【株価波乱】
米国市場の波乱が世界を駆けめぐった株式相場は、ひとまず小康を取り戻し、一息ついた。市場にはなお動揺の火種を残すものの、各国とも「ハイテク株神話」を見直す動きが広がったのは歓迎すべきだろう。今回の波乱は、企業内容を吟味する投資の重要性に警鐘を鳴らしている。
震源地である先週末の米国株の下落は、予想外のことではない。
情報技術(IT)革命を背景に、過大な期待から急騰していたインターネット関連株などの「バブル」の反動が、一気に噴き出した。インフレ懸念の高まりを引き金に、大幅な追加利上げの観測が広がったためだ。
東京市場の「ネットバブル」も変わらない。最近の上昇相場は、通信・ハイテク株の一極集中型だ。業績を無視して株価が先行する企業群が主役を占める相場展開が続いていた。
各国とも株価の調整は避けられないが、問題はその度合いである。
とくに米国市場では、短期間で、一定の株価の調整・下落にとどまれば、株高による資産効果がもたらす過剰な個人消費など国内需要にほどよいブレーキがかかる。経済の均衡をそこなわず、過熱気味の米景気を安定成長軌道に戻す効果が期待できよう。
しかし、調整が長引き、株価の下落が続けば、米経済のソフトランディング(軟着陸)の筋書きは崩れる。急激な個人消費の冷え込み、企業収益の悪化で、景気の失速を招きかねない。米国からの資金の流出で、ドル安と株安の連鎖に陥る恐れがある。
米国は海外の資金を吸収し、再び海外に投資することで、資金面からも世界経済を引っ張ってきた。各国市場が共鳴しあう資金の流れが急変すると、世界同時不況の危険すら伴う。
最悪のシナリオを避けるには、先進各国の協調体制が欠かせない。先の七カ国蔵相・中央銀行総裁会議(G7)の共同声明に沿って、各国に課せられた経済運営を進めることだ。
米国は、インフレ抑制のために、三月まで五回にわたり実施してきた金融引き締め策を今後も慎重に継続する必要があろう。貯蓄の増加と経常赤字の縮小に努めることが、十年目に入った景気拡大の持続につながる。
日本の責任も重い。自民党が公的資金による株価維持策(PKO)を持ち出しているが、人為的な株価の操縦は市場のしっぺ返しを食う。自律的な景気回復の芽を育て、規制緩和など構造改革を地道に推進すべきだ。
政・官・民が正攻法で経済新生に取り組むことが、息の長い株式市場の活性にもかなう道である。
主張 他人の子をしかる勇気も
【少子化と教育】
文部省の中央教育審議会は少子化社会における教育のあり方について、「社会全体で子供を育てる」ことを強調した報告書をまとめた。これまで指摘されてきたことが改めて盛り込まれ、大筋では評価すべき提言が多い。
今回の審議は文相の諮問ではなく、委員の発意に基づいて行われた。学校や地域社会における具体的な方策として、(1)高校での保育体験学習(2)幼稚園の預かり保育(3)企業の託児所設置−などを求めた。特に、女性が働きながら子供を産み、育てやすい環境づくりへの配慮がうかがわれる。父親と母親が子育てを分担し、互いに足りないところを補う真の男女共同参画社会の実現に向けて必要なものである。
ただ、そうした技術的な問題に加え、もう少し突っ込んだ本質的な議論がほしかった。少子化社会の最大の問題は、子供が少ないために生じる過保護や甘やかしの傾向である。ほしいものは何でも買い与えるが、家の手伝いはさせない。個室は与えるが、中で何をしているか知ろうとしない。このようなはれ物に触るような育て方は結局、子供のためにならない。
「慈母に敗子あり」という中国の法家、韓非子のことわざがある。母親が甘いと悪い子になるという意味だ。母親だけのせいではないが、悪いことをしたらしかり、ときには我慢を覚えさせることは親の務めである。
親がそうしないときは、他人がしかってもよい。「心の東京革命」を目指す石原慎太郎・東京都知事は最近のテレビ番組で、都のある試みを紹介した。人通りの多い階段で子供たちにゲームをさせたところ、それを注意する大人がなかなか現れず、ようやく一時間以上たったころ、年配の男性がしかったという。石原知事はこの男性を「表彰したいくらいだ」と言っていたが、われわれも同感である。
審議の過程では、欧米で流行している「シングルマザー」に関する議論も行われた。最近、日本でも「結婚はしたくないが、子供は欲しい」という女性が増えていることから、それを容認すべきだという意見が女性委員から出されたという。しかし、この考え方は伝統的な家族観の軽視につながるものである。欧米でも、家族の価値を再評価する声が高まっている。やはり、子供は家庭の事情が許す限り、父親と母親の愛情を受けて育つのが自然だ。
子育てには「学校と家庭と地域社会の連携」が不可欠である。子供は、親や先生、近所の怖いおじさん、おばさんにしかられ、励まされながら、強くたくましく成長していくのである。