地球の温暖化を引き起こす二酸化炭素(CO2)の排出量が、1997年度の調査で、前年度に比べて0.4%減った。
記録的な冷夏だった93年度を除くと、最近はずっと増え続けていた。温暖化を加速していたのが、わずかながら緩める方向に転じたことになる。
だが、喜んでいるわけにはいかない。不況の影響に加え、原発が新たに稼働し、発電比率が高くなったのが、大きな理由とみられるからである。
減少したといっても、90年度に比べると、97年度の排出量は9.4%増えている。メタンや代替フロンなどを加えた温室効果ガス全体では8.5%の伸びだ。
温暖化防止の京都会議で、日本は2008−12年に90年に比べ、温室効果ガスを6%減らすと約束した。現在の排出量からみると、十数%も減らさなければならない。小手先の対策では実現できない。
排出量の調査結果と合わせ、政府は今後の温暖化対策を公表した。すでに改正した省エネ法のほかには、削減に直接つながりそうな対策はほとんど見当たらない。
CO2排出量の40%を占める産業界に対しては、相変わらず自主的な削減計画にまかせるのが基本となっている。
今回の調査で気になるのは、産業や家庭などの各部門が減っているのに、運輸部門だけが増え続けていることである。燃費の悪い大きな自動車が増えたり、貨物輸送でトラックの比率が増加したりしたことが原因になったようだ。
90年度と比べると、運輸部門の排出量は21.3%も増えている。車に頼りすぎる社会構造を改めない限り、京都会議の目標を達成することは難しい。
ここでも、政府の対策は生ぬるい。鉄道や路面電車の整備がうたわれているが、多くは従来の計画の延長にすぎない。
あきれるのは、交通渋滞をやわらげるために道路を建設する、トラックの大型化に対応して橋を補強する、など公共事業計画が堂々と温暖化対策に組み込まれていることだ。
その一方で、車の燃費によって税金に差をつける方策については、導入するかどうかあいまいなままである。
CO2は日々の生活や経済活動から生じる。排出量を減らすには、規制に頼る手法だけでは限界がある。税制の活用など経済的な手法をもっと重視すべきだろう。
燃費の良しあしに応じて車に税金をかけるのは第一歩だ。さらに進めて、石油や石炭などの化石燃料に幅広く炭素税をかける必要があると思う。
その税収は太陽光や風力の発電を広げることなどに使える。そうすれば、政府が掲げる「新エネルギーの加速的導入」も夢ではなくなる。
運輸部門とは対照的に、家庭からの排出量は減っている。不況で節約が促されたのと同時に、無駄をなくし、環境を考えた生活をしようという人々が増えてきた面もあるのではないか。
暮らしの中で、温暖化を防ぐ工夫の余地はいくらでもある。ものを買う側の意識が変われば、企業側も環境に目配りした商品づくりをせざるをえなくなる。
多くの人が温暖化に関心を持つ。エネルギーを使わない方向へ政策的に誘導する。その二つがそろってこそ、CO2の排出を着実に減らせる。
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