【脳死移植】
国内初の脳死移植を受けた患者はいずれも順調に回復し、移植医療に対する国民の理解は深まっている。しかし、第二例はまだ実現せず、待ち切れずに亡くなる患者が少なくない。このため厚生省の研究班は、本人が意思表示していない場合は家族の同意で臓器を提供できるよう提言する。
米国のワシントンで十八日、臓器提供者に感謝する集いが開かれ、遺族に記念のメダルが贈られた。留学中に交通事故で脳死になり、六人に臓器を提供した女子大生の母、間沢容子さんが出席し、「命の重さを改めて実感した。関係者のプライバシーを尊重してほしい」と訴える姿が印象的だった。米国でも移植を待ちながら亡くなる患者が年間四千人を超えたという。
日本では、脳死移植の第一例以後、三人の意思表示カード所持者が脳死と判定されたが、いずれも心臓停止後に所持が判明し、角膜移植にとどまった。こうしたことから、厚生省の「臓器移植の法的事項に関する研究班」は、近く臓器移植法の改正を提言する。
提言は、来年秋の見直しに向けて、“移植禁止法”とも指摘されている世界一厳しい規制の緩和を求める。本人の書面による意思表示を唯一の条件とする現行規定を改め、本人が拒否していない場合は家族の書面による同意でも提供できるという内容だ。
多くの先進各国の制度や、脳死臨調の提言とほぼ同じ趣旨である。臓器移植法の原案では、家族が本人の意思を推し量ると規定していたが、脳死に対する国民の理解が不十分として修正された経緯もあり、提言は妥当な内容といえよう。
さらに、現在は遺言能力に合わせて十五歳以上としている意思表示の制限もクリアできるので、親権者の同意により子供の臓器移植も可能になる。先日、米国に渡り心臓移植を待っていた三歳の子供が亡くなったこともあり、子供の移植実現を求める声は強い。
三月末現在、臓器移植希望登録者数は心臓が十七人、肝臓三十人、肺五人、腎臓一万三千二百九十一人である。大阪大で心臓移植を受けた患者は、提供者と遺族に対し、「勇気ある決断に感謝しています。いくら感謝しても感謝しきれないほどです」という手記を寄せている。
臓器提供の意思は、まだ本人の書面による意思表示しか認められていない。厚生省や日本臓器移植ネットワークが先月までに配布した意思表示カードは三千七百万枚を超えた。国民の理解をいっそう深めるには、移植ネットワークの運営や医療現場の透明性の確保が不可欠である。