最終更新時刻: 99/06/17 07:00

社説2 「データ爆発」に備えよ

 科学技術の様々な分野で、計測・観察手段が多様化され、しかも高速化、精細化、自動化が進んだ。これらの機器は、ばくだいな量のデータや観測結果を生みだしている。これによって「知の爆発」と呼んでもいい状況が起こっており、21世紀にはこの傾向がさらに強まると予想される。データや観測結果をどう扱うかを、科学技術政策の重要な課題として取り組む必要がある。

 生物の遺伝情報は塩基と呼ばれる4種類の化学物質で書かれている。人間では、約30億の塩基が並んでおり、すべての塩基配列を解読する作業が進んでいる。当初は、すべてを読むのに数十年かかると考えられたが、読み取り装置の自動化などで、予想よりはるかに早い2003年ごろには完了する見込みである。

 遺伝情報の解読は、人間だけでなく様々な植物や動物でも進んでいる。地球上の生物種の数は、数百万とも数千万ともいわれ、この遺伝情報が次々に解読されるであろう。まさに無限といってもいいほどのデータが生産されることになる。

 1996年8月に打ち上げられた地球観測衛星「みどり」は、太陽電池パネルの故障によって、10カ月間働いただけで機能を停止した。それでも、取得された観測データは膨大であり、解析が終了するまでに今後相当の時間を要すると考えられている。世界中で様々な地球観測衛星の打ち上げが予定されており、これらの衛星群から吐き出されるデータ量も想像を絶する。

 こういった状況は至る所で起こっている。地殻から、海から、宇宙から、物質から、生物から、新しいデータが次々に生まれている。まさに「知の爆発」である。

 これまで、これらのデータは、研究者個人や当該分野のデータセンターなどが保管・管理してきた。しかし、爆発的な状況を考えると、個人や小さなセンターが管理できる限界を超えようとしている。科学技術基本計画の見直し作業が始まっているが、新しい計画では「知の爆発」にどう対処し、どう膨大なデータなどを後世に伝えるか考える必要がある。将来を考えると国際的な取り組みが必要になると予想され、その枠組みを今から考える必要がある。

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