【ユーゴ停戦提案】
ユーゴスラビア連邦は六日、セルビア・テレビを通じてコソボ自治州での戦闘行動を一方的に停止する声明を発表した。これに対して北大西洋条約機構(NATO)はこの提案をただちに拒否、ユーゴのミロシェビッチ大統領がNATOの条件を完全に受け入れなければ空爆を継続するとの強い姿勢を明確にした。コソボでのユーゴ軍の残虐行為や、家を追われた数十万の難民の苦痛を考えれば、NATOが現状での停戦を拒否したのは当然である。
ユーゴ政府声明は「キリスト教の最大の祝日であるイースターのため、テロリスト組織コソボ解放軍に対するコソボでの軍および警察の軍事行動を、四月六日午後八時(日本時間七日午前三時)に停止する」というものだ。
声明は、(1)停戦がイースター期間中だけなのかどうか(2)コソボに展開している約四万といわれるユーゴ軍や治安部隊はどう動くのか(3)国外に強制的に追いやられた膨大な数の難民の処遇をどうするのか−には触れていない。
ユーゴ軍のコソボからの撤退、すべての難民の帰還、多国籍軍のコソボ駐留などを要求しているNATOにとって、受け入れられる提案ではない。
ミロシェビッチ大統領はボスニア紛争の際も、NATO軍の空爆の後に態度を変え停戦に応じたことがある。同大統領が今回も同じ作戦をとっている可能性が強い。アルバニア系住民に対するエスニック・クレンジング(民族浄化)をある程度達成した今、停戦を呼びかけることによって自らの権力温存を図る狙いだ。
だが現在のNATO諸国の姿勢は、ボスニア紛争時とは大きく変わっている。ミロシェビッチ大統領が権力を握っている限りは、バルカンの安定はないという認識が強まっているのだ。セルビア・テレビが政府声明を放送した直後に、欧米諸国が一斉に拒否声明を出したことにもそれが表れている。
NATOの空爆により、コソボのユーゴ軍に対する補給路はかなりのダメージを受けたといわれる。六日から七日にかけての大規模な空爆の時も、ユーゴ側からの反撃は弱かった。コソボに展開しているユーゴ軍の戦車に対する直接攻撃も初めて行われた。空爆の効果が出始めているのだろう。
米紙ワシントン・ポストの最近の世論調査では、五五%の人が紛争解決のため地上軍派遣を支持した。難民の悲惨な映像が世論を動かしたのだ。自己の権力欲のためだけにセルビア民族主義を利用しているミロシェビッチ大統領は、バルカンのみならず世界の安定にとって最大の脅威である。