【外形標準課税】
政府は東京都が推進している大手金融機関を対象とした外形標準課税の導入を懸念する政府見解をまとめた。東京都の構想は課税自主権の確立という点では評価できる。しかし政府見解が指摘する通り、税制の基本は国税、地方税を問わず公平、中立、簡素が大原則である。その原則に照らしてみると、都が導入を検討している外形標準課税は解決しなければならない多くの問題点を含んでいる。
今回の税制は外形標準課税の名を借りているが、事実上、大手銀行だけをねらいうちした「銀行税」である。政府税制調査会や自民党が検討している外形標準課税は、全国の法人企業のうちの約六割が赤字法人で、行政サービスの対価としての法人事業税を払わないのは異常事態だという認識が出発点になっている。だから、すべての企業に薄く課税して、公平に負担してもらおうというのが本質的な議論だ。
ところが、東京都の場合は、納税義務者について「都内で事業活動を行う法人のうち銀行業またはこれに類する事業を営むもの。ただし当該事業年度の資金量残高が五兆円以上の法人に限る」と規定している。つまり資金量五兆円以上の銀行業ということになるが、なぜそのような線引きをしたのか明確な説明がない。東京都側は、中小企業の納税事務負担に配慮した結果だと弁明しているが、それだけの説明では一般的に納得できないだろう。中小金融機関にまで対象を拡大すると、反対運動が燎原の火のように燃え上がり、都議会で賛成は得られまいと読んだのではあるまいか。
多くの庶民は自分が個人で支払う所得税や消費税には敏感であっても、企業が支払う税金には寛大である。別に自分の懐が痛むわけでないからである。そのような大衆心理につけ込んで、多くの政治家や知事は個人の歓心を買うために企業負担を押し付ける傾向がある。しかし、大衆には一票という投票行動ができるが、企業にはそれができない。そうした企業増税を繰り返すと、企業はやる気をなくし、経済活力をそがれる。経済活性化の面からは大きなマイナスである。
この新税は導入される方向にある。そうなれば大手二十四行ベースで当期利益が四千三百億円減少するという。銀行としては利益減少分を穴埋めするために、(1)手数料を上げたり融資先を選別する(2)従業員の賃金を下げる(3)株主配当を減らす−などの行動に出るだろう。電気、ガス料金のように明確でないが、何らかの形で最終消費者に影響が出ることは必至なのだ。そうした認識に立って論議すべきだ。