【国民番号制】
国民すべてに個別のコード番号を付けて行政サービスの効率化をはかる住民基本台帳改正案をめぐり、与野党の攻防戦が大詰めを迎えている。国会提案から一年以上も経過しているが、今国会での成立は微妙な見通しだ。
二十一世紀の高度情報化社会に向けて、行政と国民を結ぶ情報ネットワークの構築は重要な課題であり、国民コード番号制度の導入は、その大きな手段となる。コンピューター時代における国民生活のあり方といった大局的立場で審議を尽くし、速やかに法制化をはかるべきだ。
改正案の内容は、市町村が住民一人ひとりに十桁の番号を付け、氏名、住所、性別、生年月日の四情報を自治体共同運営の「全国センター」で一元管理する。このデータ内蔵のカードを示すだけで、全国どこの市町村窓口でも住民票や印鑑証明の交付、公共施設の利用申し込みなどが可能になる。
将来的には、パスポートの申請や選挙での電子投票の実現にも道を開くことになる。さらに、課税の公平化や不当な税逃れ防止をねらいに、政府税調が導入を提言した「納税者番号」をはじめ、すでに実施中の「年金番号」なども国民コード番号に一本化し、行政事務の合理化や利用者の利便性を高める広範囲な活用も期待されている。
政府・与党は、来年度からの運用開始に向けて、今国会での成立を目指しているが、「個人のプライバシー侵害」「国民総背番号制による国家管理の強化」といった理由で野党に反対論が強い。国民に番号を付けることへの感情的な反対意見もある。
国民コード番号制の導入には、何よりも国民のコンセンサスが不可欠で、プライバシーの保護や不正アクセスの防止に万全の対策が求められることはいうまでもない。だが、案じるだけでは何も変わらない。情報化社会の現状と将来を見据えた建設的な議論によって、国民コード番号制の問題点を克服し、早期導入へ与野党ともに知恵を出し合うべきである。
民間では銀行のオンライン化などコンピューター・ネットワーク化が一段と進み、家庭へのパソコン普及も目覚ましい。一方では、交通・通信手段の発達で、住民の生活圏や行動範囲が飛躍的に拡大している。自治体の区域を超えた全国的な情報インフラを整備し、国民コード番号の導入で行政サービスの質的向上と行政の効率化をはかることは、日本の構造改革を進めるうえからも緊急の課題といえる。
時代の要請に迅速・的確にこたえるのが政治の役割であるはずだ。法案先送りの怠慢は許されない。