平成 11年 (1999) 4月21日[水] 友引

主張 日米に新たなパイプ築け

【官民共同外交】
 小渕恵三首相が二十九日からの訪米で財界人を交え“官民共同外交”を展開するという。新たな「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)関連法案の処理をかかえるなど重要な時期だけに、経済を含め両国が理解を深めるのは決して悪いことではない。ただ、これがポーズに終わらぬよういくつか注文がある。

 かつて故池田勇人氏が「トランジスタのセールスマン」と呼ばれた伝説があるように、政治家が民間の後押しをするのは日本のお家芸だった。その後の猛烈な輸出攻勢が“ニッポン株式会社”批判につながり、そうした外交は影を潜めたが、逆にそれをまねたのが日本経済に押された欧米だった。

 サッチャー元英首相は経団連にまで押しかけ、貿易不均衡を理由に製品輸入や企業誘致を迫ったし、ブッシュ前米大統領も平成四年の訪日では米自動車ビッグスリーのトップを同行し売り込み攻勢をかけた。いまや、国のトップ外交はビジネスと結びついている。

 首相はかねてから官民一体外交に魅力を感じていたといわれる。もちろん、今回は貿易黒字国の日本が輸出攻勢をかけるとか、財界人を同行するわけでもない。夕食会に次期日経連会長の奥田碩トヨタ自動車社長や次期経済同友会代表幹事の小林陽太郎富士ゼロックス会長らに同席を要請、幅広く日米経済のあり方を語る緩い官民共同外交である。

 だが、経済がグローバル化し一体化した中での外交は官民どちらも欠かせず、こうした場を持つ意味は小さくない。とくにアジア危機以降、デフレ傾向が鮮明化した世界経済を運営するには、官民の知恵が必要であり、影響力の大きい日米の協力と相互理解は不可欠になる。

 それには日本側がいかに早く設備や債務の過剰を解消して経済再生を図り、世界のデフレ圧力を吸収するか、官民あげて米国に説明する必要がある。そして米国には鉄鋼摩擦など、台頭している保護主義圧力がいかに世界経済に重大なマイナス影響を及ぼすかを説明、自由貿易の確保を求めなければならない。

 さらにいえば、こうした場を利用していかに太い個人的パイプを多く構築するかである。政界も民間も太いパイプを持つ人材は長老だけになりつつある。先の金融危機の際も、蔵相就任前の宮沢喜一氏が独りで米国の理解を求めて走り回ったのは記憶に新しい。いざというときの頼りは官民とも個人的パイプである。

 首相に必要なのは単なる夕食会に終わらせない指導力と戦略である。