主張 求められる地方の創意工夫

【外形標準課税】
 大手金融機関に外形標準課税を導入する東京都の都税特例条例が、三十日の都議会本会議で可決、成立した。石原慎太郎都知事が今回取った行動は、地方自治体の課税自主権の確立という点では評価できる。

 しかし、政府税制調査会で議論が進んでいる外形標準課税のねらいは、地方が提供する行政サービスの対価として、すべての企業に広く、薄く負担を求めようというものである。銀行業に限らず製造業、サービス業、中小企業などの事業活動に着目して課税するのが本来の趣旨である。

 ところが、都議会が可決した税制は大手銀行だけを対象にした事実上の「銀行税」である。しかも「当該事業年度の資金残高が五兆円以上の法人に限る」と規定している。つまり資金量五兆円以上の銀行業ということになるが、なぜそのような線引きをしたのか、都議会の審議でも最後まで十分な解明がなされなかったのは遺憾である。東京都は納税者の事務負担、中小金融機関に対する配慮、費用対効果を総合的に勘案した結果だとしているが、新税の導入にはもっと広い視野からの検討が必要であったと思われる。

 税制の三大原則は公平、中立、簡素である。そのような観点に照らしてみても疑問は残されたままだ。銀行界の代表、学識経験者は都議会で参考人として意見を述べた。疑問点が多いので、銀行界は都を相手取って近く行政訴訟に踏み切るとしている。

 バブル破裂後の金融不良資産処理、安易な経営態度、不十分なリストラ、高すぎる行員の給料など一般庶民の反銀行感情は強い。しかし、そうした国民感情と課税の合理性とは全く別問題である。関係者の一部には、このような問題の提訴は裁判所で門前払いを食らうのでムダとの声もあるが、提訴を機に、さまざまな場で論議を深めるのは意義のあることと考える。

 今回の騒動について米国の新聞の中には「ニューヨーク市で同様の計画が導入されたら、ニューヨークに本拠を構える大手銀行は税金とともに去っていくだろう」と論評したところがある。日本の地方自治体の税制はどこも横並びである。その理由は、地方独自の発想が貧困で、いつも中央政府に寄りかかっていたからである。地方自治体の課税自主権への試みとしては評価できるとしたが、東京で銀行税をかけるなら、その逆に、銀行を対象に減税して金融業を呼び込み、地方活性化に役立てようというアイデアが出てきてもいいのではないか。課税自主権の確立のためには、地方の創意工夫がぜひとも必要なのである。