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朝刊記事
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平成 12年 (2000) 6月16日[金] 先勝

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主張 手放しで評価できるのか

【南北共同宣言】
 韓国の金大中大統領と北朝鮮の金正日総書記による首脳会談の結果、南北統一問題を自主的に解決する−などとした五項目の共同宣言が合意された。「会うだけで意味がある」などといわれていた事前の見通しからすると、予想を上回る進展をみせたことは確かだろう。だが、核、ミサイル、テロ、人権などをめぐる北朝鮮の基本的体質は依然として不透明のままだ。手放しで評価するのでなく、日本の国益に与える影響を冷静に分析し、対応していく必要があろう。

 三日間にわたる金大中大統領の平壌訪問は、金正日総書記が意表をついて空港に出迎えた初日にはじまり、終始、北側のペースで進んだようだ。金正日総書記はベールに包まれていた素顔を初めて国際社会にさらし、ジョークをまじえたパフォーマンスで韓国の警戒心を解くことに成功したといえる。経済危機や飢餓に苦しむ国のイメージを一変させ、民族統一を主導する指導者であることを印象づけた。

 だが、韓国側が求めていた「冷戦終結と平和定着」「南北連絡事務所の設置」などの基本課題は取り残された。金大中大統領としては、韓国国民向けにはとりあえず南北対話の成果を誇示できるだろうが、統一実現までにはさらに曲折が予想されることを覚悟しなければなるまい。

 南北接近が一気に進んだことで、日朝関係改善への圧力が強まるのは必至だ。韓国内に対北和解ムードが高まるにつれ、学生らによる在韓米軍への反発も強まろう。

 金正日総書記の北京訪問、プーチン・ロシア大統領の訪朝計画によって、中国・ロシア・北朝鮮の緊密な連携が浮き彫りにされた。これに対して、日米韓三カ国の思惑のずれが表面化していくおそれもなしとしない。

 とりわけ日本には、日本人拉致(らち)疑惑、テポドン発射、北工作船の領海侵犯など、国の主権にかかわる問題が未解決のまま残されている。統一への環境づくりのためにも、日朝国交正常化による日本の対北支援の本格化が南北双方から期待されているようだ。だが、日本独自の事情を棚上げして、いたずらに日朝関係改善をいそぐべきではない。

 南北の急接近は、東アジアの安保情勢を大きく揺るがし、より複雑化させる要因になる。国際社会は、北朝鮮の実態を一段と冷静な目で監視していく必要がある。日本としては、南北対話の進展を基本的には支持しながらも、今後、確固とした外交戦略のもとに、周到かつ迅速な対応が求められることを認識すべきであろう。

主張 無責任極まる政治的発表

【独の原発全廃】
 ドイツ政府と独原子力発電企業は十五日、同国内の十九基の原子力発電設備を三十二年間かけて全廃すると発表した。総発電電力量の三分の一を占める原子力に代わるエネルギーをどうするかなど、肝心の問題には触れておらず実現するかどうかは不透明だ。わが国の反原発派がこの発表に飛びつくことは必定だが、電力の安定供給を無視した議論には要注意だ。

 最近のヨーロッパ各国はわが国と同様、小政党乱立で、一党では議会の過半数をとれず、連立政権が続々誕生している。ドイツもその例にもれず、一九九八年に「社会民主党」と「90年連合・緑の党」が連立してシュレーダー政権が生まれた。同政権は脱原子力を公約にかかげ、特に緑の党出身のトリッテン環境相が、反対する原子力発電企業側との交渉に当たっていた。

 両者が合意した背景には、まず公約実現の筋道をつけたい、という政府側の思惑がある。また企業側には、三十二年というかなり先の政治情勢は予測がつかず、いま政府の方針に反対してまで原子力存続に固執する必要性もないので約束される高額な「補償金」の支払いを確保した方が得策、との政治判断が働いたとみられる。

 ドイツの総発電電力量は五四八〇億キロワット時(一九九七年)だが、そのうち地球温暖化防止にもっとも避けなければならない石炭発電は中国、インドについで三番目で五三・四%である。わが国の一九・一%やフランスの五・二%に比べればケタ違いに多い。温暖化防止を定めた京都議定書を履行する気があるのなら、まず石炭発電をやめて世界に貢献すべきだ。

 確かに風力や太陽光などの自然エネルギーの利用では絶対量で世界のトップを走っている。それでも総発電量の五%を占めるにすぎず、二〇五〇年までにはこれを五〇%に引き上げる計画という。仮に実現したら浮いたエネルギーは石炭発電の削減に向けるのが先進国としての義務だ。しかし、失業率が高く、石炭労働者の職場保護という政治的な事情もあり難しい。

 わが国でも今年二月、各界から意見を聞いた原子力利用円卓会議が発電エネルギーの安定確保を前提に“脱原子力”の可能性についても検討すべきだ、と提言した。われわれもこの提言を支持するが、そのためには原子力をやめた場合、安定供給が可能な代替エネルギーの提示が絶対条件だ。「直ちに原発は止めよ。自然エネルギーは代替にならないといわず、やってみなければわからないじゃないか」という反原子力派識者の無責任な主張を認めるわけにはいかない。