平成 12年 (2000) 1月 5日[水] 先負

主張 21世紀へ重い政党の責任

【政治情勢】
 政治の役割を大枠でいえば、国民生活の繁栄と安定に知恵を絞るとともに、国家の安全と国民の名誉を担って国の方向を定める−ということになるだろう。平成十二年は、政党や政治家にとって、そのどちらの課題も、これまで以上にゆるがせにできない、正念場の年になりそうだ。

 それは日本社会のあちこちに制度疲弊からくるタガの緩みがみられるのに加え、ポスト冷戦から二十一世紀の新たな秩序構築に向かう世界情勢の中で、今年がわが国にとって、経済政策や安全保障などをめぐり、明確な将来展望を描かなければならない時であるからにほかならない。政党や政治家に課せられた責務は極めて重い。

《まずは早期予算成立を》

 当面の現実的課題が、長く苦しんできたバブル崩壊後の不況から確実に抜け出す方策であるのは論をまたない。小渕連立政権は、一般会計の総額が八十五兆円に迫る公共事業を軸とした景気対策に重点を置いた積極型予算案を組んだ。底を打ったとされる日本経済を上昇気流に乗せる直近の具体的方策は、その平成十二年度予算案を、きっちりと四月以前に成立させ執行することである。

 予算案には、「大盤振る舞い」の批判がある。史上最高となった国債発行に異論もある。しかし、だからといって成立が遅れれば、景気回復の足を引っ張ることになるのは明らかだ。子や孫の世代に回したツケをどうするかなど、財政構造改革をめぐる論議は、予算案審議の中で存分に行えばいい。

 われわれが懸念するのは、与野党の政局をめぐる主導権争いが予算の成立を遅らせる事態だ。

 自民党と公明党は、自由党との合意である衆院比例代表の二十議席削減法案を今月二十日に召集される予定の通常国会冒頭で成立させる方針であり、自由党は合意が果たせなければ連立を離脱するとしている。一方、民主、共産、社民の野党三党は、法案成立を阻止し、与党が強行するなら解散・総選挙に追い込むのも辞さない構えだ。

 われわれは、将来の二大政党制に向け衆院の選挙制度を単純小選挙区制度に一歩近づけるという意味で、比例代表の定数削減には賛成する。しかし、そのための与野党攻防が、予算成立の大幅な遅れにつながるなら、国民の期待を違えた本末転倒といわなくてはならず、批判は免れまい。

《明快な政策論争が必要》

 国会の駆け引きよりも、与野党の政策的論争を求めたい。今年十月の衆院議員の任期満了までには総選挙があり、国民は二十一世紀に向けた国の進路を一票に託すことになる。ますます広がる傾向にある無党派層に、投票という形での政治参加を促すためには、通常国会を含め解散までの間に、各政党が理念・政策を明快にした論争を戦わせることが必要だ。

 経済構造改革に関連しては、少子高齢化社会への対応策がある。臨時国会で先送りになった年金改革法案や医療制度改革、半年の保険料徴収猶予を決めた介護保険をめぐる論議も深めるべきだ。要は高齢者が増加する社会で、消費税の位置付けを含む福祉財源をだれがどう負担するかという問題だ。

 外交・安全保障では、まだ手付かず状態の有事法制論議が不可欠だ。昨年の通常国会で周辺有事のさいの日米防衛協力は関連法が成立した。だが、日本が攻撃された場合の法整備ができていないのでは、政治は怠慢のそしりを免れない。北朝鮮工作船の領海侵犯事件を契機として論議が高まった領域警備態勢の確立、顔の見える国際貢献を進めるための国連平和維持軍(PKF)参加凍結の解除なども、できるだけ早く実現しなければならない。

 党首討論制度(クエスチョンタイム)の導入や政府委員制度の廃止によって、政党や政治家が自らの考えを明確に表明する環境は一応整った。衆参両院に設置された憲法調査会では、国のあり方をめぐる論議もスタートする。大衆迎合のその場限りの甘い言葉に、国民はもはや惑わされないだろう。

 われわれは、そうした論争や総選挙を経て、強力な政権基盤によって政策を遂行する、保守勢力結集の動きが本格化することを期待する。

 同じ理由から、われわれは自自公連立政権を支持してきた。しかし、昨年の自由党の連立離脱騒ぎや、自由党と公明党の政策的綱引きなどで、政策遂行能力にほころびが出たようにもみえる。小渕恵三首相は、当面、連立を固め直す努力が必要だ。

 そのうえで、昨年浮上した自由党の自民党への合流が、真の保守結集への道につながるならば、その動きを支持したい。日本の現在の政治情勢では、政治課題解決への展望を開くには、民主党の一部や公明党を含め、理念・政策での真の保守結集の動きが本格化することが最も有効と考えるからだ。