主張 評価できる選択肢の拡大
【生殖医療】
夫以外の精子による体外受精を認める見解が、厚生省の審議会で打ち出された。不妊に悩む夫婦の選択肢を拡大し、野放しの生殖医療を法的に規制する方向は評価できる。ただし、卵子の提供を認めるか、血縁者からの提供をどうするかなど、解決すべき問題も少なくない。
厚生科学審議会の専門委員会がまとめた基本的な考え方は、(1)病気のために子をもつことができない人に子をもつ可能性を提供する(2)生まれてくる子の福祉を優先する(3)人を専ら生殖の手段として扱ってはならない(4)安全性に十分配慮する(5)商業主義や優生思想を排除する(6)人間の尊厳を守る−という内容だ。
具体的には、対象を法律上の夫婦に限定し、加齢により妊娠できないケースは除く。精子の提供者は四十歳以下、原則無償で、法的には父親とならない。認められていない生殖補助医療、営利のあっせん、売買、個人情報の漏えいは法律で処罰する。
さらに、医療は指定された医師、施設が行い、夫婦、提供者とも同意書を提出しなければならない。医師、施設の指定、監査などを行う公的な管理運営機関を設置し、三年以内に法的な規制を整えていく。
大筋では妥当な内容といえよう。子供をほしくても恵まれない夫婦の願いは切実である。第三者の精子を使う人工授精は五十年前から行われ、一万人以上の子供が生まれている。夫婦間の体外受精も容認され、すでに約四万人が誕生した。にもかかわらず夫以外の体外受精を認めなければ、論理的整合性に乏しいといわざるをえない。
世論調査では、第三者の精子による体外受精に条件付きの賛成が半数を超えている。ただし、患者の八割近くはこの技術を利用しないと答えた。
先進諸国のほとんどは精子提供を認めている。とくに米国では、精子銀行が活発で、精子を買う日本女性も現れた。日本国内でも精子売買広告が出るなど商業化が懸念され、国の法的な規制を求める声が強まっている。
審議会は秋に報告書をまとめるが、最大の課題は、第三者の卵子による体外受精の是非である。今回のたたき台では、提供が必要な夫婦に限って容認する案と、第三者に身体的な負担とリスクを負わせるので容認できないという両論を併記した。
このほか、兄弟姉妹による精子・卵子提供の是非、子供が親を知る権利、子供の地位保障など、難しい問題が残されている。倫理、医学、法律など多角的な論議を深め、整合性の取れた結論を出すべきだ。