵政省の1999年版「通信に関する現状報告」(通信白書)は、インターネットの急速な普及ぶりを紹介している。

 昨年度末で使う世帯は1割を超え、ネットを利用した個人向けの買い物の総額は、前年の倍の1600億円あまりになった。

 それだけに、安心して使える環境の整備を急ぐ必要がある。

 技術にうとい素人が何げなく使っても損をしたり、困ったりしない。そうでなければ、うっかり買い物などできない。

 「無法地帯」とも言われるネット空間のルールづくりで一番大切なのは、消費者の権利を保護することである。

 もともとインターネットは、非営利の実験的なネットワークだった。はじめは米国防総省、のちに全米科学財団の研究者たちが、自分たちが情報をやりとりするのに都合のいいシステムをつくっていった。

 このため、研究者の間だからこそ通用する独特の価値観が染みついている。

 例えば、悪いことをする人はいないはずだ、という性善説。だれがどう使ったかを記録しようという発想はない。悪いことができないようにする工夫も乏しい。

 研究には通常、納期も締め切りもない。そのせいか、送った情報がきちんと届かなくても仕方がないと思いがちだ。混雑していたら待つ。届かなかったら送り直す。

 こうしてできたのが、管理者も見張りもいない自由なネット世界だった。研究者たちは、この仮想世界を「しつけのよい無政府状態」と誇らしげに呼んだ。

 いまや、「しつけの悪い人」も入り込んできた。「しつけの悪い無政府状態」では、ふつうの人は怖くて近づけない。

 第1に重要なのは、大切なデータが他人に盗まれずに目的の人に届くことだ。

 クレジットカードの番号を送るとき、だれかが盗み見て、それを使って勝手に買い物されるようでは困る。

 こういう弊害を防ぐのが暗号である。その技術は急速に進歩している。ところが、それを支える制度が追いついていない。

 見知らぬ者同士が暗号を利用して通信するには、「この暗号を送るのは確かにAさんだ」ということを証明する第三者機関が必要だ。欧米諸国では、こうした電子認証をする機関を制度化し始めている。

 日本では、ようやく郵政省が報告書をまとめたばかりだ。

 第2に、商品の売買につきもののトラブルから消費者を守る仕組みが不可欠だ。

 ネット上では、他人への「なりすまし」や、データを改ざんしてしらばくれる「すっとぼけ」、販売者の「くも隠れ」など、さまざまな事態が予想される。

 被害者が泣き寝入りせざるを得ないような事態は極力防がなければならない。

 第3に、インターネットの利用料金はできるだけ安くするのが望ましい。

 自宅から利用するには、接続事業者(プロバイダー)への料金に加えて、電話料金も払わなければならない。決まった料金で電話が使い放題になる定額制などを早く導入すべきだろう。

 消費者は素人だ。企業や行政などの専門家が消費者の立場に立って考えなければ、安心できるネット社会はつくれない。


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