自民、自由、公明3党は、連立政権発足にあたって「消費税を福祉目的税に改め、社会保障経費の財源にあてる」ことで合意した。
高齢化の進展で、社会保障費用が増えていくことは避けられない。消費税はそれをまかなうためにも大切な財源である。
だれもが受益者になる高齢社会に必要な公的な費用は、主として消費税に求めていかざるを得ないと考えるからだ。
しかし、今回の合意には疑問がある。理念も中身もあいまいで、このままでは「福祉」を旗印に、安易な税率引き上げが行われかねない。
堺屋太一経企庁長官は「消費税が引き上げられると決まったわけではない」と語った。だが、この種の合意は、どちらとも読める余地を残しつつ、政権がめざす方向をにじませる証文として使われてきた。
今度の政権は、1年以内にある総選挙を勝ち抜くことを主眼に置いている。
一方で、基礎年金の国庫負担割合を3分の1から2分の1に引き上げるための財源は消費税しかない、という判断がある。
税率引き上げについて、有権者向けには否定もできる表現とし、選挙後に改定に踏み切った場合も公約違反と責められないよう伏線を敷いた合意ではないか。
そうだとすれば、いかにも姑息(こそく)だ。
消費税で社会保障の支出をまかなう、そのために税率を上げたいというのなら、将来の社会保障費の伸びとそれに必要な税率、目的税化の方法と実施時期などを明確に示して、次の総選挙で国民の判断を求めるのが筋であろう。
そもそも消費税を福祉目的税とすること自体、その長所と短所をよく吟味しなければならない。
長所としては、他の税と比べて景気変動の影響が小さいため、より安定した財源が確保できること、税率の見直しを国民に説明しやすいことなどが挙げられよう。
短所は、年金、介護、高齢者医療の費用は確実に増えていくので、税率引き上げが繰り返される恐れがあることである。
思うように引き上げられなければ、年金の支給水準や医療、介護のサービス水準の切り下げに向かいかねない。
消費税を目的税に改めても、一般財源から名前をかえるだけでは、福祉の増進には何ら役立たない。
基礎年金、高齢者医療、介護の費用は、厚生省の推計で2005年には40兆円前後になると予測される。
3党は、その費用の2分の1を公費負担とすることで合意した。消費税にすれば、税率は10%前後になるだろう。
消費税の導入以来、国民は徐々にではあるが、税の使い道や政治の有り様に敏感になっている。
その税率引き上げには、十分に民意を聴き、広範な合意を形成する手続きが欠かせまい。
税率を強引にアップし、しかも必要な引き上げ幅が確保できなかったという理由で社会保障のサービス水準が切り下げられるようでは、政治不信は増幅する。
これからの日本が消費税に頼る度合いを高めていくのはやむを得ない。だからこそ、公共事業の見直しや行政改革の徹底など、国の歳出の合理化が不可欠だ。益税などの欠陥の是正もはかどっていない。
そうした問題の解決が、消費税率の引き上げより先ではないか。
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