DECEMBER 12,1999

■公園のママへ――自分らしく生きて

 東京都文京区で起きた春奈ちゃん殺害事件は、幼い子を持つお母さんたちに大きな衝撃を与えています。

 容疑者の主婦が語ったという、「心のぶつかりあい」や「仲良く見られなければならない義務感」に、自分の体験と響きあう部分を感じるからでしょう。

 事件をきっかけにお母さんたちは、メディアを通して、せきを切ったように育児のつらさ、なかでも母親同士のつきあいのむずかしさを訴え始めています。

 大人全体で子どもたちを見守っていた地域社会が変容し、格好の遊び場である自然も周囲から消えて、母親たちに過重な負担がかかっているのは明らかです。

 お母さんたちのつらい気持ちはわかります。でも、あえて、一人ひとりに考えてほしいことがあります。

 保育時間が短いせいか、幼稚園へ子どもを送り出したあと、連れだって近くのファミリーレストランなどでおしゃべりする機会が多いようです。

 公園で子どもたちを遊ばせながら、7、8人のお母さんたちが話に夢中になっているのもよく見る光景です。

 そこで情報交換ができたり、ストレスを発散したりできるならいいのです。

 けれども、つきあいを負担に思いながら、やめられないでいるお母さんが少なくないようです。

 なぜですか? 仲間はずれになるのが怖いからですか?

 グループのみんなの反感を買わないように、服装や髪形、持ち物にまで気を配り、表面的にはうまくやっていく。

 子どもたちがけんかを始めると、相手のお母さんとの間に波風を立てまいと、理由も問わずに自分の子どもをしかる。

 ときには、親同士のいじめに似た出来事もあると聞きます。そんな親たちの姿から、子どもは何を学ぶでしょうか。

 自分らしく過ごせないなら、グループを抜けてはどうでしょう。別の公園へ出かけてもいいし、子どもと2人で好きな場所に行ってもいい。現実の問題として可能なら、引っ越したってかまわない。

 発想をちょっと変えるだけで、新しい世界が開けることもあるはずです。

 ボランティアや働きに出ることが、貴重な出会いをもたらすかもしれません。インターネットで友だちをみつけることも、若いお母さんなら難しくないでしょう。

 みんなと同じでなくてもいい、と腹を決めること。勇気を出して、自分の考えを少しずつでも伝えていくこと。それが大人としての個人の責任だと思います。

 男性の側にもいいたい。専業主婦のお母さんが、ありのままの自分でいられるためには、家族の支えが欠かせません。

 いまは狭い世界で過ごすほかない妻の悩みを軽視せず、真剣に耳を傾けるのは、夫としての責任であり、愛情でしょう。

 子育て真っ最中の母親たちにとって、掃除やおむつ替えを手伝ってもらうより、話を聞いてもらった方がストレス解消になる、という調査結果も出ています。

 政治や行政の責任も重い。子どもを社会全体ではぐくんでいく仕組みを築き上げるには、公的な手助けが欠かせません。

 専業主婦のお母さんでも気軽に子どもを預けられる場。親子で気兼ねなく遊びに行ける場。困ったときにいつでも相談に応じてもらえる場。どれもこれも、足りないものだらけなのですから。



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