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●Link 朝日新聞の社説/ 読売新聞の社説/ 日本経済新聞の社説 各新聞社のサーバーへリンクします。 主張 この病理の全容解明急げ 【女性監禁初公判】 検察側の冒頭陳述を聞いて改めて怒りを覚える。下校途中の小学四年の女児にナイフを突き付けて拉致(らち)し、九年二カ月にわたって監禁した。わずかな食事を与えるだけで、ベッドから降りることを許さず、命令に従わないと暴行し、あげくスタンガンを押し当てる。女性は自分の手や腕に噛みついたり、毛布を噛んで悲鳴を上げるのを我慢したという。これほどの恐怖心を植え付けられては、とうてい逃げ出せるものではない。 われわれはこの事件を「殺人にも等しい凶悪犯罪」と断じた。にもかかわらず、起訴された罪名による最高刑でも懲役十年である。あまりに軽いと言わざるをえない。 それにしても、なぜもっと早く女性を発見、救出できなかったのか、という思いが今も強い。とくに母親が、息子の暴力におびえ、息子の部屋に入れなかったとはいえ、自宅二階に女性が監禁されていたことを全く知らなかったというのは不自然である。 佐藤被告は高校卒業後、勤めた会社を数カ月で辞めて、定職につかずぶらぶらしていた。また、今回の犯行以前にも小学生の女児にいたずらした前歴があり、暴力や奇行が目に付いたという。事件への関与はないとして刑事責任は問われなかったが、こうした育て方をした母親に、甘やかしと放任の責任を強く感じる。 先に自民党の「少年法に関する小委員会」がまとめた報告書では、親の責任を理念的に明らかにする規定を設けるよう求めている。佐藤被告は成人だが、今回の事件には少年犯罪の要素が色濃くみられる。少年法改正の論議を深めるためにも、公判で母親の責任を解明することは意味があるだろう。 また、今回の事件では、新潟県警のミスが指摘された。佐藤被告の犯歴データが登録されていなかったことや、佐藤被告宅を何度も警察官が巡回連絡で訪れているのに不審点を見つけられなかったことなどだ。公判の焦点ではないが、こうした反省と教訓はいつまでも忘れず、今後に生かされなければならない。 一方、被害者の女性が受けた「心の傷」は想像にあまりある。九年二カ月の失われた歳月を埋め、心身ともに回復する日が一日でも早いことを願い、静かに見守りたい。
主張 厳しい取締りこそ特効薬 【交通安全白書】 二十三日公表された「交通安全白書」によれば、自家用乗用車の保有台数は一世帯あたり一・〇六台、運転免許を持っている人は免許年齢の六九%、そして、交通事故の人身傷害を受ける人は毎年四十七世帯に一人。 いいかえれば、四十七年間にどの家庭でもだれかが交通事故の被害者になる可能性がある。社会的、経済的損失に換算すると、実に年間四兆四千億円(平成八年の総務庁試算)に達する。こうした現状をまず知っておく必要があろう。 最近の事故をみると、事故死は十六歳から二十四歳の若年層と六十五歳以上の高齢者に二極化し、双方だけで全事故死の半分以上を占めている。ところが、若年層が平成に入って急速に減少傾向を示している半面、高齢者は右肩上がりから高水準で推移している。高齢者だけで全体の三分の一以上、しかも、五十歳から五十九歳の高齢者予備軍が増加の兆候をちらつかせているのも不気味である。 こうした流れを吟味すれば、なすべき対策が浮かびあがってくる。交通弱者といわれる高齢者の被害をどう抑えるかである。ヒントはある。たとえば、歩いているときに事故に巻き込まれた人のうち高齢者は死者の六割、負傷者の二割以上と、どの年齢層より飛び抜けて多い。ここに施策の重点を置かなくてはなるまい。 高齢者自身の不注意もあろうが、諸外国と比較して、高齢者へのいたわりが社会全般で薄くなっていることにも大きな原因がある。端的な例は横断歩道である。法令では横断歩道を渡ろうとしている歩行者を認めたら、自動車はいったん停止しなければならないが、無視して行き過ぎようとするドライバーが最近多くなったように見受けられる。また、事故を誘発する横断歩道近辺での駐車に無神経なドライバーも後を絶たない。 すべての安全施策のなかで、最も効果があるのは取り締まりだろう。警察当局には、こうした事故に直結する違反を重点に、厳しい取り締まりを願っておきたい。
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